表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/150

冒険者+5:おっさんとエリク草(5)

 その後、火の番をしていた私だったが、途中でミアが起きたので交代した。


 少しでも眠れるのはありがたい。

 私は少しの間、眠り、次に起きた時は日が昇り始めていた。


 朝は昨日のフォレストボアの余りと、エミックからパンと水を出してもらい、軽い朝食を取った。


 しっかりと朝食を取る。それも冒険者の鉄則だ。


「センセイ。今日はどこを探すんだ?」


「今日は北の方を探そうと思う。北にはフォレストレオの縄張りも多いからな」


 私はパンに肉を挟んで食べているミアへ、そう言った。


 フォレストレオは縄張りを巡回している。


 最悪、一つの縄張りに張り付いていれば、いつかは会えるんだ。


 だがそれでも最低7日は掛かる。

 どんな病気かは知らないが、依頼主の子が大丈夫だと良いんだが。


 とりあえず私達は地図を広げ、向かうポイントを把握した。


 それから装備を整え、キャンプ地を跡にするのだった。


♦♦♦♦


「第一スキル『粉砕』――獣王拳!!」


『ガウッ!?』


 密林を進んでいると、どうしても魔物と出会ってしまう。

 

 目の前でミアにぶっ飛ばされているのも、このダンジョンも固有種――『タイガーベア』だ。


 両腕に木の甲殻を付けた、トラ柄の熊だ。

 だがミアのスキルによって防御は意味がなく、そのまま仰向けで倒れてしまった。


「だぁぁぁ! 邪魔くせぇ! 勝てねぇのに出てくんなよ!!」


「無理を言うな。向こうからすれば、私達は縄張りを荒らす人間だ。否が応でも構ってくるぞ?」


 理不尽に叫ぶミアへそう言って、私は彼女を落ち着かせた。


 その叫びで他の魔物がやってくるだろうし、体力だって無駄に消耗する。


 まぁこれでフォレストレオが来てくれるなら良いんだが、そうそう甘くはない。


「でも縄張りを二つも回って、まだ出会えてないんだぜセンセイ!」


「そうそう会える魔物じゃないって、何度も馬車で言ったろ? 焦るな、縄張りを確実に張り込めば必ず会える」


 私はそう言ってナイフを近くの木に投げた。


 すると木に刺さると、何もない筈の場所から血が流れてきた。

 

 そして、その正体を現した。


 毒々しい色をしたトカゲだった。

 こいつは麻痺毒を持つトカゲ『ポイズン・エレキリザード』だ。


 擬態能力もある厄介な奴だよ。


 その姿を見ていたミアも、またかと表情を露骨に歪ませていた。 


「またそいつかよ……擬態ばっかりで面倒くせぇ。面倒くせぇダンジョンだな」


「危険度9ダンジョンだぞ? 楽なものか」


 私はそう言って彼女へ水筒を手渡した。

 ミアは受け取ると、水筒を少し飲んで汗を腕で拭う。


「プハッ……ったく、どこにいんだよフォレストレオ」


「さっきの縄張りで見た足跡を触ったら、まだ温かった。運が良ければ、次の縄張りで会えるかも知れないが……」


「確証はないってか……まぁ都合よく絶対はねぇわな」


 ミアはそう言って地図を広げている。

 彼女なりに考えようとしているのだろう。


 願わくば、次の縄張り辺りで見つかると良いんだが。

 

 まぁそうなれば死闘が始まるから、大変なんだがな。


 そんな事を思いながら私達は先を進むことにした。

 目標は次の縄張り――大きな水場がある、広い空間の場所だ。


 そこで出会えると良いんだが、そう思っていた私だ。


 だがまさか、本当に出会えることになろうとは、この時はまだ思ってもみなかった。



 暫く歩き、次の縄張りへ近付いた時だった。

 私達を強烈な威圧感が襲った。


「これは……!」


「センセイ、いるぜ……!!」


 重力が変わったかの様に、首に刃を突き付けられているかのように。

 

 身体が重くなり、同時に私達は冷や汗が噴き出した。


「そう言うことか……!」


 私は全てを察した。

 フォレストレオは最初から《《気付いていた》》んだ。


 私達の存在を。


「気付かれていた……! だから次の縄張りで待っていたんだ、フォレストレオは……!」


「どういうことだよセンセイ!」


 冷や汗を流しながらミアが聞いてきた。


「フォレストレオは『植獣王類』――水や自然のマナがあれば、その力を大いに発揮できる! そして次の縄張りは、この辺りなら比較的、自然のマナが多く発生する場所なんだ! しかも水辺でもある!」


「嘗めやがって……! 地の利を活かす気満々ってか!」


 私達は拭いても拭いても流れる冷や汗を、鬱陶しく感じながらも、この威圧感の耐えて足を進めた。


 そして広い空間に出ると、そこは確かに水辺で、爽快さを感じさせる自然のマナに満ちていた。


 本来ならば深呼吸して昼寝をしたいぐらいだが、それは出来ない。


 何故ならば、ヤツが縄張りの中央で陣取ってるからだ。


『ガルルルル……!』


 唸り声を出す、その存在――フォレストレオ。

 

 下手な屋敷よりも大きな、その巨体。


 威厳ある、エリク草である葉の鬣。


 眼光、爪、尾。その全てにおいて強烈な威圧感を放つフォレストレオ。


 奴は鋭い眼光で間違いなく私達を捉えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