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軍事愛好家の転生記  作者: エアアンテーク
生徒会革命
24/64

いじめ

目が覚めた。朝日が眩しい。昨日は色々なことがあった。何というかまだ、気疲れが取れない。


 俺は朝起きて朝食の準備をする。アレスと俺が朝食係だ。


 そうして下に降りると、何やら手紙が置いてあった。差出人は神とだけ書かれていた。あいつか。俺はみんなを起こして手紙を開ける。


 言い忘れてたけど、莞爾君、君は魔術の研究をしてみるといいよ。そしたら君はさらに強くなれる。ちなみにこの手紙に莞爾君が触れると魔術や科学の知識が頭に入るからぜひ触ってね。


 とだけ書かれていた。知識が入るというのはどういうことなのだろうか。


 半信半疑で莞爾が触れてみる。が、何かが起こった様には見えなかった。


「すごい!すごいですよ!これ!」


 いきなり莞爾がはしゃぎだす。


「なるほど魔術の仕組みはこうなっていたのか!」

「どうした?急に」

「魔術の仕組みがわかったんですよ!魔術は神秘的な非科学的なものじゃなくて、ちゃんとした科学の様なものだったんです!」

「つまりはどういうことよ?」


 アレスが質問する。


「つまり、なんていうか....魔力とはエネルギーなんです。それを使って空気中の原子を変化させることで水や岩を作り出すんです。あとのことは何と説明したらいいか...」


 前世で科学は大嫌いだったから頭がパンクしてしまいそうだ。ただ何となくだが核融合とかに近いのだろうか...?


「少し、魔術の研究をしてみようと思います!」 

「それがいいわね」

「僕も莞爾くんの成果を楽しみにしてるよ」


 そんな感じでドタバタの朝だったが急いだ朝食を食べ、学校に向かう。朝食はまたパンだった。ああ、米が食いたい.....


 教室に着くと何やらクラスがザワザワしていた。群衆をかき分けながら進むとそこには落書きがされで穴だらけされた机に罵詈雑言が書かれ、ボロボロになった教科書が上がっていた。この学校の机は長机の様なもので二人一組でつかう。そのうち片方だけがこうなっていることを見るに、犯人はその机に座っている人に恨みがあるのだろう。


「なぁ、どうしたんだ?」

 

 俺はドニエルに聞いてみる。


「僕にもわからないな。たしか、この机はロールちゃんの場所だよね。彼女は別に性悪女ってわけじゃないしな。むしろ心優しい方だよな」


「何なんだろうな....」


 しばらくして、ロースターが教室にくる。ロースターはただ、自分の机を見ていた。何というか、複雑な表情で。



「大丈夫か?」

「はい、机は変えてもらえるでしょうし、教科書なら買い換えればいい話ですから」


 心配してきいてみたが、かえってきたのは落ち着いた声だった。


「本当か?」

「はい。大丈夫ですよ」


 そういうとロースターは教室を去った。俺は急いで追いかける。人目がつかない廊下に出たところで、ロースターが振り返る。


「大丈夫ですよ。買い換えればいいだけの話ですから」


 そういうロースターに元気はなかった。

「そうじゃない。心の問題だ。お前だってあそこまでされたら腹が立つだろ?」


 ロースターは少し黙った後、話し始めた。

「私は王都事変以降、この国の王になりましたが、それをよく思わない人もいるんです。マズル家の人間が全ていなくなれば次は自分達が王になれるからです。そういう人たちは私に嫌がらせや、時には暗殺者なんかを送り込むこともありました。なので、それに比べたら何ともないですよ」


