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伊集院遥の事件簿〜ブラック企業に入社したら|謎《ミステリー》が多すぎた件

伊集院遥の事件簿〜ブラック企業に入社したら|謎《ミステリー》が多すぎた件

作者: 直裕

 ブラック企業の朝は早い。前日が終電帰りだろうが、徹夜の作業後だろうが関係なく、始業開始時間9:00の15分前には自分のデスクに座っていることが暗黙の了解になっている。1分でも遅れると、朝礼で叩かれ、無意味な罰則が課される。しかも、会社の勤務体制は「フレックスタイム制」らしい。ブラック企業あるあるその①だ。


 私は伊集院(いじゅういん)(はるか)。大卒一年目22歳OLである。どんなに頑張ってもなかなか就職が決まらず、ついに卒業が目前になった3月、ハローワークの求人票にあった「即採用!アットホームな会社です(^_^)」という、このBreak(ブレイク) Future(フューチャー)株式会社に契約社員として採用された。Break(ブレイク) Future(フューチャー)株式会社は零細システム会社である。ウェブサイトの設計、ウェブを使ったシステムの構築などが主な業務だ。契約社員としての期間は一年、その一年の実績次第で正社員に昇格するらしい。ちなみに最初の半年は試用期間で、給与は7割の15万4000円。ちなみに、残業時間20時間分の残業手当が含まれた裁量労働制なので、残業手当はつかない。ブラック企業あるあるその②である。


 入社後、研修のようなものは一切なく、初日、社内を案内されて電話の取り方を説明された後は、パソコンの画面に並ぶアルファベットの羅列を見せられ、「この修正よろしく。仕様書こっちのファイルね」と言われたきり放置された。何をどうするのかわからず、呆然(ぼうぜん)とアルファベットの羅列を眺めていたら、1時間後戻ってきたリーダーに「何も知らないなら何も知らないと先に言えよ!てか、新卒とか雇ったの誰だよ」と切れられた。ブラック企業あるあるその③だ。


「おい、伊集院、朝礼後、ユーザーテストな。会議室にテスト機とテスト仕様書は準備してあるから。」

 (くだん)の山口リーダーが突然声をかけてきた。ユーザーテストとは、顧客にシステムを納品する前にそのシステムを使ったユーザーが行うであろう動作(例えば、発注システムなら個数を選んで注文ボタンを押す、など)がミスなく行えるかを確認するものだ。プログラムがわかっていなくてもできるので、もっぱら新人の仕事だ。だからといって、なぜ言うのが直前なんだ。仕事を振るならもっと早く言え。私だって暇じゃない。今日中にプログラムの修正を終えないと、納期に間に合わないのだ。ユーザーテストに割かれた分の時間は当然残業だ。


 そうこうしているうちに朝礼の10時が近づき、重役社員たちが出勤してきた。開発部の全員が机の前に直立不動に立ち、さて部長が話そうとしたとき、バタンと大きくドアが開き、背の高い若い男性が入ってきた。


「やっば、もう朝礼の時間っすか。ギリギリセーフっすね!」

 男性は全員の冷たい視線をものともせず、悠々と自分の机の前まで移動する。こいつは、星野王子(ほしのおうじ)。今年、工業高校を卒業したばかりで、私の入社と同じタイミングでこの会社にアルバイトとして雇われた。就職活動に失敗した私が言える立場ではないが、アホすぎてどこでも雇ってもらえず、何とかこの会社でアルバイトとして採用されたそうだ。採用の面接では、社名のBreak(ブレイク) Future(フューチャー)を「ブレアクフチュレ」だと思っていたことが発覚したが、あまりの人手不足に、人事部長が「とりあえず、目が二つ、耳が二つあるから大丈夫だ」と言ったんだとか何とか。顔は某韓国アイドルグループにいそうなイケメンだけに、残念である。


