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空元気でお腹が痛くなる女子

 公立高校2年1組の教室。昼休み。松本叶絵はスポーツドリンクを飲みながら、弁当を食べる友達数人を相手に、面白いネタを披露していた。笑わせると同時に自らもよく笑う。

 叶絵は弁当を食べない。持ってこない。いつもスポーツドリンクかお茶を飲むだけだ。何故かというと、学校や外で物を食べるとお腹が下ってしまうからだ。どうしてお腹が下るのか、本人にもよく分かっていない。小学生の頃にはそんな事もなかったのに、中学1年時に胃腸炎になった事をきっかけに、胃腸炎が治った後も、外で食べると下ってしまうのだ。家ではたくさん食べても大丈夫なのに。

 叶絵は、本当は黙って静かにしているのが好きだった。小学生の頃には、仲の良い友達が一人いて、休み時間にはその友達といつも一緒にいた。残念な事に、その唯一の友達は中学入学を機に遠くへ引っ越してしまった。叶絵は新しい友達を作ろうと、自分なりに頑張った。笑顔を振りまき、なるべく元気よく受け答えをすると、友達が出来た。簡単だった。だが、その元気のよいキャラを演じ続けるのは、そんなに簡単ではなかった。

 本当は静かにしていたい。だが、ちょっと黙っていると、

「どうしたの?元気ないね。」

と言われる。それだけならまだいい。静かにしていると、いつもなら寄って来る友達が寄ってこない。叶絵の方から元気に声を掛けるのが当たり前になっているから、黙っていると誰も寄り付かない。いつもと違うから、怒っている、機嫌が悪い、などと思われるのかもしれない。それに、別の人の悪口が耳に入ってしまった事がある。

「あの子さあ、暗いからこっちがテンション下がるんだよねー。正直一緒にいたくないわ、私。」

叶絵の事ではなかったが、自分も暗いと思われたら、同じように悪口を言われると思った。だから、いつも元気に頑張る。頑張っているという意識もなかった。だが、食べ物を口にしようとするとお腹が痛くなる。もう分かるのだ。食べる前から、食べたらダメだという事が。食べる前からお腹がゴロゴロ言い出すのだから。

 それでも、お腹は空く。家に帰ると爆食いしてしまう。母親が用意してくれた夕飯だけでは足りず、食後にお菓子をたくさん食べてしまう。それで、結局は太めの体型になってしまうのだった。

「叶絵ってさあ、お昼にスポーツドリンクしか飲まないよね。お腹空かない?」

友達に言われる。

「お腹は空くけどぉ、ダイエットしなきゃだし。」

叶絵がそう言ってヘラヘラっと笑うと、

「そうね、あんたは少しダイエットした方が良さそうね。」

と、金田灯里が言った。灯里は美人でスタイルも良く、長い髪は程良くウエーブがかかり、背も高いので目立つ美人だった。お昼にはコンビニで買って来たサンドイッチとスイーツを食べ、フルーツジュースを飲む。ついでに買って来たスナック菓子を食べる事もある。それでそのスタイルを保っているのだ。叶絵は恨めしかった。ダイエットしなきゃだと?どれだけ空腹を我慢していると思っているのだ。それでも、

「エヘヘ、灯里みたいに私もなりたーい。」

と、元気に返す叶絵だった。

(どうして私ばっかりこんな目に遭うの?)

クラスの皆が幸せそうに見えた。楽しそう。悩みなどなさそう。特にこの、美人でスタイルの良い灯里は。この人は、黙っていても皆に囲まれる。無理に笑ったり、笑わせたりしなくても、いつも友達に囲まれている。どうして自分だけ……。


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