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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十五章:対決! 永遠の黄金船(エルドラド)
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冒険者+5:おっさんVS永遠の黄金船(5)

 私の拠点のベッドの上――そこで顔色を悪くした少女が眠っている。

 

 ご両親は泣きながら少女の手を握り、ミアはずっと下を向きながら拳を握り締めている。


 私もだ。あまりのことに怒りと悔しさで拳を握り締めている。


 そして回復を祈っているとチユさんが口を開いた。


「あたしがいて良かったね……急所は外れてるし、毒も大したものじゃなかった」


「私のせいだ……!」


 チユさんの言葉を聞いて、最初に出た言葉はそれだった。


 襲撃犯――隠密ギルドの者はすぐに取り押さえ、今は小太郎に預けている。


 だが犯人は分かっている。間違いなく『永遠の黄金船』だ。

 そうとしか思えない。


「――師匠」

 

「……小太郎」


 私がそう確信していると、小太郎は不意に隣に現れた。

 

 しかし驚く暇はない。それだけ私の怒りの感情が勝っていた。


「……奴は吐いたか、小太郎?」


()()()()()()……奴等の雇い主は五大ギルド『永遠の黄金船』です。――ダンジョンマスターを誘い出せ。その為に子供を殺せと命令されていた様です」


「……っ!! そうか……!!」


 その言葉に私は頭が怒りで真っ白になりそうになった。


 ここまで人は怒れるのかと、私は拳から血が流れても握るのを止められなかった。


 同時に逆流してくる後悔の波。

 私は気付けばミアやご両親に頭を下げていた。


「申し訳ございません……!! 私が……私が巻き込んだ……!」


「……頭を上げてくれセンセイ。センセイは悪くねぇよ」


「その通りです。貴方は娘の為に高難易度ダンジョンに行ってくれた恩人です。――恨むなら貴方ではなく……五大ギルド……!」


 気づけばミアも、少女の父親も拳から血が流れていた。


 言葉は静かな感じだが、中身は私と同じ怒りで満ちているのが分かる。


「あまり自身を責めるんじゃないよルイス。しかし、五大ギルド……ここまで腐っていたのかい……!」


 チユさんも、私の手に握りって癒しの魔法を掛けながら、声を震わせていた。


 自身の患者だ。わざわざ<スノーホワイト>から来てまで治した患者だ。


 それを目の前で――きっとチユさんも怒りと悲しみで満ちている筈だ。


 そんな時だった。

 私の拠点の扉が勢いよく開いた。


「ルイス殿!」


「師匠!」


 入って来たのはエリアとクロノだった。


 何故二人がここにと思ったが、自然と小太郎を見ると小太郎は黙って頷いていた。


 そうか、小太郎が呼んでくれたのか。


 二人は拠点内の雰囲気と、ベッドで眠る少女を見て、何かを察した様に顔をこわばらせていた。


 そして意を決した様に、その口を開いた。


「詳しい話は小太郎殿から聞いてます」


「相手は『永遠の黄金船』ですか?」


「……あぁ」


 二人の言葉に私は静かにそう言った。


「狙いは私だ……ダンジョンマスターを誘い出せと、そう命令されていたらしい」 


「そんな……! 何故、ルイス殿を!? しかも、その為にこんな幼い命を!」


「まさか虹鉱石とオリハルコンの報復ですか? だがあれは! 全て連中に非がある筈です!」


 エリアもクロノも怒りの声を上げてくれている。


 ただ実際、私も不思議でもあった。

 虹鉱石・オリハルコン。あの一件でここまでやるのかと。


「何故……連中はここまで」


「ここ最近の『永遠の黄金船』ですが、かなり追い詰められていた様です。――師匠襲撃の噂により冒険者、そして商人達からも信用を失っていたと」


 なるほどな。小太郎の話で少しは納得できたな。


 だがそれでも弱い。私を一点に標的にしているのもそうだが、やはり魔人化疑惑と関係あるのか?