 私が属する開発部第1グループはリーダーの山口さん、SEの香川さん、ウェブデザイナーの石川さん、そしてアホ王子の5人で構成されている。


「それでは、朝礼を始めます。社訓、斉唱から!一!」

部長の声で、今日もブラックな一日は始まった。


***************************


 午前中いっぱいユーザーテストでつぶされ、12時のチャイムとともに私は自分のデスクに戻ってきた。昼休みは12時から13時になっているが、昼休みとは都市伝説だと思う。仕事をしながらパンやおにぎりをかじるのが普通だ。最初のうち、お弁当を持ってきたら食べるタイミングがわからず、結局そのまま持って帰る羽目になった。それからは毎日おにぎりとインスタント味噌汁である。金銭的事情から、毎日おにぎりは自分で作って持ってきている。遥がインスタント味噌汁の入ったマグカップをふふうふうやっていると、隣の席に王子がどかっと座り、コンビニ袋からどさどさと中身を出した。私はその中身を見てぎょっとする。

「何それ。」

「えっ、遥さん、知らないんっすか。サラダチキンすよ。」

 王子が驚いたように言う。

「いや、知ってる。そうじゃなくて、なんでそればかり5つ?」

 王子のコンビニ袋に入ってたのはサラダチキンだけだった。え?米は?おにぎりとか食べないの?私の心の声が聞こえていたのか、王子は言った。

「筋肉作るのには良質なタンパク質が必要なんすよ。余計な脂肪はつけたくないんで、今、糖質制限してるんすよね。」

「へえ・・・」

 アホ王子のくせに、自分の体に関してはえらく意識が高い。というか、王子の口から「タンパク質」とか「糖質制限」とかいう言葉が出てくるとは思わなかった。


 事件が起きたのはその時だった。

「あの、休憩中すみません。皆さん、ちょっとよろしいですか。お尋ねしたいのですが、廊下に置いていた紙袋がどこかに行ってしまったんです。ご存じの方、いませんか」

 うちの会社、唯一の良心、真面目で気弱な宮本課長が珍しく声をはりあげていた。いつもは子守唄でも歌うような声なのに珍しい。


「茶色の、このくらいのサイズの紙袋なんですけどね、朝、廊下のテーブルの端っこに置いておいたんですが、昼休みに廊下に出たらなくなっていて。どなたか、移動された方などいらっしゃったら教えて欲しいのですが」