 15歳の少女が無理をして元気そうに振る舞う。嫌な声だった。


「大丈夫なわけないだろ」

「大丈夫ですよ」

「15歳の少女がそんな顔して、そんな声で.....そんな大丈夫は大丈夫じゃねぇよ。」

「私は大人ですよ?しかもこの国の王です」

 元気そうに振る舞う、その声は嫌な声だ。聞きたくない。


「でも、お前は人間だ。どんな立場で、どんな境遇だろうと人間だろ?王だとかそんなのは関係ねぇよ。俺からみりゃ、ただの15歳のガキだ」


 そういうと、ロースターは何かが吹っ切れたかの様に泣いた。


 おれは優しくロースターを抱きしめる。そしてただ、黙って胸を貸した。


 つい言葉が汚くなってしまった。だが、あまりに理不尽だろう。15歳の少女が家族を殺されて、命を狙われて、いじめられて、嫌がらせをされる。あまりに理不尽だ。


 ロースターが泣きながら必死に話す。


「私、命を狙われてから毎日怖くて、死ぬんじゃないかって、私なんかいなくなった方がみんないいんじゃないかって。だから逃げる様にこの学校に来るんです。ここなら、誰もこの国の王だとはわからないし、気にしないから。でも、ここでも嫌がらせをされて。私はもう居場所がないんじゃないかって....」


 昼は王城での冷遇、夜は暗殺者に震える日々。唯一の逃げ場だった学校でも嫌がらせを受ける。それはおそらく想像を絶するものなのだろう。


 しばらくしてロースターが泣き止んだ。泣いたあとの顔は今までの取り繕った笑顔など微塵も感じない。だが、どこかスッキリしたような顔。人間味があり、俺はその顔の方が好きだった。


「よし!ロースター!とりあえずあの嫌がらせをしてきた生徒を見つけるぞ!そしてその後、その暗殺者を送り込んだやつに仕返し返ししてやろう!」

「え?」

「当たり前だろ!仕返ししたくないのか?」

「したいですけど....私はこの国のトップですので....」

「んなもん関係ない!お前は1人の人間だ!」


 ロースターは黙った。しばらくして口を開く。


「やります!一矢報いてやりたいです!」

「ああ、その意気だ。それとな、お前、前に俺らのことを家族みたいって言ってくれただろ。あれ、すごく嬉しかったんだよ。前世では独り身だったからさ。俺には、国を動かす力も、軍隊を動かす力も持ち合わせてないが、大切な家族を守る力くらいはあるからよ。」


 すると、ロースターはもう一度泣いた。ただ今度は何というか嬉しそうにも思えた。


 俺の胸が完全に水没したとき、後ろから声がした。


「僕たちも協力するよ」

「私も手伝うわ」

「僕も手助けするよ」


 言わずもがな、トレディア、アレス、莞爾だ。


「みなさん....」


 こうして俺らの復讐劇が始まった。


 まずは学校でのいじめの犯人を突き詰める。と言っても方法は単純で、ただ張り込みをするだけ。あのいじめはおそらく放課後に行われたものだ。ということで俺らはただ張り込むだけ。ただ普通に教室にいてもバレるので隣のクラスから莞爾が空間認知魔術を使って俺らの教室を見張る。


「みなさん、ありがとうございます」

「気にしなくていいわよ」

「そうそう、僕らは家族なんだから」

「みなさん...」


こうしてしばらく張り込みをしていると、何やら怪しい人影が見えたと莞爾が言った。そいつは俺の机で何かをしているらしい。詳しい状況はわからないが、長時間、人の机に居座るのは少し不自然だ。


「移動しましたね」


 どうやら俺への嫌がらせは終わったらしい。


「次はトレディアくんの机にいますね。さっきと同じことをしてるみたいです」


 よし、これはおそらく確信犯だろう。ということで、俺らは隣の教室に乗り込む。



 せっかくだ、少しカッコつけていこう。


「何しとるんじゃぁぁわれぇぇぇ」


 教室にいた奴は驚いていた。机を見ると穴だらけになっている上に罵詈雑言が書かれ、ビリビリになった教科書があった。間違いない、こいつが犯人だ。


「誰だお前らは」


 奴は焦りながらも威圧的に聞く。


「あ?大阪○警や」


 俺は、有名なあのシーン(?)の様に返す。


「意味わかんねえ」

 