 私はそう考えていると、顔を下へ向けていたミアが顔を上げた。


「そんなことはどうでも良いんだよ! うちのギルドの家族がやられたんだ! 報復だ! 報復してやる!!」  


「落ち着けミア! 相手は五大ギルドだぞ! それに魔人化の話もある! 準備も無しに行けば、いくらお前でも!」


「うるせぇ!! うちの連中が――あたしの家族がやられたんだぞ!! んなことが関係あるか!!」


 クロノがミアを落ち着かせようとしたが、ミアは止まらなかった。


 それだけ彼女がギルド員を大事にしているからだろう。


 前回の時もそうだったが、今回は小さな命で、しかも目の前でのことだ。

 怒りはただでさえ大きいだろう。


「ならば、せめて明日まで待って下さい。明日になれば、騎士団も動けます。――魔人化疑惑、違法物の売買を理由に、王の名の下に<強制調査状>が発行できます。これならば、騎士団も動けますから」


「そんな呑気にしてられっか! 騎士団の都合なんか知らねぇ! センセイ! すぐに報復すんだろ!?」


 エリアの説得にもミアは耳を貸さなかった。


 私も気持ちだけならばミアと同じだ。


 こうしている間にも他の被害者が出る可能性がある。


 けど、それでも私は首を横へと振った。


「いや……エリアの案に乗ろう」


「センセイ!?」


 ミアが食い気味に私を見てきたが、私は手で制止させた。


「私だってすぐにでも問いただしたい。……だがやはり魔人化が気になる。お前も分かっているだろミア。魔人化した者の強さを」


「うっ……それは……」

 

 その言葉にミアは少し落ち着きを取り戻した様だ。


 ミアもエルフの国で始高天の魔人――ドーワを見ている。


 だから魔人化の恐ろしさを分かっている筈だ。


 私はミアが黙ったことで今度はエリアの方を向いた。


「エリア……明日は私達も同行して良いんだな?」


「勿論です。裏ギルドの時と同じ様に、ギルドとの連携は既に団長にも許可を得ています。クロノギルド長、協力をお願いできますか?」


「無論だ。五大ギルドの栄光は既に過去のもの。これ以上の暴走は一冒険者としても止めねば」


 クロノが頷いた事で、これで明日は騎士団と『黒の園』の力も借りられるな。


「小太郎……君の力も借りられるか?」


「御意に」


 小太郎は迷いなく頷いてくれた。心強い限りだ。


 そしてそんな光景を見ていたチユさんは、呆れた様子で溜息を吐いていた。


「全く……怪我だけはすんじゃないよ?」


「無理な相談ですよ、チユさん」


「全く、歳の割には落ち着かないんだからアンタは」


 チユさんは私へ言うが、歳相応の生活なら私だって送りたいさ。


 けど今回の様なことを許す訳にもいかない。

 おっさんとしてではなく、冒険者として。


 そして、この日はこれで解散となった。

 

 少女とご家族は、エリアの提案で騎士団の医療練で警護、見てもらえる様になった。


 チユさんはそれに付いて行き、ミア達のそれぞれ場所へと戻って行く。


「さて……私も準備だな」


 きっと素直な展開になるとは思えない。

 

 争いは必須だろう。だから今の内に道具を合成しておかねば。

 

 他にも、エミックやベヒーの力を借りることになるだろう。 


「……『永遠の黄金船』決着を付けよう」


 こうして、私の一日は明日への準備で終わりを告げた。


♦♦♦♦


 明朝――『永遠の黄金船』本部。


 そこへ向かう一団がいた。

 それは、ギルド<天極の獅子(てんごくのしし)


 ミアが率いるオリハルコン級ギルドの一団であった。


「わりぃセンセイ……けど、オレは我慢ならねぇ!」


 そう言ってミアは武器であるガントレットを鳴らすと、彼女の背後の一団も次々と武器を持つ。


 その中には少女の父親の姿もあり、彼女等は目の前に佇む『永遠の黄金船』へと進んで行った。


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