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俺のスキルは<剣技:->(いち)!  作者: 日之浦 拓


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音信不通

「これは意外ね。まさかウー将軍がここに姿を現すなんて……一体どういう風の吹き回しなのかしら?」


「呵呵呵、そう邪険にするものではない。たまには現場の空気を吸わねば体が鈍ってしまうからな。それにまさか、お前達如きがこの私を害することができるとでも?」


 驚きと挑発、そして何より懐疑を込めて言うアリシアに、ウーは余裕の笑みを浮かべて答える。その言葉に反応するように、ウーの前に並んでいた兵士達がザッと一歩足を踏み出した。


「彼らこそ五龍の一番隊。私の持つ最強の手駒だ。他の者達とは格が違う……試してみるかね?」


「だそうよ、ケンイチ君?」


「んじゃ、やってみますか……よっと」


 剣一が軽く右手を振るうと、兵士達がその場でガクッと膝を折る。だが彼らは倒れることなく踏みとどまると、そのまま無機質な瞳を剣一に向ける。


「えっ、嘘だろ!? 今ので気絶しないのかよ!?」


「ほう? 報告にはあったが、本当に武器なしでスキルを使えるのか……その秘密も含めて、お前達には色々と話をしてもらわねばな。『取り押さえろ』」


『了解』


「ケンイチ君、私の武器は何処!?」


「あー、多分あれ!」


 研究室っぽい室内は机や棚が大量に配置されいるものの、部屋自体の広さはかなりのものだ。そのなかで剣一は何となく剣がありそうな棚を指差すと、アリシアがそちらに走っていく。


 勿論そんな動きを許さないと兵士達が襲いかかってきたが、その悉くが剣一によって弾き飛ばされ、棚のところに辿り着いたアリシアが中を漁ると、そこには見覚えのある剣が二本入っていた。


「あった! ケンイチ君!」


「おっと、サンキュー! じゃない、ありがとうございます、アリシアさん」


「ふふっ、サンキューでもいいわよ。クサナは下がってて。ミンミン、クサナのことお願いね」


「……わかった」


「お願いされても困るネ!? あーもう! とりあえず端っこの方に避難しとくヨ!」


 剣一に剣を投げて渡すアリシアの言葉に、クサナとミンミンが棚に身を隠すように移動する。流石のミンミンも、この状況で「ワタシは無関係ヨ!」と投降するほど肝が据わってはいなかった。


 そうして二人が避難するのを見届けると、アリシアが改めて剣を構える。


「あー、やっぱり自分の武器はいいわね……覚悟しなさい! ソニックスラッシュ!」


 ここまでに出会った敵兵の武器はその多くが銃で、数少ない近接武器の使い手は刀身だけのナイフに紐を結んだようなものや、柄の部分から山のような形でニュッと刃が伸びている武器など、色物ばかりであった。


 加えてクサナから「使わない方がいい」と指摘されたことと、そもそも剣一が強すぎて戦う必要がなかったこともあってここまで見ているだけだったアリシアだったが、ようやく愛剣が戻ったことで、その力を容赦なく振るっていく。


「ソニックスラッシュ! ソニックスラッシュ! ソニック……パワースラッシュ!」


 矢継ぎ早に繰り出される攻撃を、相手の男は両腕にはめた黒光りする籠手で受け止める。パワーは明らかに相手が上、しかし速度はわずかにアリシアが上回り、その腕を浅く切りつけることに成功したが……


「……………………」


「キャッ!? 浅かった? いや、でも今の手応え……? ケンイチ君、そっちは?」


 間違いなく負傷させたはずなのに、相手には一切それを気にするそぶりがない。加えて斬ったにも拘わらず、血が飛び散ったのは最初の一瞬だけで、継続した失血がない。それを不審に思うアリシアが声をかけると、剣一もまた戸惑いの表情を浮かべていた。


「アリシアさん、こいつら何かおかしいですよ! どんだけぶっ飛ばしても平気で起き上がってくるんですけど!?」


 相手が揃って巨漢ばかりということもあり、剣一は割と強めにその体を吹き飛ばしている。だが肋骨くらいなら折れているくらいの手応えがあるというのに、誰もうめき声どころか眉一つ動かすことなく、痛がる様子がない。


 そしてそんな剣一達の反応に、ウー将軍がニヤリと笑う。


「言っただろう? 他の者達とは格が違うと。彼らにはこの私が自ら手を加えたのだ。その力はまだまだこんなものではないぞ? 『超力解放』」


「「「ウッ……グォォォォォォォォ!!!」」」


「なっ!?」


 ウー将軍の掲げた手から、黒い炎がゆらりと立ち上がる。するとこれまでずっと無反応だった兵士達が突如としてうめき声を上げ始め、次の瞬間彼らの筋肉がはち切れんばかりに膨れ上がり、その体躯が倍近くになる。


