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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十三章:オリハルコン
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冒険者+5:おっさん負傷する

 意識が戻って来た――いや目を覚ました様な感覚だ。


「ここは……馬車か?」


 どうやら私は馬車の中で横になっている様だ。

 

 そうだ。思い出してきた。

 バスクとの戦闘で気を失ったのか。


 確かに肉体の節々が痛いし、体内にも重い痛みがあるな。

 

 けど先程――っていうか、倒れる時よりは痛みがない。

 

 私は顔を動かし、目だけで馬車内を見てみた。

 すると、馬車の一角に沢山の空き瓶がある事に気付いた。


 それ以外にも使ってあろう薬草が置かれている。


「確か……最後に見たのは――」


 私がそう言った瞬間、ガタンッと馬車が大きく揺れた。

 

 そして私は気付いた。馬車が動いている事に。


――誰が運転しているんだ……?


 まだボォ~とする意識の中、私は身体を起こした。

 どうやらまだ日は沈んでない様だ。夕日が眩しい。


「……おい、馬車を運転しているのは誰だ?」


 そう言って馬車の運転席を見ると、そこには――


『~~♪』


「エミック……! お前か……治療と、馬車の運転をしてくれたのは?」


『~~!』


 そこにいたのはエミックだった。

 器用に闇の腕で馬車の手綱を握っていて、今も余裕そうに手を振ってくる。


「助けられたな……相棒」 


『~~♪』


 私がそう言うとエミックは一回だけ跳ねた。

 

 そして、闇の腕が私の所に伸びてきて、まるで寝てろ!――そう言わんばかりに床へ指差していた。


「分かった、分かった……すまない。一旦、頼むよ」


『~~♪』


 私はそう言って再び横になると、エミックも腕を引っ込めた。

 そして、運転に集中し始めた様だ。


 気分よく跳ねる音が聞こえてくる。

 気分転換で楽しいんだろうな。


「アハハ……少し、休ませてもらうか」 

 

 私はそう呟いて、目を閉じた時だ。

 馬車がまた揺れ、すると近くの袋から何かが出てきたことに気付いた。


「……オリハルコン」


 あぁ、そうだ。バスクとの闘いで忘れていたが、少し面倒になりそうだな。


 冒険者としての規定を破った『永遠の黄金船(エルドラド)

 そのメンバー達はバスクによって殺されてしまった。


 依頼品のオリハルコンはあるが、素直に渡しても渡さなくても面倒になる。

 

 実際、メンバー達が死んでいる。

 きっと『永遠の黄金船』は何か言ってくれるだろうな。


 それにバスク自身はどうなったのだろう?

 

 あの頑丈さなら死んだとは思えない。

 きっと生きているし、エミックの事だ。その場に放置したんだろうな。


「面倒になりそうだ……」


 色々と面倒ごとがあるな。

 だが今はまだ休みたい。そう思って、私は静かに瞳を閉じるのだった。


♦♦♦♦


――その頃。

 夕日が沈み始めた頃、バスクはまだ洞窟の前で大の字で倒れていた。


「負けたか……」


 しかし意識は戻っていた。

 そんな中で彼はそう呟き、ようやく立ち上がる。


「魔人化をしなくて……正解だったな……!」

 

 きっと魔人化すれば、こんな清々しい満足感はなかっただろう。

 バスクはそう思いながら大乱世を持ち、近くの岩場に手をかざす。


「だが、すまんなダンジョンマスターよ。始高天としては俺の勝ちだ」 


 そう言って手をかざした先に魔法陣は現れた。

 

 それは始高天の目的――創世の為の魔法陣だ。


「俺はこの世界が嫌いだ。お前もだろうダンジョンマスターよ……いつか答えを聞こう。――さらばだ」


 バスクは、既にいないルイスへ対してそう言うと、歩きながらその姿を霞の様に消してしまった。


 その場に残ったのは『永遠の黄金船』の者達の遺体と、一つの魔法陣だけだった。

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