冒険者+5:おっさんとオリハルコン(3)
目の前で不思議な質感で動くスライム達。
彼等が今回の目的だ。
だからといって倒す訳じゃない。
寧ろそんな事をすれば、目的のオリハルコンは手に入らなくなる。
『プルルルルン……!』
『カチカチプルルルルン!』
相変わらず変な鳴き声だな。
だが彼等は貴重な魔物達だ。下手な扱いをしてはいけない。
『~~♪』
『~~♪』
何やらエミックともコミュニケーションを取っているし、どうやら機嫌は悪くなさそうだ。
さてさて、それじゃ早速仕事をするか。
「……それにしても小さいのしかいないか。本当はキングがいてくれると助かったんだが。まぁ仕方ない」
私はその場でしゃがんだ。
そして目の前で遊んでいるスライム達に、慎重に手を伸ばす。
すると、スライム達は私の匂いを嗅ぐようにすり寄ってくる。
『……カチプルルルルン!!』
スライム達は一瞬、大きく震えた。
だが落ち着いた様に静かになると、今度ははしゃぐ様に飛び跳ねた。
そして、最後には口から小さな石ころを吐き出してくれた。
彼等の身体と同じぐらいの石だ。
次々と吐き出してくれる石。
それは神聖的で、幻想的な輝きを放つ石だ。
そして、これこそが私の求めていた物。
――『オリハルコン』だ。
「良い質のオリハルコンだ。流石は長年生きてる<オリハルコンスライム>だな」
――オリハルコンスライム。
それこそが目の前にいる彼等の名前だ。
分かるだけでも数百年は生きていて、身体がオリハルコンで出来ている魔物だ。
けれど性格は基本的には温厚。
そして一番は、ある条件を満たしている者に、こうやってオリハルコンをくれる事だろう。
「人によっては伝説級の入手難易度になるオリハルコン。しかし、私の様に条件を満たせば、こうも簡単に手に入る」
私はそんな事を呟きながら、袋に彼等がくれたオリハルコンを入れていく。
物は小さいが、これでも十分すぎる代物だ。
私はそうやってスライム達からオリハルコンを貰い続け、大きめの袋が一杯になってきた。
――そんな時だった。
『!』
オリハルコンスライム達が、一斉に動きを変えた。
怯える様な、怖がる様な、そんな感じで震えて私の影に隠れ始めた。
そして同時に、背後から聞こえてくる大勢の足音。
――数は15人か。
驚いたな。どうやって入って来たんだか。
「全く、どうやって入って来たか知らないが、随分と行儀の悪い事をするね。依頼をしながらも、本当の目的はオリハルコンの入手場所か」
私は呆れた様に言いながら腰を上げ、振り返った。
そこには想像通りの者達がいた。
「……どうなんだい? 『永遠の黄金船』」
「正解だ。ダンジョンマスター」
彼は確か、黒の園でエミックにぶっ飛ばされたバサカと呼ばれた男だな。
周りにいる連中も『黄金船』の刺青があるな。
間違いなく『永遠の黄金船』のギルドメンバーだ。
武器、つるはしを持っている以上、目的は容易に分かる。
私は静かに両腕のガントレットからブレードを出し、ゆっくりと身構えた。