「ウォォォォォォォォ!!!」


「ちょっ、くっ!? これは流石に……キャア!」


「アリシアさん! このっ!」


 元々ギリギリ渡り合えていた程度だったアリシアが、いきなり強くなった敵に押しつぶされそうになる。焦った剣一が敵兵を纏めて吹き飛ばしたが、かなりの勢いで壁に叩きつけられてなお、何事もなかったかのように兵士達が起き上がる。


「うわ、こりゃ駄目だ。ディア、一時撤退する! 転移を……ディア?」


 剣一に人が殺せない以上、致命傷を与えなければダメージにならないような敵との戦闘は相性が悪すぎる。色々と問題は残るが、それでもここで粘ってもジリ貧だと判断した剣一が即座に撤退を決めたが、呼びかけてもディアからの返事がない。


「ディア!? 何で……ならレヴィ! アリシアさん、そこに俺の首飾りありませんでしたか!?」


「え、なかったけど……」


「捜し物はこれかね?」


 焦る剣一の言葉に、ウー将軍が繊月のように口元を歪めて嗤う。その手に持っていたのは、剣一が奪われたレヴィのイクラ入りの小瓶だ。


「あ、お前それ、俺のだぞ! 返せよ!」


「返せだと? これは無様に眠った貴様を保護してやったことに対する、正当な対価だ。それにこれのおかげで我々の研究は一気に進み、アメリカの猿共より優位に立つことができた。感謝しているぞ、少年」


「は? 何だよそれ?」


「アメリカの優位……ですって……!?」


 意味がわからず首を傾げる剣一と、強い警戒心で将軍を睨み付けるアリシア。そんな二人に対して、ウー将軍は上機嫌で言葉を続けていく。


「そうとも。アメリカが転移魔法を手に入れたことはわかっている。故に我等にとての急務は、我等も転移魔法を手に入れることと……転移魔法の発動を阻害することだ。


 だがアメリカとてそれがわかっているだろうから、そう簡単に尻尾を掴ませはしないと思っていたんだが……フフフ、まさかこんなところでその糸口が見つかるとはな」


 そこで一旦言葉を切ると、ウー将軍は楽しげに手の中で小瓶を転がす。


「こいつからは、絶えず何処かに魔力が発信されていた。故に我々は、その波長こそが転移魔法で二点間を繋ぐために必要なものだと推測したのだ。 本来ならば途方もない時間をかけて総当たりしなければわからないそれが特定できた以上、それを阻害するのは難しいことではない。


 その効果は……今実感してもらえているだろう?」


「マジかよ、そんなことができるなんて……」


 ドヤ顔で語るウー将軍に、剣一が思い切り歯噛みをする。剣一からすれば、ディア達の力を阻害するなんてことができると思っていなかったからだ。


 そしてそれは、半分正しい。いくらウー将軍が抱える研究者が有能であったり、レヴィのイクラという特級の魔導具が手に入ったとしても、ディアの……ドラゴンの力を断ち切ることなど夢のまた夢。それこそ何百年、何千年と研究を続ければどうにか……というくらいに力の規模がかけ離れている。


 だがウー将軍には切り札(・・・)があった。今回はそれを組み合わせたことで、時間も範囲も限定的ではあるものの、ディア達の干渉を断ち切ることに成功したのである。


 ……なお、当然ディア達は繋がりが切れたことを察知しているのだが、そんなことができるのは剣一しか思い浮かばなかったため、「何らかの理由で剣一が斬った(切った)」と判断し、気楽な感じで連絡待ちしていた……閑話休題。


「はーっ……こういうのは大事になりそうだから、俺の独断じゃやりたくなかったんだけど……」


 そしてそんな細かい本当の事情など、剣一には知る由もない。だがスマホも財布も奪われている現状、何処ともわからない場所から外に逃げて、通りがかりの誰かを見つけて連絡を……などとできるはずもないのだから、そうなればもうやるしかない。


 故に剣一は覚悟を決めて、ウー将軍を失神させるべく腕を振るおうとする。だが……


「…………えっ?」


 不意に剣一の体から、カクッと力が抜ける。思わず転びそうになった剣一の視線の先では、突き出した右手から黒い炎を揺らめかせるウー将軍が不敵に笑っていた。

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