神の御言葉3
その日は突然やってきた。
今は春休み中。
俺らが部活も終わってロースターと一緒に寮に戻ろうとしている時だ。
空から光が差し込んだ。
その光はこの世界ではありえないほどに神々しい。
奴が来る。
空から何かが降りてくる。
人の見た目をしているものの人ではない。
神だ。
「やぁみんな、久しぶり〜元気にしてた〜?」
相変わらずの軽い挨拶。
そんな奴を警戒したロースターが剣に手をかけた。
あ、そうか、ロースターは神をみるのは初めてか。
俺はとりあえずこいつがおそらく本物の神であることを説明する。
そうするとロースターは剣から手を離した。
次にロースターが質問する。
「神様ってことは、ストイール教の絶対神『ミッドウェール』様ですか?」
ストイール教とは、この世界で最も信仰されている宗教。
前世でいうキリスト教のような感じだ。
たしか、ロースター自身は無宗教だが、ロースターの身近には結構ストイール教徒がいるらしい。
「いや、ミッドウェールなんて神はいない。あれは人間が勝手に作り出した架空の神様だよ」
そうなのか。
ミッドウェール教徒が聞いたら間違いなく問題になる発言だな。
「それで、何しに来たんですか?」
「ああ、君たちに力を与えようと思って」
力だと?
もしかして、よくあるチート系の力をくれるんだろうか。
今のスキルは強い方ではあるが、個人の身体能力が高すぎるこの世界だと無双はできない。
「正直、経験の伴わない力は危険なんだけど、『あれ』が思ったより早まりそうだからね」
『あれ』とはなんなのだろうか。
「あれってなんなんだ?」
「いずれわかるさ」
そう言うと、奴は近づいてきて俺の肩をポンと叩き、続いてトレディアの肩をポンと叩いた。
最後に莞爾の肩をポンと叩くと、少し距離を取り直して再度俺らと向き合った。
「豊くんは兵士を1万まで、トレディアくんは3万まで出せるようになった。豊くんは兵士以外にも兵器を出せるようになったし、トレディアくんも出せるアンデットの種類が増えたはずだよ」
1万だと!?
俺が元々出せるのは1000人だ。
10倍強化が入ったのか。
しかも兵器まで出せるようになると言っていた。
俺はその場で『T-34』をイメージする。
するとその場に『T-34』がイメージ通りでてきた。
おそらく神の言った力は本物だろう。
兵器も出せるようになった。
兵器は銃とは比べ物にならないほど強い。
「ちなみに莞爾くんにはある知識を与えたよ」
ある知識。
この世界のことだから魔術に関することとか、剣技に関することとかなのだろうか。
「ズバリ!蒸気機関車だ!」
俺らは困惑した。
「ぜひこの世界に産業革命をもたらしてくれ!」
そういうと、奴は上へと去っていった。
俺らが困惑していると、莞爾が口を開いた。
「あの、蒸気機関車を作ってみたいです」
「その、蒸気機関車ってなんなんですか?」
ロースターは莞爾に質問する。
そうか、この世界には蒸気機関車はないもんな。
「そうだね。蒸気で動く馬車みたいなものだよ。ただ、馬車よりももっと早くて力持ちで、何やりかっこいいんだ」
するとロースターは目を輝かせながら莞爾に話しかける。
「ぜひその蒸気機関車っていうものを作ってください!工房や材料はこちらで準備しますので!」
こうして、俺らの蒸気機関車制作が始まった。
まず、動かすための土地だが、それはロースターが適当な平原をくれた。
次に材料は莞爾の物質生成魔術で鉄をつくり、それを使った。
この世界の鉄を加工する技術はまだ未熟なので、予め加工された部品の状態で莞爾が作る。
莞爾が作った部品は接着魔術で接着される。
莞爾が設計図を書き、その通りに部品を作る。
それを俺やトレディアが出した兵士やアンデットに運ばせ組み立てる。
それを接着魔術が使えるロースターが設計図をみながら接着する。
これが蒸気機関車本体の制作ラインだ。
あとは線路と燃料だ。
トレディアと俺は砂利を作るために石切場で石を切り出す作業。
切り出したものは馬車に乗せて兵士やアンデット達に運んでもらう。
アレスは木を切り枕木と燃料の調達。
と、役割分担した。
その日から俺らは部活も休んで一日中作業した。
運良く春休み中だったので部活さえ休めば時間はたくさんあった。
そんな感じで2週間が過ぎ、蒸気機関車もいよいよ出来上がってきた。
ロースターとアレスはその大きさにびっくりしている。
これが本当に動くのか、と言った感じだ。
その日から、宮廷魔術師魔術部門長のラニーミードさんも協力してくれた。
彼女は莞爾に物質生成魔術を教えてもらったらしく、莞爾が蒸気機関車を作っている間、線路の方を作ってもらった。
こうしてさらに一週間が過ぎ、春休みもそろそろ終わる頃、ついに蒸気機関車が完成した。
期間にして三週間程度だろうか。
見た目は『D51』のような感じだ。
まぁ、前世は鉄オタではなかったので詳しくはわからないが....
そんなに早くできたのはこの世界の魔術を駆使して、総兵力4万による人海戦術結果だな。
こうして、俺らは早速機関室に乗り込む。
正直かなり雑な部分はあるが、一応問題ないはずだ。
もし不具合があっても莞爾が魔術で止めるらしい。
俺らは早速火室に薪を入れて火をつける。
この世界には石炭があるかわからないので代わりに薪だ。
役割は莞爾が機関士俺が機関助士だ。
しばらくすると、煙突から煙が上がる。
そして圧力計が規定値に達した時、莞爾が汽笛を鳴らした。
その音は勇ましくもあり、美しくもある。
そして、莞爾はブレーキレバーを緩めブレーキを解除する。
次に加減弁ハンドルを回す。
すると、音を立てながらだんだんと蒸気機関車が前に進む。
感動だ。
こうしてだんだんと速度を上げていく蒸気機関車にみんな大興奮だ。
蒸気機関車をみたこともなかったロースターとアレスは特にだ。
ちなみにもちろん俺ももめちゃくちゃ興奮している。
当たり前だろう。
男の子はこういうのに弱いんだから。
こうしてしばらくすると、終点のマークが見えてきた。
莞爾はブレーキをかける。
普通ならここで問題が起こりそうなところだが、そんなこともなく普通に停車した。
「次!私が運転してみたいです!」
ロースターが珍しく子供のようにはしゃぎながらそう言った。
「わかりました。いいですよ」
そう言って莞爾が運転席にロースターを座らせる。
ただ、この時に気づいたことがある。
転車台がない。
基本的に蒸気機関車は前にしか進めない。
すると莞爾が車外に降りる。
「超局所的重力操作」
すると、蒸気機関車が持ち上がり、向きを反転させた。
なんとも力技たが、まぁ、この世界ならではの転車台だと思えばね.....
こうして俺らはこの日、蒸気機関車を心ゆくまで満喫した。
あたりも暗くなり、運転するには危険なので、俺らは寮に戻った。
その日の夕飯はパスタ。
ロースターも一緒だ。
「まさか、あんなに大きなものがあんなにも速く動くとは思いませんでした」
「私、あれに勝てるよう頑張るわ!」
ロースターは寮に戻ってもなお感動していた。
アレスはなんか感動の方向が違う気がするが....
その時、俺はふと思った。
もしかして、蒸気機関車を使えば金儲けができるんじゃないだろうか。




