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#11 激動と愛と夢

 彼はカッコいい。そう思った。世間は、頼りなさそう。そう思うような、見た目なのだが。想像ができた。ふたりで歩んでいる、未来の想像が。これから、ふたりでいろんなことをしている想像が。気持ちのいい空だ。気持ちのいい風が、吹いている。


 潮の香りがする。海まで来ていた。海に誘われた感じだ。彼は微笑んでいた。鼻は、潮風の香りの中から、彼の香りを探す。しかし、全てさらわれてゆく。それでいい。それも、海辺らしいから。息を大きく吸い込んで、ゆっくり吐いた。少し心が、軽くなった気がした。


 口を、忙しなく動かしていた。声は発さずに。それは、すべて告白の練習のためだ。ドキドキしている。でも自信は、それなりにある。口を尖らせながら、息を吸ったり吐いたりした。甘みが、口の中に集まってきた。そんな気がした。


「こんなに近くに、海があるんですね」

「いいですね、夕日」

「はい、キレイです」

「はい、キレイですね」

「あの。話があるんですけど」

「はい」

「私と、一緒になりませんか? 一緒に人生を、歩いてくれませんか?」

「それは、プロポーズですか?」

「はい」

「あっ、あっ、わっ、分かりました。よろしくお願いします」

「ありがとうございます」

「僕は、頼らないと生きていけません」

「はい」

「そんな世界まで、来てしまいました」

「はい」

「そんな気持ちでもいいのなら。よろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」


 夕日色のあなたがいた。夕日色の涙を、流していた。ここに存在するものは、すべて夕日色になっていた。心もそうだろう。心もあたたかくて、やさしくなっている。彼の心も、この空のような、鮮やかなオレンジになっていることだろう。


 少し空白があった。プロポーズが成功してから、時間は止まっていた。そこに、私からハグをした。身体をふわっとぶつけて、色んな感情もぶつけた。彼の汗も一緒に抱いていた。彼の過去もすべて、抱き尽くしていた。


 鼻をすする彼。私は、ハグをやめた。そして、鞄の中をカサカサと音をたてて探した。生まれた直後に、もう持たされていた鞄。なかなかティッシュは、見つからない。その代わりに、手紙らしきものが見つかった。その直後、海全体に、何かが割れるような大きな音がした。雷だった。ビカビカに光っていた。

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