武技大会 前編
前世には『小説家を目指そう』という、自分で書いた小説を投稿するサイトがあった。そこでは異世界転生というジャンルが人気でだった。
とくに悪役令嬢がなんやかんやしたり、最強の主人公が「俺、なんかやっちゃいました?」とか言って桁外れなことをしたり、ハズレスキルをもらったが、実は超あたりなスキルで、そこから無双したり、追放されたが実は有能でそこから無双したりするジャンルが人気だった。
そして俺も異世界転生に転生した。たが、俺は悪役令嬢でもなければ最強でもなく、スキルも悪い物ではなく、ましてや追放もされてない。
そんな、感じで転生した俺は今、負けた。生徒会長グラン・スカイホーク率いる生徒会メンバーに。
俺らは帰路に着く。
「もっと強くならなきゃだめね」
アレスは元気いっぱいにそう言った。
「そうだね。僕ももっと強くならないと」
「僕も、あの魔術についてもっと研究して、弱点を探さないとですね」
他の3人も明るかった。
そうだった。このパーティはそういう奴らだった。負けてもそれを気に病むことはなく、それをバネにしてさらに強くなる戦闘狂集団だった。
「じゃああと一ヶ月、死ぬ気で特訓するか」
「そうね」
俺の呼びかけにアレスは元気いっぱいにそう答えた。
ここから俺らの猛特訓が始まった。
学校が終わったらまずは全力疾走で寮まで帰る。そして準備を済ませたら莞爾は夜遅くまで魔術の研究。
他3人は筋トレをしたあと、模擬戦をした。時々遊びに来るロースターも巻き込んで模擬戦をした。
休日、俺ら3人は冒険者ギルドに行き魔物討伐の依頼を受けた。ただ、4級の俺らは対して強い魔物とは戦えなかったが.....
最初の週の敵はスライムだった。そいつはトレディアの火魔術で、容赦なく焼かれてた。俺らは暇だったので焼いてる傍ら筋トレをしていた。
次の週の敵はオークだった。俺らの依頼はスライム狩りだったが奥に入りすぎたせいかこいつが出てきた。こいつは3級の魔物だ。俺らは臨戦体勢をとる。
そしてそのまま、まずはアレスが奴の胸を斬る。その次にトレディアが腕を斬る。最後に俺がナイフをねじ込み勝った。
3週目の敵はスケルトンだった。こいつは骨なので銃弾が当たりずらい。どうするかと考えていると、トレディアが自分の拳に魔力を注ぐ、そしてそのまま思いっきり頭を砕いた。スケルトンは死んだ。
「あ、スキルが覚醒した」
突然だった。突然トレディアがそう言った。
「どんなスキルなの?」
アレスが目を輝かせながら聞いている。
「僕のスキルはアンデッド系の召喚みたいだ。スケルトン、リッチ、あとは、デュラハンなんかを召喚できるみたい」
アンデッドを召喚するスキル....どこかで聞いたことがある....なんだったかな....
ただまぁ、間違いなくスキルガチャは当たりだろう。これでまた一つこのパーティは強くなれた。
最後の週はアレス一人でモンスターを討伐しに行った。俺とトレディアはスキルを磨いていた。というのも、召喚系スキルは使えば使うほど召喚できる容量が増える。
今のところは俺もトレディアも35体前後が限界だった。
召喚系スキル。まさしく異世界転生した主人公が無双するのに相応しいと言える。俺は内心ワクワクしていた。
夕方になるとアレスと莞爾が帰ってきた。アレスは血みどろになっていたが....莞爾も研究の集大成といったところで魔術部門長協力の元色々試行錯誤していたらしい。
明日はついに武技大会。そこで俺らは作戦会議をする。作戦会議には、いつもの策士ロースターがいた。
「では、作戦会議を始めます」
「やっぱ問題は、生徒会長か....」
「そうですね。あれをどう突破するかです」
「それについては僕からいい案があります」
「どんなのだ?」
「僕のスキルを使います」
こいつ今スキルと言ったか!?
