冒険者+5:おっさんVS永遠の黄金船(2)
「……なにかしてしまったか?」
私は店主に再度、問いかけてみた。
ハッキリ言って心当たりはない。
エリク草を採りに行く前だって、普通に買い物した場所だ。
店主も無事に帰って来いと言ってくれたのに、この数日間で何があったんだ。
「いや……あんたが悪い訳じゃないんだ。永遠の黄金船が……」
「永遠の黄金船……? そういうことか」
私は顔を下へ向ける店主の言葉を聞き、納得した。
依頼した冒険者を襲撃。
そして私がした訳じゃないが、死者も出ている。
やはり永遠の黄金船も黙っていられなかったか。
「私に売れば、取引しないと言われたのかい?」
「いや……そんな簡単な話じゃないんだ。寧ろ、取引停止は我々商人側から連中に言っていたぐらいだ」
「商人側から?」
そう言えばクロノから前、教えてもらったな。
永遠の黄金船の現ギルド長クシル。
――彼女のやり方は先代とは真逆で、古株のギルド員や商人達から嫌われていると。
しかし、そうなると分からないことが増えるな。
一体、何に対しての脅しで彼等は怯えているんだ?
「なら、一体何に対しての脅しを受けているんだ? 場合によれば力を貸すさ」
「……そこの窓から外を見てくれ。慎重にな」
顔を一切動かさず、下を見たままの店主。
彼の言葉を聞き、私は慎重に窓の方を見た。
すると、外の建物や柱の影に数人の男達がいた。
私は慎重に更に詳しく観察すると、彼等の服に遠目でも分かる黄金船のギルド紋があった。
「永遠の黄金船のギルド員か……?」
「あぁ……店を監視しているのさ。ギルド長がクシルになってから、ずっとだ……反抗的な態度の商人達が妙な真似をすると、私達や店に害を加えるんだ」
「そして……今度は私か。永遠の黄金船と揉めた私に物を売れば、ただじゃおかないと」
私の言葉に、店主は外の連中にバレないように黙って頷いた。
「本当ならこんな脅しに屈することはなかった……バサカ達が死んで、脅し担当の連中が消えたから、私達も『永遠の黄金船』と縁切りしようとしていたんだ」
「じゃあ、どうして?」
「今の脅しの連中は《《普通じゃない》》んだ。話によると、異形な姿になるって話だ」
「異形……? スキルか何かですか?」
私の言葉に店主は首を振った。
「いや……スキルとは別物と聞いた。腕が蟹の様になったり、肉体が魔物みたいになるって話だ」
「肉体が魔物……?」
――まさか魔人化?
店主の言葉を聞いた私の脳裏に、始高天の魔人化が過った。
魔物の力を使える人間――魔人。
そういえば前に戦った道化師――奴は魔人化の薬を持っていたな。
まさか、永遠の黄金船がそれを手に入れたのか?
「大体、分かったよ。すまなかった、これ以上、私がいると迷惑をかけそうだ」
「いや……謝るのは私だ。すまないルイス……得意さんのアンタにこんな対応を。――気を付けてくれ、王都中の商人の大半が私と同じ状況だ」
「ってことは、まとも王都で買い物はできないか。――ありがとう、落ち着いたらまた来るよ」
そう言って店を出る私を、店主は申し訳なく頭を下げてくれた。
そして店を出た私は周囲を見ると、先程までいた者達の気配がなかった。
「……手練れだな」
微かな気配しか感じさせない。間違いなくその道のプロだ。
バサカ達と同じとは思えない連中に、私は『永遠の黄金船』の本気を感じ取った。
しかし物資が補給できないのは辛いが、こっちにだって繋がりはある。
ミアは忙しそうだが、クロノ、レイ、小太郎達。
そしてエリア達――騎士団にも相談してみよう。
最悪、フレイちゃんに手紙を出して<グリーンスノー>から、物資を送ってもらうのも手だな。
私はそう考えると、その場から離れてクロノ達やエリア達。
そしてフレイちゃんに手紙を書く為、その場を跡にするのだった。




