冒険者+5:おっさんとオリハルコン(2)
王都から馬車で三日――そこにオリハルコンの採取場所がある。
――その名は<聖晶域>
オリハルコンの影響で洞窟内が結晶化した、特殊な洞窟だ。
入るにも条件がある。特殊な結界があるんだ。
オリハルコンの所持者か、それか《《気に入られた者》》だけしか入れない。
そんな場所に私は三日掛けてやってきた。
今回は流石に一人だ。同行はエミックだけ。
ベヒーは餌で荷物が圧迫するから流石に厳しいから、またミア達に世話を任せて置いてきたよ。
そして今、私は洞窟の入口に立っていた。
「さて……問題が起きる前に行くか」
そう言って私は背後を見た。
誰もいない。岩々しかない光景だが、気付いているよ。
この三日間、ずっと見られている。
それか尾行されている感がずっとあったんだ。
お陰で夜も熟睡できなかったよ。
けど相手は大体だが予想できる。
――『永遠の黄金船』の連中だな。
恐らく、オリハルコンの採取場所を把握しようとしているんだろう。
だが、その程度の考えじゃ絶対にオリハルコンは手に入らないよ。
例え、私が依頼通りにオリハルコンを納品したとしてもね。
《《彼等に》》気に入られなきゃ入れないよ。
そう思いながら私は洞窟の前に手をかざした。
するとオーロラの様な結界が消え、私はゆっくりと足を踏み入れた。
そして中に入った私を出迎えたのは、神聖な輝きの結晶が生える洞窟内。
それと濃度の濃いマナの領域だった。
「相変わらず凄いマナだ……」
これは伝説の物質――オリハルコンの影響だろう。
嘗ては誰もが使えたと言われるオリハルコン。
今じゃ世界で何人が使えているのか。
私が知る限りでは弟子以外や冒険者仲間以外だと、グランしか知らない。
魔剣の類も絶対にオリハルコンって訳じゃないし、業物=オリハルコンって訳じゃない。
しかし誰もが欲する物でもある。
ドワーフ族ですら採取に苦労するぐらいだ。
私だってどれだけ準備しても、量を確約できない。
勿論、採取もだ。私次第とか、そういうのじゃないからね。
「さて……彼等は元気かな?」
『~~♪』
私の呟きにエミックが笑う様に口をパカパカさせている。
そりゃ元気だろうと、当然だろうと言わんばかりの様子だ。
だが実際、それに賛成だ。
彼等が元気じゃない事なんてないだろう。
自分で言って思わず笑いそうになる。
「さて、じゃあ行こうかエミック。ここは凶暴な魔物もいない。久しぶりにゆっくりと出来そうだ」
最近は神経を削るダンジョンばかりだったからなぁ。
こんな風に、落ち着けるダンジョンは久しぶりだ。
私はそう言ってダンジョンを進んで行く。
すると驚いた。少ししか進んでないのに、もう出会ってしまった。
「やぁ、元気そうだね。君達は」
そう言って私が話しかけると、ゆっくりと私の前に姿を見せてくれた。
『プルルルルン!』
それは小さなスライム達だ。
彼等はプルプルしているのか、カチカチなのか、よく分からない謎の動きをしている。
そう、彼等はただのスライムじゃない。
彼等の身体は神聖な輝きを発していて、まるで鉱物の様な硬さが光の反射で分かる。
そんな彼等スライムが、今回の私の目的だ。




