リオット王女
進級してから一ヶ月が過ぎた。
この学校にはクラス替えがないので、あまり変化は感じなかったが....
そんな俺達は今、ビッグイベントを目の前にしている。
それは何か。
生徒会役員選挙だ。
現生徒会はコルア・アパッチとシャーム・クルセイアの2人を中心にして成り立っている。
例の二人は無事、牢屋行きとなった。
まぁ、貴族が本当に牢屋にいるかはわからないが....
そんな俺たちは今年、生徒会役員選挙に参加しようと思っている。
元々興味はなかったが、スターリンを倒すためにはこの学校内で有能な人材を見つけて勧誘するのがベストだと、ロースターに言われた。
そのためには、この学校で有名になるのがいい。
有名な人に勧誘されれば首を縦に振ってくれる確率が上がる。
そのための布石として立候補する。
安直ではあるが、現状それしかやれることがない。
というわけで、俺らは立候補することにした。
「なぁ、誰が何に立候補するんだ?俺は生徒会長か?書記か?」
俺らは四人、役員も四人。
となれば一人一役だろう。
俺はリオット王女に聞いてみた。
「俺らは何に立候補すればいいんですか?」
「よくぞ聞いてくれた。それはだね。4人で生徒会長に立候補してもいたいのだよ!」
なるほど4人生徒会長か。
?!
つまり3人は落ちろと?
「あの、それはどういう....」
「それはだね、生徒会そのものを廃止。新しい校内政治体制を君たちで作ってもらいたい」
「あの、全く理解できないのですが....」
「つまり、今の生徒会という制度は会長1人、副会長1人、書記2名だろ?」
「はい。そうですね」
「その制度を廃止して、4人みんながトップになればいい。正直、今まで生徒会をやってきて実績があるあの2人を打倒するためには、制度そのものを変えてしまうのが1番なのだよ!」
なるほど、つまりはあれか。
現生徒会2人は実績があるから選ばれやすい。
それに対してぽっと出の俺らはまともにやっても勝率が低いため、制度そのものを変える、ことによって注目を引き票を稼ぐ、ということらしい。
それはそれとして、一つ気になったことがある。
「あの、リオット王女。私たちの知っている口調ではないのですが....」
「ああ、やはり王女というのはああいう喋り方じゃなければならないからな。ただ、協力者である君たちにはもう必要ないだろう」
あー、なるほど。
普段はお淑やかに猫かぶってるのか。
「それに、ロースターとキャラが被ってるだろう」
確かに口調だけでいけばほとんど同じだ。
王女はみんなあんな喋り方なのかと思ったが、そうではないらしい。
「あの喋り方はロースターをまねたからな」
なるほど。
正直変わり過ぎて頭がついていけてないが、まぁ、慣れるしかないのだろう。
「他に作戦はあるんですか?」
「正直思いつかないな....」
前世での学校生活はどうだっただろうか。
朝、電車で登校して、友達と喋って朝を過ごす。
授業中はよく眠り、お昼はよく食べた。
よく寝てよく食べる。
まさに健康的だ。
午後の授業も寝て、部活動をやって、また電車に乗って、家へ帰る。
それだけだ。
この世界には電車は当然ないので電車賃学割という制度を作るというわけにはいかない。
いや、もしかしたらいけるかもしれない。
電車は無理でも城下町の飲食店や武器屋ならいけるかもしれない。
お礼として、こちらは野外演習と称してモンスターを狩り、その肉を飲食店へ渡す。
我ながらいいシステムかもしれない。
そしたら俺らの食卓にも肉が出る。
あとは....
そういや、この学校には部活動がない。
何か一つに打ち込み、同じ仲間達と目標を達成する。
教育的にもいいはずだ。
この学校は成人した人たくさんいるため、精神を育てる前世の義務教育的な学校というより、冒険者になるための知識や技能を身にをつける、いわば専門学校や大学といった感じだ。
となれば、部活動で冒険者に必要な精神性を育てる。
とかっていう理由をつけて、部活を作ることはできないだろうか。
俺はとりあえずこの2つをリオット王女に話してみた。
部活動のこと、学割のことだ。
「なるほど。いいかもしれないね!それも加えよう」
「わかりました」
「君の前世には面白いことを考える人がいたもんだね」
そんな感じで、話は進んだ。
まず、俺らは4人全員立候補する。
4人全員がこの学校のリーダーとしてだ。
生徒会制度をぶっ壊す!
この4人からなる組織、命名『評議委員』を創る。
それから城下町の人と連携した学割制度の推進。
そして部活の作成だ。
部活動の種類はとりあえず4つ。
『剣術流派研究部』『魔術研究部』『軍事戦略研究部』『魔剣術研究部』だ。
そしてついでだが、この学校の名称も変える。
今は冒険者学校だが、もう少しかっこいい名前がいいので『ライナット王国立魔剣術玲瓏学校』にする。
この学校には冒険者以外もかなりいるのも、改名の理由だ。
と、この5つの公約を掲げることにした。
俺は台本を書き、演説練習を開始した。
まず、最初は沈黙する。
観客を惹きつけるためだ。
次にゆっくり話始める。
だんだんと早くしていき、観客に熟考させる隙を与えない。
そして最後に、クライマックスだと伝えるためにも最大限熱く語る。
これが俺らの話し方に関する作戦だ。
俺らはこの作戦を持って、必ず当選する。