 ざわめく社内。ただ、誰も首をかしげるばかりで、反応する人はいない。私も全く心当たりがない。


「星野くんは茶色い紙袋知らないかな?」

宮本課長がサラダチキンをかじっている王子に言う。


「茶色い紙袋っすか?朝見たっすよ。金色でGODIV・・・とか書いているやつっすよね?」

 シェイカーに入った怪しげな緑の液体で、サラダチキンを飲み込んだ王子が答える。

「GODI・・・って、ゴデ〇バ?課長、チョコレート廊下に置いてたんですか?」

ウェブデザイナーの石川さんが声をあげる。

「ああ、うん、私の席、直射日光が差すもんで、廊下の方がいいかなあと思って・・・」

と、宮本課長。

「冷蔵庫入れましょうよ。そもそもなんで、チョコ持ってきたんですか。朝じゃ店開いてないし、昨日買ってわざわざ持ってきたってことですよね?」

さすが、石川さん、なかなか鋭い着眼点だ。いつもチャキチャキの石川さんは今年30歳。「早く結婚して会社辞めたい」が口癖だ。

「・・・あ、ちょっと個人的な事情で・・・」

宮本課長はもごもご言ったが、石川さんを始めとする周囲の視線に負けたように続けた。

「・・・今日、結婚記念日でして。仕事の後、妻と食事に行くんですけど、なんかサプライズで渡したいなと思って、昨日買ったんですよ。」

微妙に恥ずかしそうな表情で宮本課長は言った。宮本課長、めっちゃいい人やん。さすが、わが部の唯一の良心。

「それは探さないと!私その辺見てきますね!テーブルって資料室前の応接コーナーのですよね。誰かが資料室に移動したのかもしれないですよ。」

石川さんがサッと立ち上がる。

「廊下置きっぱなしだったから、掃除のおばちゃんがどっか片付けたんじゃないっすか。もしかしたらゴミと間違えて捨てちゃったとか。」

王子、この流れでそれ言うか?これ、山口リーダーのチョコだったらキレてる場面だよ。気の弱い宮本課長はもちろんそんなことでキレたりしない。

「・・・確かにそうかもしれないね・・・。」

しょんぼりと言う宮本課長に、石川さんが慌てる。

「いやいやいやいや、さすがに克美さんもゴデ〇バ捨てないですって!ゴデ〇バの袋見てチョコとわからないのなんて、このアホ王子くらいのものですから!」

「・・・それちょっとひどくないっすか?だって、あのおばちゃん、なんか雑そうな感じするじゃないっすか。いつもイノシシかブルドーザーみたいな勢いで掃除してるし。俺、あの人ちょっと苦手っす。」

王子が口をとがらせて言う。掃除のおばちゃんこと克美さんには、王子はしょっちゅう怒られている。

「もう、ぐだぐだ言ってないで探しましょ!私はサーバー室見てくるから王子は資料室ね。遥ちゃん、克美さん探してゴデ〇バの袋見てないか聞いてきて。」

石川さんがテキパキと指示する。


 宮本課長のためだ。仕方ない。私はため息をつきながら立ち上がった。プログラムの修正はできないままだ。


 三人そろって廊下に出ようとドアを開けたら、ちょうどペ〇ング焼きそばを持った山口リーダーが部屋に入ろうとしていたところだった。

「あっぶねっ!急に開けるなよ。」

山口リーダーが怒鳴る。山口リーダーの後ろには、コンビニ袋を持った香川さんが立っている。香川さんは入社3年目のSE。眼鏡をかけた無口な男性だ。香川さんが文句を言わないのをいいことに、山口リーダーはいつも面倒くさい仕事を押し付けている。今だって、香川さんが持つコンビニ袋の中の半分は山口リーダーのパンやおにぎりが入ってるはずである。山口リーダーは、コンビニ袋を買うのがもったいないからと言って買わないくせに、手がふさがってドアが開けれないとか何とか言って、一緒に行った香川さんのコンビニ袋に自分のをちゃっかり入れてしまうのだ。香川さんも一緒に行かなければいいのに、山口リーダーに声をかけられるといつもついていく。波風立てずに過ごしたいタイプなんだろう。

「あ、山口くん、香川くん、ちょっと探し物しに行くから、電話来たらよろしくね。」

と石川さん。

「山口リーダー、机の上にテスト結果置いてるので、早めに確認お願いします。」

私も慌てて言うと、部屋から走り出た。


***************************


 克美さんとは、この会社の清掃パートのリーダーの女性、鈴木克美さんのことだ。別名、最強の掃除のおばちゃん。エアコンの消し忘れやゴミの分別に関しては、相手が社長であっても容赦なく怒る。これは単なる噂ではなく、私は実際に山口リーダーが叱られている現場を目撃したことがある。空き缶専用ごみ箱にパンの袋を捨てようとしたらしく、いつも偉そうな山口リーダーが小さくなって謝っている様子はなかなか良い眺めだった。それ以外には、ほうき一本でカラスの大群に立ち向かったとか、ゴキブリを素手で捕まえて頭をもいで退治したとか、嘘か本当かわからない伝説は多い。


 克美さんは果たして一階の自販機コーナーにいた。ゴキブリが良く出るとうわさのこの場所だけに、ちょっとびくびくする。私は虫を怖がるタイプではないけれど、できればゴキブリはあまり見たくない。頭のもがれる瞬間は特に。

