冒険者+5:おっさんとエリク草(6)
『グルルルル……!』
フォレストレオが唸り声をあげ、私達を睨みつけている。
明らかに警戒している。
しかも戦う前提での警戒。先手を探るような。
「ミア。エリク草の採り方は覚えているな?」
「あぁ……フォレストレオを弱らせる。それがエリク草の採り方なんだろ?」
ミアの言葉に私は頷いた。
そう、フォレストレオを弱らせること。
それが鬣であるエリク草を採取できる唯一の採り方なんだ。
元気な内は、どうやっても採れないんだよ。
しかも厄介なのは――
「殺しても駄目だからな。殺した時点で、エリク草は枯れてしまうぞ」
「分かってる……ったく、厄介な猫だぜ」
ミアは面倒そうに言うが、フォレストレオ相手に加減はいらない。
殺す気で戦うぐらいが丁度良いだろう。
あくまでもトドメを刺さないこと、それに注意するばいい。
まぁ、その時には私達もボロボロだろうけどな。
「それにしてもフォレストレオか……!」
『植獣王類』――フォレストレオ。
前脚には木製の甲殻。肩や尻尾付近にも同じものがある。
大きさもベヒーより若干だが大きい。
そんな巨体が持つ鋭利な牙・爪。
そして見た目にそぐわない俊敏さもあれば、魔法のような特殊な攻撃もしてくる。
私も神経を集中させねば。
「――『+Level5』発動」
同時に<力量の瞳>を開眼。
フォレストレオ:レベル86
「レベル86……! エミックと同じか」
昔よりもレベルが高くなっている。
だが、そのお陰で私のレベルは<91>だ。
一つの到達点――レベル90台。
これならば何とかなる。
私は両腕のガントレットブレードを展開した。
ミアもガントレットを調整し、準備を完了させていた。
「行くぞ……ミア!」
「おう!!」
『ッ! ガオォォォォォォン!!!』
私とミアが飛び出した瞬間、フォレストレオが咆哮を放った。
耳がイカレそうになる、そして身体中が骨から響く凶悪な咆哮だ。
「うるせぇぞ!! 猫野郎!!――『強者の掟』!!」
ミアが強烈な威圧感をフォレストレオへ放った。
だがレベルはフォレストレオの方が上だ。
そう簡単には怯まないぞ。
『ガオォォォォォォン!!』
「来るぞ!!」
フォレストレオの口に、翡翠色の球体――マナの魔力弾が形成されるのを見て、私は叫んだ。
そして私とミアが同時に、左右へと跳んだ時だった。
『ガッ!!』
その魔力弾は放たれ、私達の背後の木々が一斉に吹き飛んだ。
「な、なんて攻撃だ……!」
「野郎……!」
密林が吹っ飛んで、広い空間ができたぞ。
あんなもの、まともに受けたら死ぬ。
だが魔力ならこっちだって溢れる程、あるんだぞ!
「――焔よ! 今ここに禁じられし煉獄の遊戯を!――フレイム・ダーツ!!」
右手に炎のダーツを生み出した私は、そのまま一気にフォレストレオへと投げた。
そのダーツはそのままフォレストレオの左前脚を貫き、甲殻を一気に炎上させる。
『ガオォォォォォォン!!』
フォレストレオが叫んでいる。
そして標的を私へと固定したらしく、再び口から魔力玉を何発も放ってきた。
「一気に接近する――疾風脚・先駆け!」
私は両足に風を纏わせると、一気に移動速度をあげた。
そして魔力玉を躱しながらフォレストレオへ接近した時だ。
「今だミア!!」
「おう!!」
私に意識が向けられていたフォレストレオ。
――の隙を突いて、ミアが右前脚付近まで近づいていた。
そしてミアは、拳に大きな魔力を込めていた。
「オレのスキルの前じゃ! 防御は意味ねぇぜ!! 『粉砕』――獣牙・魔連撃!!!」
ミアは目にも止まらぬ速さで拳を連打し、フォレストレオの甲殻へ叩きこんだ。
彼女のスキルもあって、甲殻は一気に粉砕されていく。
そして最後は、そのまま甲殻が木端微塵に吹き飛び、その勢いでミアは高く跳んだ。
「喰らえや! 猫野郎!!!――獣王脚!!」
そのままミアは、フォレストレオの顔面へ強烈な蹴りを叩きこんだ。
それによって口が切れたのだろう。
フォレストレオの口から僅かだが、血が吐き出されていた。
「へへっ! どうだ!!」
ミアは蹴った反動で距離を取り、フォレストレオの様子を見ていた。
だが今がチャンスでもある。
ミアが怯ませたことで私も一気に接近し、燃える甲殻へブレードを振るった。
「行くぞ!――炎魔十文字!!」
ブレードに炎を纏わせ、私は素早く十字状にブレードを振り下ろす。
そして攻撃によって甲殻は砕け散り、私も距離は少し取ってミアと合流する。
「センセイ! あとどんぐらいだ!?」
「まだまだ! 奴に余力はあるぞ!」
ミアはもう少しぐらいかと言った風に聞いてくるが、まだまだ。
あの程度じゃ弱った内に入らない。
それに、このエリアの環境もある。もしかすると――
『ガオォォォォォォン!!』
私の嫌な予感が的中した。
フォレストレオが大きく鳴くと、周囲のマナがフォレストレオへ集まりだした。
そしてマナがフォレストレオへ吸収されると、砕いたはずの甲殻が一瞬で再生した。
しかもより強靭な形となって。
更に殴り、斬った傷も徐々に癒されていく。
「嘘だろ……!」
それを見てミアが疲れた様に肩を落とすが、すぐに構えなおした。
「センセイ! もっと本気でやって良いんだよな!!」
「あぁ! 殺す気でやる方が丁度良い! それだけ奴の再生力が脅威だ」
奴はやはり、この環境を利用している。
水、そして濃い自然のマナ。
それさえあれば自身を活性化させ、驚異的な再生能力を得ることができる。
『ガオォォォォォォン!!』
私達はそのことを理解し、頭に入れ、再びフォレストレオへと向かって行った。




