第3話 青年よ大志を抱け3
旬「その悪かったから!アッパーしたのは謝るから!」
未だに実体化せずにノイズのようなぼやけた輪郭で泣いているメソメソマッスルイケメン男を宥める旬。
???「グスッ…最初のキックから謝らないんだね…。 もういいよ、君は僕の住んでる空間に何しに来たのかな?不法侵入かな?」
旬「なんかやけにサムネがしょぼい動画をつけたらここに投げ出されたんだよ!絶対にお前のせいだよなあ!?これ以上ふざけるなら…」
拳を振り上げたまま、スタスタと歩いてくる旬にノイズはプルプルと震えながらまた喋り出す。
???「おお。そうだったそうだった。Congratulations!!君は僕の投稿した動画の最初の視聴者だよ!ありがとう!これで僕もビッグなGo tuberに…!!」
ドンドンパフパフと効果音が白い空間から鳴り響き、クラッカーの音まで鳴り響く。よっぽど嬉しいのか、くす玉まで出現し始めた所で旬は耳を抑えながら口を開く。
旬「いやいやまだどういう動画なのか見る前にこの空間に吸い込まれたんだよ!お前は一体なんだよ。この白い空間はどこなんだ。」
???「君は期待通りのリアクションをしてくれるね。というか僕のチャンネル名を見なかったのかい。“初代“神さまだよ!!!」
旬「初代神さま?お前がこの世界の神様だというのか?それに神様ならイリストとかウッラーとかいるだろ。ニホンにだって八百万の神様がいるんじゃないのか?」
???「ごめんごめん。説明不足だったね。僕はこの世界の神様ではない。君たちが思い描くところの“異世界“の神様なのさ。」
旬「ならなんで、“初代“なんて名前をつけたんだ?それに“異世界“の神がこの地球に何しにきたんだよ。なんかお前胡散臭いな、さてはテメー邪神だな?」
???「いやいや邪神ではないよ。ちょっと悪い神様なのは認めるけどね。そうだな、僕の名前は悪神様でいいよ。邪神よりはいいかな。でも後の質問には答えられないな。
君だって出会って初対面の人間にペラペラと自分のことを喋らないだろ?」
旬「言いづらいから邪s…」
悪神様「言わせないよ?」
ノイズが指のようなものを振ると旬の口はピタッと止まり、邪神と口に出そうとしても勝手に止まってしまう。
旬は目を見開き、口をパクパクして抵抗しようとしたが
無駄とわかると抵抗するのをやめた。
悪神様「これは君が僕のことが見えてないとかからないとようにした“魔法“なんだけどねやはり君は僕のことが“視えてる“ってことか。気配とかで判断してるってことでなく。」
旬「なんで俺はお前のことが見えるんだ?」
悪神様「それはこっちのセリフかな。 何か君には得体の知れないものを感じるよ。ちょっとこっちにきてくれないかな?」
旬はスタスタとノイズの方に歩いていくとノイズは形作られ、ムキムキマッチョイケメン男になった。
悪神様は無言で手を差し出してくる。
旬はそれに応えるように手を差し出すと自然に握手をするような形になった。そして悪神様は目を瞑るとふむふむと唸り始めた。
悪神様「なるほどね。君のことはよくわかったよ。君は統合失調症を患っているね?」
旬は一瞬ギクっとして嫌な汗をかいた。統合失調症は旬が2年前にいじめられた原因であった。
統合失調症には陽性症状と陰性症状があり、陽性症状は幻覚と妄想である。幻聴が聞こえるケースも多い。陰性症状は、意欲の低下と感情表現が少なくなるなどがある。
旬は高2の時に発症した統合失調症によって支離滅裂な言動をいうようになり、いじめられたというより避けられるようになっていったのだった。しかし親の勧めにより病院には毎月一回通い、投薬治療を行っている。そのおかげで症状は治まっているはずだった。
旬「なぜわかったんだ?」