「あの、克美さん、お仕事中すみません。ちょっと探し物なんですけど。」

 私は克美さんに声かける。ペットボトルのゴミ袋をまとめていた克美さんはこちらを振り向いた。

「二階の廊下を掃除した時、ゴデ○バのチョコの紙袋置いてあるの見ませんでしたか?」

「え?ゴデ○バのチョコ?」

克美さんが素っ頓狂な声を出す。

「このくらいの紙袋に入っていたらしいんですけど、廊下に置いてたらなくなったらしいです。」

身ぶりを交えて説明する。

「うーん、廊下って中の方の廊下だよね?」

うちの会社はとあるビルの二階に入っているが、自社ビルというわけではなく、当然他の会社も使っている。二階はうちの会社以外にもう一社が入っており、給湯室、トイレ、自販機コーナーは共用だ。うちの会社の入口を入った中には受付用内線のある小さなテーブルがあり、その奥には廊下、それぞれの部屋となっている。宮本課長が紙袋を置いたのは、当然その中の方の廊下で、共用部の廊下ではない。

「そうですね、中の廊下の奥の応接コーナーです。朝、宮本課長が置いたらしいんですが。」

私は答えた。

「じゃあ、私は知らないかなあ。個別の会社の中は、就業時間中は掃除しないことになってるんだよね。私が掃除したのは5時半ごろ。その時間にはまだ宮本課長来てないでしょ。テーブルの上も何もなかったと思うよ。」

克美さんはペットボトル専用ゴミ箱に新しいゴミ袋をセットしながら言う。

「そうですか…ありがとうございました。お仕事お邪魔してすみません。」

私は頭を下げ、自販機コーナーから開発部に歩き出した。

「あれ?ちょっと待って!」

克美さんの声に、慌ててUターンする。

「何かありました?」

自販機コーナーに戻ってきた私に、克美さんは燃えるゴミ用ゴミ箱から外したばかりの袋の中を指さす。

「ゴデ〇バって、もしかしてこれのこと?」

そこにはゴデ〇バの紙袋と、チョコレートが入っていたらしい、小さな仕切りのついた箱があった。私は無言で箱を取る。箱の後ろにはペ〇ング焼きそばのフィルムが貼りついていた。


***************************


 私が開発部の部屋へ戻ると、ちょうど石川さんと王子も戻ってきたところだった。私の持ってきた空箱を見てぎょっとしている石川さんに、ことの経緯を簡単に話し、一緒に宮本課長のところへ行った。


 空箱は宮本課長のチョコレートのもので間違いないらしい。宮本課長はちょっと悲しそうな顔をしながらも、

「廊下に置いていた私も悪いし、もう気にしないでね。探してくれてありがとう」

と言った。


 あんなにいい人の宮本課長のチョコレートを取るなんて。山口リーダーならともかく。そう思ったとき、ふと、山口リーダーが持っていたペ〇ングを思い出した。


「あの、山口リーダー、焼きそばの外側のフィルムを捨てたとき、誰かに会いませんでしたか?」

宮本課長が会議室に入ったタイミングで、こっそり山口リーダーに聞く。

「え?あー、ゴミ捨てて出たところで河本さんに会ったなあ。」

 河本さんは経理を担当している女性だ。社長のいる総務部にいる。20代後半だと思う。美人なので、社長のお気に入りだ。いつもネイルは綺麗に塗ってあり、控えめに巻いた髪はハーフアップにしている。

「河本さん、何か手に持ってませんでした?」

 私はドキドキしながら聞く。

「うーん、持ってなかったと思うけどなあ。おーい香川、自販機のとこで会ったとき、河本さん、なんか持ってたか?」

山口リーダーが大声で香川さんに聞くので私はぎょっとする。みんなに聞かれるじゃないか。

「・・・何も持ってなかったと思います。」

一瞬の間の後、香川さんがぼそぼそと言った。

「えー、もしかして、さっきのチョコの話?何かわかったの?」

石川さんが聞く。私は周りをちらっと見、声をひそめて言う。

「いや、実はゴデ⚪︎バの箱がゴミ箱から出てきた時、山口リーダーの食べてたペ○ングのフィルムがくっついてたんですよね。山口リーダーのすぐ後でゴミを捨てたのだとしたら、犯人がわかるんじゃないかと思って。」

