遊びに行く
ゴブリンクエストから二週間。
そろそろ夏休みも折り返し地点だ。
結局あの後、どこかに遊びに行くこともなく、寮で生活している。
ぐだぐだしたいところだが、戦闘狂のトレディアとアレスは日夜鍛錬しているため、俺も付き合わされてる。
夏休みなんだから、昼くらいまで寝てぐだぐだしてたい。
普段の学校生活の方楽だな....
あとはロースターに手紙を送った。
内容はいつ頃なら遊びに行けそうですか?だ。
返答はいつでもいい、だったので今日遊びに行くことにした。
前回いきなり押しかけてしまったので今回はちゃんと手紙を出しておいた。
「それじゃあ!早く行くわよ!」
俺らは寮を出た。
久しぶりだな。
王城に行くのは。
最後に行ったのが、生徒会役員選挙の前だから半年くらい前だろうか。
あの時は雪が積もっていて庭の花が見れなかったが、この時期なら見れるだろう。
しばらく歩くと、少し豪華な家が増えてきた。
官僚とかの家だろう。
俺らの寮の3倍くらいはある。
進んでいくうちにどんどん家が大きくなっていく。
しかも庭もセットで大きい。
いかにも中世の豪邸って感じだ。
家によっては彫刻があったり、銅像があったり噴水があったりさまざまだ。
いいなぁ、将来はああいう家に住みたい。
これから転職して商人にでもなろうかな。
そしてついにこの国で1番大きな建物が見えた。
縦横高さその全部をくらべてもこの国で1番でかい。
王城だ。
俺らは門番らしき人に話しかける。
「すみません。王城に入りたいんですけど」
そう言って俺は前に渡された王城に入るための許可証、いわば生涯パスポートを見せる。
「国王陛下よりお聞きしています。どうぞこちらへ」
そういうとすんなり通してくれた。
前回は結構待たされたのに、今回はほんとにすぐだった。
こうして俺らは中に入る。
「お待ちしておりました。震電の皆様方」
お出迎えしてくれたのはセバスチャンさんだった。
「ロースター陛下は現在謁見中でして、少しお待ちしていただいてもよろしいでしょうか」
「ええ、大丈夫です」
ロースターは仕事中か。
にしても誰と謁見してるのだろうか。
多分この国の貴族とか、商会の会長とかそこら辺なんだろうけど。
そういって俺らは客間に向かった。
その途中には数々の美術品があった。
絵画に彫刻に壺。
芸術に詳しくないが間違いなく高そうだ。
「絵画に興味があるのですか?」
セバスチャンさんがそう聞いてきた。
「いえ、芸術には疎くて、ただなんとかく高そうだと思ってしまって」
「そちらの絵画は金貨1000枚の価値があると言われています。」
金貨一枚が前世の100000円くらいだ。
つまり....一億円?!
こないだのゴブリン退治でもらった金貨は3枚。
ゴブリン100体で金貨一枚だとするとゴブリン十万匹分。
一生かかっても稼げる気がしない。
絶対にこの城にあるものは触らないようにしよう。
もし傷つけた一生借金生活だ。
そんな感じで、俺らが客間に行こうとした時、思わぬ人に出会した。
「あれ?豊に他のみんなじゃないか」
ドニエルだ。
隣には多分ドニエルの父親らしき人もいる。
「どうして君たちがここにいるんだい?」
そういや前にロースターに呼ばれたとかって言って浮かれてたな。
よりによって今日だったとは。
どう言い訳しようか。
「しかも、隣にいるのは執事長のセバスさんじゃないか」
ほんとにどう言い訳しようか。
「彼らは武技大会で優勝されたので、ロースター陛下が祝福した後のことでお呼びいたしました」
「なるほど、そうだったんですね」
セバスチャンさんナイス!
さすがはこの国の執事のトップ。
頭の回転が段違いだ。
「でも、武技大会で優勝したのって去年ですよね?」
しまった。
そういや武技大会は去年の出来事だ。
一年前のことを今更祝福なんて言ったら怪しまれるか。
「こちらとしても少し準備に時間がかかりまして、それにロースター陛下はお忙しいので」
「なるほど。確かにそうですよね。失礼しました」
セバスチャンさんまたまたナイス!
ほんとにさすがとしか言いようがない。
「あなた方がドニエルの言っていた震電の方ですよね」
いきなりドニエルの父親らしき人が話しかけてきた。
「私はマスタグ侯爵家の当主マスタグ・シェナンドーといいます」
やはりドニエルの父親だったらしい。
彼は前に見た小太りな公爵と違い、がっしりとした体つきに髭を生やし、剣を差している、いかにも武人って感じの人だ。
「いつもドニエルがお世話になっております。これからもドニエルのことをよろしくお願いします」
言われたのは挨拶だった。
てっきり「息子に近づくな」とかって言われるのかと思った。
「いえ、こちらもドニエルさんには助けてもらってますので、これからも友達です」
「そう言ってくれるとありがたいです」
そういうと、シェナンドーさんは少し微笑み、一礼をしてドニエルを連れて去っていった。
なんというか、かっこいい人だった。
貴族というと悪いイメージしかなかったが、ああいう人もいるのだとわかった。
俺もああいうイケオジになりたい。
「ロースター陛下の謁見も終わったようですのでご案内いたします」
そう言ってセバスチャンさんは謁見室に案内してくれた。
「ロースター陛下、震電の皆様がいらっしゃいました」
「入ってきてください」
聞き慣れた声、ロースターな声だった。
ただ、普段とは違い、キリッとしてるというか、真剣な感じだ。
そうして扉の前にいた2人の門番が扉を開けたくれた。
中には豪華絢爛な椅子や彫刻があり、天井にはシャンデリア。
その部屋はまさに王という感じだった。
ただ、その椅子にロースターはいなかった。
「お久しぶりです。みなさん」
そういうと、ロースターはテクテクと走りながらこっちに近づいてきて、俺を抱きしめた。
俺もなんとなくだがロースターを抱きしめる。
「熱々だね〜」
トレディアがからかってくる。
最近気づいたが、トレディアは恋愛話になると人格が変わる。
「えへへ、豊さんの匂い」
こっちもこっちでちょっとやばい気がするが....
「みなさんお昼まだですよね?用意しているんで食べましょ!」
ということで、俺らは昼食をとった。
ものすごく豪華だった。
「皆さんは夏休み楽しめてますか?」
「もちろんよ!ゴブリンを百匹くらい倒したわ!」
アレスはこの過酷な鍛錬がほとんどの夏休みを楽しんでいるのか。
「なんかみんなでどっかいきたいな」
俺はふとそう思った。
俺ら4人ならいいが、ロースターは忙しいから無理なんだろうけど、このメンバーで旅行とか行ってみたい。
「いいわね!それ!」
「是非いきましょう!」
ロースターも乗り気だった。
「仕事はいいのか?」
「予め済ませておきます」
「じゃあどこに行こうか?」
「やっぱ海でしょ〜」
トレディアがニヤニヤしながらこっちをみる。
「確かにいいですね!えへへ豊さんの水着姿が....」
そういうのって普通逆じゃない?
俺が興奮するもんじゃない?
「じゃあ来週にいきませんか?」
「海って、どこの海に行くの?」
「それなんですが、丁度海が近くにある貴族の領地に行くことになってるので一緒に来ませんか?」
「いいわね!」
ということで、俺らは来週海に行くことになった。
飯も食べ終わり、俺らは庭に出た。
そこには色とりどりの花が咲いており、まさに楽園のようだった。
あとは、適当に見て周り、お暇することにした。
長居は迷惑だろうしね。




