↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/35

#35 激動の先の先では

 娘の20年後は、想像したものよりキレイだった。私に似ている気もする。美しすぎて、複雑だ。きっと、貰える愛は強い。でも、憎しみも強くなるだろう。今も、男子たちはチラチラ見ている。街には娘以外にも、興味をそそるものが、たくさんあるというのに。


 私と彼の、良いとこ取りだ。彼の柔らかさと、私のくっきりさが、合わさったのが娘だ。アイドル並に美しい。だから、大変だ。モテ香水まで、つけてしまっている。ほんのり香るやつだ。鼻に、申し訳程度に入るやつだ。娘を、20歳まで見てきたが、私も惚れてしまった。


 娘は、よくナンパされている。だからとりあえず、ついていっている。また、男性が声をかけてきた。娘は、軽くあしらっていた。相手にしていない。でも、心配が溢れる。唇を噛みすぎて、血みたいな味がする。幽霊なのに。今が一番、人間的だ。味覚が、研ぎ澄まされている感覚だ。自宅に戻ってきた。娘はすぐ、自分の部屋に上がる。


「お母さん?」

「今日ね。お母さんと同じような人生の人と、話してきたの」

「それでね。私もパパと一緒に、活動に参加しようと思ってる」

「蝉人間さんの支援の団体ね」

「お母さんとの記憶は、全然ないんだ。だから、余計に知りたくなっちゃって」

「それでこうなったの」

「お父さんのような人は、救われた」

「おばあちゃんや、たくさんの人たちの運動のおかげで」

「準人間は、廃止された」

「だから、次は蝉人間が生きやすい場所にしたいの」

「いいかな?」

「いいよね!」


 私は動いていない。私から正面に、入った訳じゃない。なのに、娘は喋り始める前に、こちらを向いていた。私のことが見えているのだろうか。そんなわけはない。娘のことを、まじまじと見る。本当に、美しかった。幼さ残る、くっきりとした顔立ち。抱きしめられないから。視線で、抱きしめた。


 20歳になったから、私が見えるようになった。そんな可能性はある。まだ、捨てていない。どこかで、娘と繋がる望みは。娘と、目線が合った。鳥肌がたった。幽霊になって、初めての触感。そんな感覚だった。ふと、後ろを見た。そこには、私の写真があった。私がドジなだけだった。写真と私の目の位置は、ピタリと重なっていた。


 愛してるよ。そう、娘に言った。心から、そう思っているから。でも、届くはずがない。姿が見えなければ、声も聞こえないのだから。不意に娘が、微笑んだ。そして、言葉を放った。私もだよ。そう聞こえた。確かに、娘の口からだった。娘の顔に、驚いた様子はない。しっかりと安定した声で、聞こえてきた。娘が、大声でお父さんを呼ぶ。私は、涙を手で拭い、娘の姿見で、襟を直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。