石川さんは、うんうんと頷いたあと言った。

「なるほどね、それでいたのが、かわもっちゃんか。でも、かわもっちゃんは犯人じゃないと思うよ。」

「そうなんですか?」

「だって、かわもっちゃん、ナッツアレルギーだもん。ゴデ⚪︎バのチョコレートだと、ナッツのガナッシュ入ってたりするから食べれないでしょ。自分が食べられないもの、わざわざとったりしないんじゃない?」

石川さんが言った。私は尋ねる。

「河本さん、ナッツアレルギーなんですか?どうして知ってるんですか?」

「前に忘年会の幹事したときに、かわもっちゃんから言われたんだよ。ナッツアレルギーで、少量でも救急車だから、メニューはナッツが入ってないものにしてくれって。」

石川さんが答えた。なるほど、それなら河本さんがチョコレートを食べることはなさそうだ。目の前で、香川さんがふーっと息を吐いたのを、私は見逃さなかった。

「ゴミ箱に捨てに来た時より、いつとられたかが大事なんじゃないか?その時にアリバイがなかった奴が犯人ってことだな。」

と、山口リーダーが言う。

「そりゃ確かに。王子、あんた紙袋見たんでしょ。いつ頃まであったかわかる?」

石川さんが王子に尋ねる。

「えーと、俺、朝礼の後からすぐ宮本課長に言われて資料整理をしてたんすけど、その時、応接コーナーのテーブルの上に紙袋があるのを見たんっす。11時過ぎまではテーブルのとこで資料整理してたっすけど、誰も来なかったっすよ。」

王子は答えた。うちの会社は、入口を入ると総務部、会議室、開発部の順で部屋が並び、その奥にサーバー室と資料室がある。応接コーナーは一番奥の資料室の前だ。だから、普段人が通りかかることはあまりない。

「ってことは、チョコレートが盗まれたのは、11時過ぎから昼休みになる12時の間ってことだね。その間のアリバイを確認すれば犯人がわかるってことか。」

と石川さん。微妙に楽しそう。

「その時間、みんなこの部屋で仕事してるだろ。あー、伊集院、お前は一人ユーザーテストしてたから、わからんな。おっ、お前が犯人じゃね?推理小説でもあるだろ、第一発見者が実は犯人、てやつ。」

山口リーダーがにやにや笑いながら言う。こいつムカつく。と言うより、このままじゃ犯人にされかねない。私は慌てて言った。

「それ言うなら第一発見者は克美さんですし、アリバイないのは王子もですよ。一人で資料整理してたんですから。チョコレートが11時まであったというのも嘘で、実は資料整理しながら全部食べちゃったかもしれないですよ!」

私の精一杯の反撃に、今度は王子が慌てる。

「いや、ないっすよ!俺、今、糖質制限中なんっすよ?それに、俺、あれがチョコって知らなかったっすもん。」

王子の反論はまるっと無視して山口リーダーは言う。

「なるほど、じゃあ、容疑者は2人だな。俺らはここで仕事してたし、第2グループの連中はその時間ミーティングしてた。よって、チョコレートを盗むことができるのは、伊集院と王子だけだ。」

したり顔の山口リーダーに、横から石川さんが言った。

「いーえ、3人です。山口くん、11時15分頃から20分くらいタバコ休憩って席を外してましたよね。」

「はあ?そんな長くて出てないし、11時15分とかそんな細かく覚えてねえよ。お前は俺のストーカーかよ!」

山口リーダーがかみつく。

「11時18分と11時35分、客先からの山口くんへの電話、どっちとも取ったのは私です。」

石川さんが山口リーダーの机に貼り付けてあるメモを指差しながら言った。山口リーダーは激昂する。

「はあ!?俺を犯人扱いするのかよ。大体チョコレートとか食べるの女子だろ。男は甘いものとかわざわざ食べねえよ。あー、克美さんが実は盗んで食っちまったんじゃねえのか?女はおばちゃんになると意地汚いからな。」

