表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/157

冒険者+5:おっさんとエリク草(3)

 木々が凄い。

 道らしい道がない。あっても獣道寄りの道だけだ。


 危険度8以上は、殆ど人の手が入らないダンジョンだ。


 部外者である私とミアを嫌うかの様に、木々が行く手を阻んでくる。


「ミア、毒草の類には注意しろよ。あと擬態系の魔物にもだ」

 

「分かってるけどよ、凄い木々だなセンセイ。これじゃ、まともに進めない……!」


「最初だけだ。暫く進めば多少は広い場所に出る」


 ミアの鬱陶しそうな言葉に、そう返答しながら進むと私の言った通り、やや広い道に出た。


 人の手が入った場所ではないが、それでも人が歩くには十分な広さだ。


「ふぅ……ようやく出れたな。全く、腰にきたよ……!」


「センセイ、その言い方、おっさん臭ぇよ」


「もうおっさんだ、私も」


 何度も言ってきたが36歳だぞ。

 腰や肩にもガタ来てるし、こんな木々まみれの中に来れば腰だって叫ぶぞ。


 それに、ここは良い思い出がないからなぁ。

 可能なら、とっととガイアンレオを見つけて素早く帰りたいさ。


 けど、それも楽じゃないんだよなぁ。

 このダンジョンは広い。そしてダンジョン内全てが、ガイアンレオの縄張りだ。


 つまりは出会うだけでも大変なんだよ。

 

 ミアの仲間――そのお子さんの為にも早く帰ってやりたいが、これだけは仕方ない。


「まずは拠点となる場所に向かうぞ。それからガイアンレオを探す。――近場にいると良いんだが……」


「そんなに見つからないもんなのか、センセイ?」


「このダンジョンは広い。そして、ここ全てがガイアンレオの縄張りだからな。今、どこにいるのやら……ただお気に入りのスポットがあるから、そこを狙うぞ」


 それでも確実じゃないがな。

 だが闇雲に探すよりかは可能性が高い。


「だがまずは拠点だ。私が使っていた場所が残ってる筈だから、そこへ向かうぞ」


 場所が場所だけに残っている筈だ。

 でも同時に昔の嫌な記憶も蘇るなぁ。――ちょっとしんどい。


「ハァ……とりあえず付いて来い、ミア。日が暮れる前に準備はしたい」


「りょ~うかい。でもだったら食料も、もっと必要になるかもな。――おっ! 良い感じの木の実があんじゃんか!」


 木の実? ミアの言葉を聞いて、私は彼女が小走りに向かう場所を見た。


 そこには黄色の柑橘系の様な木の実が実っていた。

――って、駄目だ! あれは駄目だ!


「待てミア! それは魔物だ!?」


「へっ?」

 

 ミアはその場で立ち止まったが、それと同時だった。

 木の実が実っていた木が――木の地面が動き、根っこが飛び出してきた。


「根っこが――!」


「魔物『悪魔樹の根』だ! 燃やすぞ!――大炎斬!!」


「よっしゃ!――爆炎咆哮!!」


 私は両腕のブレードに、ミアは拳に炎を纏わせて迫りくる根っこへと放った。


 私が斬ると一気に根っこは燃え上がり、ミアの攻撃で根っこは木端微塵となる。


 そして根っこが消えた途端、木は力尽きた様に倒れた。


「うわぁ……ビックリした!」


「だから擬態魔物に注意しろと言ったろ! このダンジョンには、こんな奴等が沢山いるんだぞ!?」


「わ、分かったって……反省してるよ」


 本当か? ミアは野生の勘は鋭いが、たまに鈍い時があるからな。

 特に空腹の時とか。


「ハァ……とりあえず、この木の実は貰って行こう。結構、美味いんだこれ」


 悪魔樹のオレンジ。冒険者の間では希少な果実で有名だ。

 程よい酸味、そして甘味。疲れた時には最高の食材だ。


「へぇ~擬態用じゃなく、本当に食えるもんなんだな」


「不味い擬態に獲物は寄ってこないだろ? とりあえず……エミック! オレンジを収納してくれ」


『~~♪』


 私とミアは次々に採ったオレンジを、腰を降ろしてエミックの口の中に放り込んで行く。 


 やがて一通り採取し終えると、私達は立ち上がった。


「さて、ジッとしてたら他の魔物も来そうだ。ミア、行くぞ? 付いて来い」


「あいよ! 良い土産ができたぜ」


 ミアはオレンジを一個、かじりながらそんな事を呟いていた。

 そして私達は急ぎ、その場を跡にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