 まぁ、そりゃそうか。


「ブースト」


 すると奴は剣を抜いた。そいつの目は血走っていて、獣の様だった。


 するとロースターが前に出る。


「私に任せてください」

「へっ、仕返しのつもりか?」

「ええ、そうです」


 ロースターは笑いながらそう返す。


「テメェのそのヘラヘラした顔ごと叩き切ってやるよ」


 そういうと奴は横一文字の構えでロースターに突っ込んだ。ロースターは中段に剣を構える。勝機は一瞬だった。


 ロースターは奴の横一文字をしゃがんで躱わし、一瞬で立ち上がり、剣の平たい面で奴の顔面目掛けて思い切り打撃を入れた。見ただけでわかる。あれは痛いなんてもんじゃない。


 奴は文字起こしできないほどの断末魔をあげる。


「まだ、足りませんね」


 そういうとロースターは奴の腹に向かって風魔術を叩き込む。一連の攻撃は死にはしないがとてつもない苦痛だろう。


すると、ロースターは真顔で、

「次同じことをしたら、これじゃすみませんよ。」

と言った。

 

 少しして、ロースターが笑顔でこちらに来る。


「やりました!豊さん!」

「お、おう。そうだな」


 よし、ロースターを怒らせない様にしよう。絶対にそれがいい。うん、絶対に。


「どうしたんだい?」


 ふと後ろを振り返ると、生徒会長がいた。


「あれ、生徒会長どうしたんですか?」

「何かすごい音がしたと思ってきてみたら、これはどういうことだい....?」

「ああ、ええと、ですね....」


俺らは一連のことを生徒会長に話した。にしても、そんなに大きな音だっただろうか。


 生徒会長は全てを理解した。

「後のことはこちら側でやっておこう。疲れただろう。もう、寮に戻ってもらって構わないよ」


 そういうと、奴の髪を掴み、教室を去っていった。

「いやだ、やめてくれ、たのむ。なぁ、お前ら今までのことは謝るから、たのむ」


 奴は最後にそんな醜いセリフを言って教室を後にした。

「さぁ、俺らも帰ろうか」

「あの豊さん....」


 ロースターは顔を赤ながらこちらを見る。


「今日そちらに泊まってもいいですか?」


 やはりまだ怖いのだろうか。


「ああ、構わないよ」


 するとロースターはいい笑顔で喜んでくれた。


 家に帰って、飯を食って、風呂に入って、そろそろ寝ると言う時だった。問題があったのだ。それは、ベッドか4つしかないのだ。まぁ、そりゃ当然なんだが。


「俺は床で寝るよ。ロースターは俺のベッドを使ってくれ」

「いえ、そんな悪いです。そうだ!一緒に寝ましょう!」

「え、でも....」

「いいから寝ましょ!はやく!」


 そんな感じで俺とロースターは一緒の布団で寝た。





 リビングに灯りが付いていた。


「ねぇ、アレス、一緒に寝るってことはやっぱりロースターちゃんは.....」

「いいのよ、そっとしておきましょう。そういうのは2人の問題だもの」

「それもそうだね。ただ、豊は気づくかな....」

「おそらく気づくわよ。さすがに」


 そこには乙女2人の会話があった。




「なぁ、ロースター」

「なんですか?」

「次は、暗殺者を送り込んできた奴だな。」

「そうですね」

「目星はついているのか?」

「はい」

「そうか。まぁ、詳しいことは明日でいいか。おやすみ」

「おやすみなさい」


 そう言って、俺らは目を閉じた。ただ、少ししてからロースターがこちらにきて、俺を抱きしめた。


 正直に言おう。寝れない。と言うか寝れるわけない。俺とて(元)日本男児。こんな、ラブコメみたいな展開で寝れるほど鈍感でもない。それに、あのいじめっ子を倒した後のロースターはどこか大人びて見えた。


「ゆたかさぁん。だいすきぃ」


 ?! 寝言だ。気にしてはいけない。平常心、平常心。


 



 この時、お互いに起きていたことは誰も知る由もなかった。

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