「なにそれ!?女はどうとか、おばちゃんはどうとか、偏見はいい加減にして。チョコレート食べるのに男も女も関係ないでしょ。」

石川さんが食ってかかる。山口リーダーは面倒くさそうに顔を振って言う。

「うわ、フェミ発言来たわ。こういうのウザいわー。」

石川さんが真っ赤になる。

「はあ!?あんたこそセクハラ発言でしょうが!労働局に訴えるぞコラ!」

 なんだか話が変な方向になってきた。どう止めるべきか焦っていたところで、ちょうど会議が終わった部長と課長が入ってきたので、会話はそのままになった。山口リーダーも石川さんも何事もなかったかのように仕事をしている。


 私はプログラムの修正になかなか身が入らない。チョコレートの行方が気になって仕方がないのだ。山口リーダーは何故だか開発部のメンバーしか考えていなかったが、隣の総務部にも5人いる。社長、社長の奥さんで経理部長の都子さん、先程の話の経理担当の河本さん、庶務全般担当パートの田中さん、そして何やってるかよくわからない卓さんだ。


 パートの田中さんは、30代後半、お子さんが幼稚園に行っている時間帯だけ、9時14時で働いている。愛想よく挨拶される方だが、鬼気迫る勢いで仕事して、あっという間に帰っていくイメージだ。お子さんが熱を出したら呼び出しの電話がかかってくるのだが、休ませてくれるほどホワイトな会社ではないので、車で片道45分の実家まで子どもを預けに行って、また戻ってきて仕事をしている。せっかく見つかったパート、クビになるよりマシ、とのことだ。


 卓さんは今年55歳の小柄なおじちゃんだ。若い頃は、遥のいる開発部にいたそうだ。開発部在籍時に、壊してしまったサーバは数知れず。うっかり消してしまった他人のプログラムコードも数知れず。美人のバイトの女の子にあてたポエムを、間違えて全員にメール送信してしまったという武勇伝もある。当然のことながら、その女の子には「キモっ」とドン引きされ、翌日からバイトに来なくなった。仕事はしないくせに、貴重な戦力も減らしてしまう、ある意味ミラクルな存在である。


 おかげで、現在は総務部にて、立派な社内ニートとなり、毎日ブラブラしている。資料のコピー、ホチキスどめ、廃棄資料のシュレッダーかけといったお手伝いレベルの仕事をこなすくらいで、勤務時間中も自販機コーナーや入口のグッピーの水槽のところをウロウロしている。パソコンに向かっているときは、大抵トランプゲームかメル○リが開いている。ここまで酷かったら普通は解雇されそうなものだが、クビにならないのは、卓さんが社長だか取引先だかの親戚だからだという話である。


 そうだ、卓さんに聞いてみるのはどうだろうか。今のところ、河本さんが有力な容疑者の一人であることは変わりない。総務部にちょっと行ってみよう。私は何か口実がないかときょろきょろ見渡し、廃棄資料入れがあふれてるのを見つけた。

「ちょっとシュレッダーかける資料、持っていきます。」

私はそう言って部屋を出た。


************


「あの、卓さん、この資料お願いします」

 私は、トランプ画面を開けたパソコンに向かっている卓さんに声をかけた。

「ああ、はいはい、シュレッダーね。わかりましたよ、このプロに任せなさい」

 卓さんがドヤ顔する。シュレッダーかけのプロ…。

「資料たくさんあるねえ。ひとまず、ワタシの机に置いておいてくれる?」

 卓さんに言われて、机を見た私は目をむいた。


 そこには、見るからに高級そうなチョコが2粒置いてあった。

「卓さん、これ、あの…ゴデ○バですよね?」

 私は恐る恐る尋ねる。

「あ、うん。そうだけど?ああ、伊集院さん、食べたい?2つあるから、1つあげるよ。お客さんにもらったやつなんだけど、8個しか入ってなくて、開発部にまで行き渡らない感じだったから、こっちの総務部で分けちゃったんだよ」