悪神様「そりゃ神様だからね。この世界で妄想だと思われている、統合失調症の幻覚は僕の世界では魔眼と言われる立派な能力だよ。それに君はノイズのようなもので僕を見ているんじゃないかな? それは僕の世界で言うところの“魔力“を見ているのさ。」
統合失調症の幻覚が別の世界では立派な能力だと知って愕然とする旬。それに聞きたいことが山ほどできた。
旬「統合失調症って病気じゃないのか?」
悪神様「この世界では立派な病気だよ?この世界に存在しない魔力が見えるんだからさ」
悪神様のマジレスに旬は言葉も出ない。
それならばと他のことを聞く旬。
旬「魔法って地球にあるのか!?それに俺には魔法が使えるのか?」
悪神様「地球にはないし、使えない」
ガクッと崩れ落ちる旬。
旬「じゃあ意味ないじゃん!」
悪神様「異世界ならチート能力なんだけどね〜。君も異世界にくるかい?と言いたいところだけど連れて行くことはできないんだよね〜」
旬「その理由はなんなんだ?」
悪神様「言えないな〜」
旬「お前そればっかりじゃん!やっぱり怪しいな〜」
悪神様「まあまあそこはいいでしょ?そろそろ動画の内容についての話をしていこう。」
何か強引に話を変えられた気もするが、まあいいだろう。やっと本題に入るのだ。
悪神様「まずはここにりんごを1個出そうか。」
急に白い空間に現れた白い机と赤いリンゴ。そのりんごの前に2人が集まると椅子がニョキッと下から生えてきた。
旬「これはお前が作ってるのか?」
悪神様「そうだね。まあ君も同じようなことができるようになるかもね。」
旬「なんだって!?」
悪神様「おっとこの話はまた後で。さありんごを浮かせるよ?」
悪神様が手をかざすとりんごは光りながら宙に浮く。旬は首をかしげる。
旬「確かにすごいけどこれになんの意味があるんだ?」
悪神様「これを君も今からするのさ」 旬「は?」
りんごを再び空中から机の上に戻した悪神様はニヤリっと笑って言った。
白い歯が眩しい。旬は悪神様の笑顔を見て自分も自然に笑っていることに驚いていた。
ちょっと笑った顔をすぐに旬は険しい顔に戻して言った。
旬「どういうことなんだ?俺は神様じゃないから超能力なんて使えないぞ?」
悪神様「そうか。この世界では超能力という言い方をするんだな。そこは置いておこう。これはgiftの進呈式なんだよ。これからりんごを浮かせた視聴者にgiftを授ける。そうだね。1人1つという訳ではないよ。1つなこともあるし、元々持ってる能力が目覚めて2つや3つになることもある。それだけ人の才能には差があるんだよ。そこはわかってほしいな。」
旬「なるほどな。でもやっぱり不公平じゃないか? そのgiftってやつが人によって、めちゃくちゃ多くなりそうだ。」
悪神様「そうだね。それを補う救済措置も用意してある。それはスキルだ。」
旬「スキル?この世界にそんなものはあるのか?」
悪神様「ないよ?でも僕の世界には“ある“んだよ。それを君たちの世界にも導入してあげようと思ってね。」
旬「そのスキルも人によって数が違ったりしないのか?」
悪神様「スキルにはランクがあるんだけど一番下のランクであれば、複数個自由に選んでセットできるんだ。」
まるでゲームの話だなと旬は思った。ゲーム内と同じように色々なスキルが使えるのであれば、日常生活が楽しくなるかもなと思った。しかしこのgiftやスキルが悪用されれば元も子もないのではないかと思った旬はこう聞いてみる。
旬「何か他にはルールがないのか?giftやスキルが悪用されたらどうするんだ?」
長いので次話に続きます。
なかなか話が進まなくてごめんなさい。茶番を考えるのが楽しくて本編が進まない…
頑張ります。
小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。著者の励みになります\( 'ω')/