#04 激動と鼓動に揺れる
パジャマを着た子供たち。カラフルだ。そして、元気だ。パジャマを着ていなかったら、ここが病院だと思わないくらいだ。はしゃいでいる。こっちを、潤った瞳で見ていた。ひとりの少女が来る。綺麗に三つ編みに、された髪型をして。私の手は、ぎゅっと握られた。
子供たちからは、いい香りがした。特に、三つ編みの少女。柔軟剤か。自分でも、やや驚いた。柔軟剤という、漢字が脳に馴染んでる。蝉人間というものは、そういうものか。ほとんどのものが、馴染んでいる。まだ、慣れない。鼻でも、脳でも。感覚でも、覚えている。でも、気持ちが追い付かない。
子供たちから、何か貰った。グミだ。すぐに、口の中に放った。少し冷たい。柔らかいタイプだ。柔らかくて、酸っぱい味がした。楽しくて、幸せだった。まだ、生まれたばかり。感覚的には、まだたっぷり時間がある。気持ちも、蝉人間に近づいていると、ようやく実感した。
「遊ぼうよ」
「うん、いいよ」
「おねえちゃん、蝉人間って本当?」
「そうだよ。本当だよ」
「お姉ちゃんは、恋してる?」
「まだだよ。まだ、生まれて間もないからね」
「そっか。生まれたばかりでも、こんなに大きいんだね」
「そうなんだ。私の方が、遅く生まれているからね」
「へぇー」
「恋は、これからしていくよ。でも、出会いがね」
子供たちの目が輝いている。希望を持っているからか。今を楽しんでいるからか。床の模様が、カラフルだ。全然、落ち着かせてくれない。三人の子供の方に、歩いてきた。しりとりをしているみたいだ。楽しそうだ。笑顔があふれた。
少女が手を握ってきた。ずっとずっと、離さないといった感じに。強く強く。両手で掴まる、みたいにしてきた。体の大きさにしては、力強い。でも、手はぷにぷにしていた。とても、柔らかかった。これからの私の人生の、活力になった。
また遊ぼうね。そう、言ってくれた。少女の声は、震えていない。まったく震えていない。キレイにまっすぐに、鼓膜に届いた。高い声できゃっきゃ、笑っていた。少女は、前向きに人生を進んでいる。私も、悔いのない人生を行く。その決意が生まれた。恋に向かって、前進だ。