 卓さんはニコニコ話す。お客さん、からのお土産?私の脳裏にふと、河本さんがチョコレートを配る様子が浮かんだ。「お客さんからのお土産です」と言って、1つ1つ机に置いていく。社長がいる総務部にはちょっと高級なお土産が届くこともある。総務部で一番若い河本さんは、色々雑用もしているから、チョコレートを配って回っても不自然ではない。


 チョコレートが食べられない河本さんがチョコレートを盗むと言うことが最大の謎だった。でも、もし、宮本課長が奥さんにチョコレートを渡すことを阻止することが目的だったとしたら?例えば、河本さんが宮本課長のことが好きで、奥さんにチョコレートを渡そうとしているのを知って、それを邪魔しようとしたと考えたとしたら?


 そう考えたら、誰も通らない応接コーナーからチョコレートが消えたことも納得が行く。河本さんは、宮本課長がチョコレートを持ってきたことを知っていたのだ。そして、宮本課長がチョコレートを応接コーナーに置いたことを見届け、誰もいなくなったときにとったのだろう。


 私はそう結論づけると、開発部に戻った。あとは裏をとるだけだ。香川さんのあの様子、何かを知っている感じだった。ちょっと聞いてみよう。


 私は急いで開発部に戻った。


**********


「香川さん、この修正プログラムの要件を確認したいので、ちょっとこっちいいですか?」

 プログラム要件を口実に、香川さんをミーティング用テーブルに呼び出す。もちろん、確認することなんて何もない。やってきた香川さんに、声をひそめて私は聞いた。

「香川さん、河本さんがゴデ○バの袋持ってるの見たんですよね?」

香川さんはぎょっとして私を見る。その表情が見たと言っているようなものだ。この人、ウソつけない人なんだなあ。

「…わざわざ、ことを荒立てるようなこと、しなくていいと思います。」

香川さんはぼそっと言った。

「山口リーダーが気づかなかったってことは、なんか隠すように持ってたとかそう言うことですか?」

私は聞く。

「いいえ、普通に手に持ってましたよ。別に隠そうとなんかしてませんでした。…山口リーダー、いつも河本さんの胸しか見てないですから。」

香川さんが淡々と話す。山口、サイテーだな。


 ともかく、これで河本さんが犯人だということがはっきりした。宮本課長が奥さんに用意したチョコレートは戻ってこないけれど、弁償させることは出来るはずだ。河本さんも自分のしたことを全社に話されるよりは、こっそり弁償する方がいいだろう。


 しかし、何かが引っかかる。チョコレートを処分するだけなら、わざわざ配らなくても、中身ごと社内のゴミ箱に捨てれば良いはずだ。わざわざ配ることで、目撃者が増えてしまう。チョコレートの箱を隠そうとしていなかったのもおかしい。自分が犯人なら、絶対に見られたくないはずである。


 私は考え込む。そして、ふっとひらめいた。


 そうか!別の誰かが、河本さんに配るように指示したとも考えられないか?河本さんは、お客さんのお土産だと言われてチョコレートを配り、そのゴミを捨てに行った。だとしたら箱を隠そうとするはずはない。


 じゃあ、その指示した人が犯人だ。


 指示した人が誰か、探ってみよう。河本さんは、まだ容疑者である可能性もあるし、直接聞くのはまずい。社長や副社長は聞きにくいし、パートの田中さんはもう帰ったあとだ。聞けるのは卓さんしかいない。


 私はトイレに行くふりをして、そっと部屋を出た。仕事が全く進んでいない気がするが、こう気になっては仕事も集中できない。


**********


 卓さんは入口横の水槽のグッピーに餌をやっていた。私を見るとニッコリ笑う。

「おや、今日はよく会いますねえ。」

 私は単刀直入に聞いた。

「すみません、ちょっと教えてほしいんですが、総務部で配られたチョコレートって、河本さんがお客さんのお土産です、と言って配ってたんですか?それとも、誰かが河本さんに配るように指示したんですか?」

 卓さんは不思議そうな顔をする。

「え?配るように頼んだのはワタシだけど…」

 ん?どういうことだ?

