食堂
案内された店に着いた。
市場からさほど遠くない場所にある、いかにも異世界の食堂って感じの店だった。
名前は『ラチルア食堂』
早速店に入った。
見た目は他の店と大差ない。
だが、食欲をそそるいい匂いがこの店全体を包んでいる。
俺らは席についた。
「少々お待ちください」
シレジアはそういうと厨房の方に行った。
俺はメニュー見る。
パンにスープこれはどこにでもあるな。
あとは、パスタなんかもあった。
そういや、この世界に来てからパスタはあまり食べていない。
せっかくだし、パスタを食べることにしよう。
「豊さんは何にします?」
「俺はこのミネスクのパスタにしようと思う」
「いいですね。じゃあ私もそれで」
ミネスクというのがなんなのかはわからないが、まぁ、食堂にある料理ならまずいわけはないだろう。
ロースターもいいですねって言ってたし。
「ご注文はお決まりですか?」
やってきたのはエプロンをきたシレジアだった。
「ミネスクのパスタを2つお願いするよ」
「かしこまりました。ミネスクのパスタはこの店で1番人気なんですよ!」
「どんな味なんだ?」
「マイルドなチーズと塩味がクセになる、食べたら虜になる味です!」
塩味か。
いやまぁ、ラーメンじゃないから醤油とか味噌はないんだが。
にしてもここの食堂はかなり賑わっている。
今は満席の状態だ。
相当愛されているのだろう。
「貴方が私の娘を助けてくださった方ですか?」
そう言って現れたのは筋骨隆々の40歳くらいの人だった。
「私、シレジアの父のグラードと申します。」
なるほどこの人はシレジアの父親か。
「本当にありがとうございます」
「いえいえ、私達はただ通りかかっただけです」
「お名前をお聞きしても?」
「私は豊と言います。ええと、こっちは....」
どうしようか、今の姿的にロールというべきか...?
「マズル・ロースターです」
言ったなこいつ。
それは言って大丈夫なのだろうか。
しかもフルネームで。
「ええと、え?」
ほら、グラードさんも困惑している。
「ええと、その....国王陛下でしょうか?」
グラードさんはなんかすごい表情でロースターを見つめる。
「はい。そのロースターです」
ロースターさん。
そういうのって、言っていいんですか?
「あの、そちらのお連れの豊さんは?」
あ、私はただの一般市民です。
貴族とかそういうのではないです。
「私の婚約者です!」
と、ロースターは誇らしげに言った。
ロースター、それは言っていいのか?
「その、改めて助けていただきありがとうございました」
グラードさんは困惑していた。
まぁ、当然だな。
俺も困惑している。
「すぐ料理をお持ち致します」
そういうとグラードさんとシレジアは厨房に行った。
「なぁ、ロースター。あれって言ってよかったのか?」
「あれくらいなら、問題ありません。貴族達に知られても噂程度で済みますし」
そうなのだろうか。
俺はそうは思えないけどな....
「明日の選挙頑張ってくださいね」
「ああ、もちろん当選してみせる」
と、意気込んでは見たが、どうだろうか。
なんとも言えない。
冒険者学校は全世界から人が集まってくる。
そのため生徒数は8000人を超える。
前世では考えられない規模の学校だ。
当然、生徒会長立候補者だけで三十人はいるという。
生徒会副会長と書記合わせると100人を超えるらしい。
そんな中から当選できるだろうか....
「お待たせしました。ミネスクのパスタお2つです」
美味しそうなチーズの匂いがする。
俺らは早速食べることにした。
口に入れて真っ先に来るのはチーズの味。
次に優しくあっさりした塩の味がする。
うまい!
前世のように麺をすすれないのが残念だ。
「美味しいですね。豊さん」
「ああ、そうだな」
俺は一瞬で平らげてしまった。
すると、シレジアがやってきた。
「おかわりいりますか?」
「ぜひお願いします」
おかわりすることにした。
久々にこんな美味しいものを食べた。
「豊さん、よく食べますね」
「ああ、こんな美味いもの久々に食べたからな」
そんな雑談をしているとおかわりが来た。
俺はそれを一瞬で平らげた。
久々にこんなにいっぱい食べた。
やばい。
今ロースターを狙う敵が来たら動ける気がしない。
おそらくは吐く。
それはそれで攻撃手段になるか?
「あ、お会計はいりませんので」
「いや、そんな悪いですよ。おかわりもしましたし」
「助けてくれたお礼だからいいんです。去年と今年の2回助けていただきましたから」
と、言われてしまったのでお言葉に甘えた。
「ご馳走様でした。また来ます」
「今度はみんなと来たいですね」
俺らは帰ることにした。
道中、またおスイーツ屋さんがあり、ロースターが買っていた。
俺は腹が破裂しそうなのでパスした。
にしてもロースター、そんなにスイーツが好きなんだな。
「また時間があったら、どっか行こう」
「はい!豊さんとならどこでも楽しみです!」
寮に着いた。
相変わらず腹は膨れているままだった。
アレスが夕食の準備をしている。
「おかえり、豊。緊張はほぐれた?」
「ああ、おかげさまで。これで明日はバッチリだ」
「それはよかったわ」
「ただいまー」
トレディアも帰ってきたらしい。
「あ、ロースターちゃん。いらっしゃい。隣には豊も....なるほどねぇー」
ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
トレディアって、こんなやつだったか?
その後は莞爾も下に降りてきたので飯を食った。
俺は普段の半分も食えなかったが....
「ラチルア食堂って言うんだけど、すごく美味しかった。だから今度はみんなで行こう。」
「いいわね」
「楽しみですね」
今度はみんなで行ってみるとしよう。
次はちゃんとお会計して。
食事も終わり、風呂に入り、布団に入った。
まぁ、いつもの如くそこにはロースターがいた。
「お前、いっつもいるな」
「いいじゃないですか、細かいことは。ささ、あっためておきましたよ」
とりあえず俺も布団に入った。
布団はとても温かかった。
ロースターの温もり....
この言い方はやめよう。
まるで犯罪者だ。
「どうです?豊さん。私の温もりは」
どうやらロースターと考えたいたことは一緒だったらしい。
なんか....複雑だ。
「ああ、とてもあったかいよ」
「じゃあもっとあったかくなるよう抱きしめてください」
そういうと、ロースターは俺に背を向けた。
俺は躊躇いながらもロースターを抱きしめる。
「あったかいよ」
「えへへ」
顔は見えなかったが、ロースターはおそらく笑顔だっただろう。
ロースターのその顔が俺は大好きだ。
「おやすみロースター」
「おやすみなさい。豊さん」