「え、スキル?」
「あれ、言ってませんでしたか?生徒会と戦った時に覚醒したと」
「聞いてないわよ」
「僕も初耳だ」
「そうでしたか。失礼しました。僕のスキルは『多重詠唱』です」
『多重詠唱』通常魔術は同時に別の系統のものは打てない。ただそれを可能にするのが『二重詠唱』『三重詠唱』そして『多重詠唱』だ。
『多重詠唱』は間違いなく最強格のスキルであり、生徒会長の上位互換だ。やはり、無双系の流れがきている。と俺は内心、はしゃいでいた。言ってみたい、「おれ、何かしちゃいました?」って。
「ただ一つ難点があって....」
「なんなの?」
アレスが質問する。
「あの魔術は僕以外に正面から破る方法がないんです」
すっかり忘れかけていたが武技大会は2人1組。莞爾がいないパーティで生徒会長に当たったら対策はないということだ。
「その時は、魔術を発動させる前に倒すしかないですね」
「そうだな」
なんともまぁ、単純だがそれしかない。そんな作戦会議もほどほどに俺らは明日に備えて寝た。
俺が布団に入ると部屋に誰かが入ってきた。
「あの....一緒に寝てもいいですか....」
「どうした?」
「寝れなくて....」
やはりまだ怖いのだろうか....それとも....いやいや、それはないか。相手は15歳。子供だ。
「ああ、いいよ」
こうして俺らは明日に向けて寝た。(しばらくしてロースターが抱きしめてきたため眠れなかったが....)
武技大会が開催された。パーティは俺とトレディア、莞爾とアレスにした。理由はなんとなくだ。
そして初戦。俺らの敵は魔術師と剣士だった。そこで俺らは秘密兵器を使う。
俺は敵の周りに『M134 ミニガン』を持たせた兵士を10人呼び出した。そしてそのまま
「撃て!」
相手はそれで死亡判定を喰らった。会場はざわついていた。見たことのないスキル。見たこともない攻撃。相手も呆気に取られていた。
俺らはその方法で準々決勝まで駒を進めた。
準々決勝、そこにいたのは大剣を持った大男と、魔術師のコンビだった。
試合開始の合図が響く。俺は今までと同じようにミニガンを乱射させる。が、それは魔術師が作った土のドームによって防がれてしまった。
「あんたの、スキルの対策法はやっぱこれか」
ドームの中から魔術師がそう言った。
トレディアは剣にありったけの魔力を込める。そして大きく素振りをして、魔力を空気中に放つ。それは、飛ぶ斬撃「飛翔斬」だ。
それでドームは真っ二つになった。
そのまま俺もトレディアも相手めがけて突っ込んだ。
そしてそのまま始まるのは白兵戦。俺は魔術師と、トレディアは剣士とやり合った。俺は左右に2人の兵士を呼び出し、援護射撃をしてもらう。
トレディアは白兵戦の最中、デュラハンを2体召喚したデュラハンは頭のない騎士。こいつは3体程度しか呼び出せないが戦闘能力はかなり高い。そのまま数で押す気だ。
「互いに召喚系のスキル....厄介だな」
魔術師が嘆く。
「でもまぁ、面白いんじゃねぇの」
剣士はそう返した。
ただどこまで行っても片方は魔術師、白兵戦に勝ち目はなかった。俺は敵魔術師にナイフで深い一撃を喰らわせた。相手は死亡判定を喰らった。
トレディアは勝負に出る。敵は大剣。敵が大きく振りかぶった時に魔術を放つ。
「反重力」
次の瞬間、彼は振り下ろすタイミングが遅れた。その隙にトレディアは全力で奴の目の前に近づき奴の剣の根本でその一撃を受けた。
そしてそのまま
「氷連弾」
その氷の弾丸は敵剣士を貫いた。死亡判定が出る。俺らの勝ちだ。
莞爾とアレスも勝っていた。
そして俺らは準決勝に駒を進める。
対戦相手は莞爾、アレスチームはコルア・アパッチとシャームクルセイア。俺とトレディアはベル・エアラコブラと生徒会長グラン・スカイホークだった。
そう、莞爾とスカイホークが当たらなかった。つまり、俺らは急いで生徒会長を倒さなきゃいけなくなった。時間との勝負だ。




