冒険者+5:おっさんとエリク草(2)
結局、私がミアを止める術はなかった。
チユさんが『エリク草』が必要と言った以上、本当に必要なのだろう。
危険すぎるからと止めても、彼女は単身でも向かってしまう。
そういう性格なんだ。
仲間想い、家族想い。口調は荒いが、根っこは優しい子――それがミアだ。
だから私も覚悟を決めた。
怪我が治ったばかりで、まだ本調子ではない。
それでもミアを単身で行かせる訳にもいかない。
だから私も行く事を決めた。
同時にミアと約束もした。
出発は三日後であること。その間に必要な物を準備すること。
それが守られないなら、全力でミアを止める事を伝えた。
ミアはそれを聞いて一瞬、何とも言えない表情をしたが最後は頷いた。
きっと時間が掛かると思っているんだろう。
だがそれだけ準備が必要なんだ。
私も少し道具の準備、そして製作をしなければ。
その場で分かれた私達は軽い昼を取った後、それぞれの準備の為に別れた。
私も騎士団本部に戻り、事情を説明して帰宅する。
そして道具を買いに行ったり、クロノにベヒーの面倒を頼んだりと色々とした。
そんなこんなで三日後、私とミアは王都から旅立った。
馬車はミア専用車で、馬もジェネラル・ホースの<ブレス>が引っ張っている。
本来ならば7日は掛かる場所だが、ブレスが引っ張るなら5日で着くかもしれない。
「さてさて……危険度9のボス魔物が相手だ。骨が折れるぞぉ」
私は思わず弱音を吐くが<ガイアンレオ>は、それ程の魔物だ。
木々・植物を操り、肉体も植物と同化した獣<植獣王類>だ。
魔物の中でも<王>の名を冠する魔物。
それ系の魔物はレベル関係なく、絶対に注意しなければならない魔物だ。
実力・能力。それらが何かしら特殊な魔物だからだ。
そんな魔物の鬣が今回の目的――『エリク草』だ。
きっと壮絶な戦いになる筈だと思いながら、私は高速で激しく揺れる馬車の中で考えていた。
♦♦♦♦
王都から西へ5日。
既に周囲は森に囲まれた環境となっていた。
自然豊か。聞こえは良いが、つまりは人の生活圏から離れた場所だ。
奇形とも呼べる虫型魔物や、密林に潜む肉食魔物。
そんな存在の姿や鳴き声ばかり聞こえる。
「……ミア、この辺りで止めるんだ」
「着いたのか、センセイ」
ミアからの問いに私は頷いた。
道中の森とは明らかに一線が引かれた場所。
威圧感、存在感とも言えば良いのか。
明らかに道中の森とは違う、目の前の密林の光景に私は息を呑みながら馬車を降りた。
私に続いてミアも馬車を降り、端に<ブレス>と馬車を寄せていた。
そして私は目の前に広がるダンジョンを前に、少し深く息を吐いていた。
「ハァ……いつ以来だ。ここに来たのは」
「センセイ……ここが、あのダンジョンなのか?」
「あぁ……『絶対樹界・翠獣の密林』だ」
――そして別名・ビーストジャングル。
凶悪な昆虫型魔物、植獣類の生息地。
擬態する魔物も多く、植物系魔物もいて気が抜けない場所だ。
「ミア、分かっているな? 『エリク草』を手に入れるにはガイアンレオとの戦闘は避けられないぞ」
「この五日間で、何度も聞いたぜ。とっくに覚悟は出来てる……!」
そう言ってミアは拳を強く握った。
気合が入っているのは結構。
冷静さも残している様だし、何とか大丈夫そうだ。
「毒消し草はすぐ接種できる様にしておけ。麻痺性の毒草もあるから気を付けろよ」
「おう!」
ミアは力強く頷くと、私達は緊張感を保ちながらダンジョンの中へ入って行った。
目的はガイアンレオの鬣――希少薬草『エリク草』だ。
そして森の入口へ入った私達を出迎えたのは――
「キャアッ!? こらぁエミック! 尻を舐めるなって!!」
『~~♪』
まさかのエミックからの奇襲だった。
全く、緊張感が台無しだよ。