「…そうなんですか?お客さんのお土産だって言ってましたよね?どなたのお土産なのか、わかります?」

 私は尋ねた。

「それがわからないんだよねえ。『ご自由にどうぞ』コーナーに置いてあったんだよ。ほら、うちに来る会社とか近所のお店がサンプルとかクーポンとか置いてくれてるとこ。サンプルのお菓子はたまにあるけど、ゴデ○バくれるのは珍しいよね。」

 卓さんはニコニコしたままだ。


 「ご自由にどうぞ」コーナー。うちの会社に物を納品している会社や、近所の飲食店がパンフレットやクーポン、サンプル、カレンダー(年末のみ)などをくれたのを、まとめて置いてある棚である。ほとんどが近所の飲食店のチラシとクーポンで、たまに近所のドラッグストアが新製品のサンプルを置いてくれている。洗濯洗剤やシャンプー、化粧水などのサンプルがほとんどで、ごくたまにプロテインバーなんかがあったりするが、ゴデ○バなんかを置いてくれる人はいないだろう。ん?「ご自由にどうぞ」コーナー、どこにあったっけ?…あ!!


 私の頭に、ある事実がひらめく。私は走って開発部に戻った。


*****


「ちょっと、王子。聞きたいことあるんだけど、廊下までいいかな?」

 私は開発部に戻ると、王子に声をかけた。

「えー、遥さん、なんっすか?告白っすか?まだ仕事中っすよ?そんなあせらなくても、夜は長いんすから、何なら…うっ!」

 私はアホ王子のネクタイを後ろから引っ張りあげる。これ以上の戯言は聞くに耐えない。本当は奴のみぞおちにも二、三発くらわせたいところだが、アホ王子の腹なんぞ殴ったら、こちらの手が被害を受ける。残念イケメン、アホ王子の腹は無駄に鍛えられている。

「王子が午前中に整理してた資料のことで確認したいことがあるんです。来てもらえますね?」

 王子を好きだとかいう風評被害をふせぐため、あえて丁寧な大声で言う。


 しかし、王子の日ごろの行いのためか、王子の戯言を信じる人は1人もおらず、むしろ「アホ王子がまた何かやらかしたのか」と気の毒そうに私を見た。


 私はアホ王子をそのまま廊下まで引っ張っていく。

「王子、午前中にここの応接スペースで資料整理してたのよね?」

 私は王子に尋ねる。

「そうっすけど…」

 王子は引っ張っられて締まりすぎたネクタイを直しながら答える。

「その時、テーブルに置いてあった、宮本課長のゴデ○バの袋、どこかに移動したんじゃないの?」

 私は王子を睨みつける。

「…あ、そう言えば、ファイル広げる時邪魔だったんで、後ろの棚に置いたんだったっすわ。戻したつもりだったっすけど、もしかしたら戻すの忘れてたかもしれないっす…。」

王子は頭をかく。私はため息をついた。


 王子が紙袋を置いた棚というのはあれだ。資料室前にある「ご自由にどうぞ」の棚のことであった。


**********


 この高級チョコレート行方不明事件の顛末はこうだ。王子が資料整理するときにチョコレートの袋を「ご自由にどうぞ」の棚の上に移動して、そのまま忘れてしまっていた。その後、いつものように廊下をぶらぶら散歩していた卓さんがチョコレートを見つけ、お客さんからのお土産だと思い込んで総務部に持っていき、それを河本さんに配ってもらったのだ。


 アホ王子が紙袋を移動したことを忘れなければ、卓さんがお客さんのお土産だと勘違いすることはなかっただろうし、逆に卓さんでなければ、本来チラシやサンプルが置いてある棚にあるチョコレートをお客さんのお土産だと思いこむはずもなかっただろう。今回の事件は、アホ王子とすっとぼけた卓さんの2人がコラボレーションすることで起こってしまった悲劇だったのだ。


 私はアホ王子の話を聞いてすぐ、王子を卓さんのところに引っ張って行って事情を説明し、二人は一緒に宮本課長に謝りに行った。卓さんは、宮本課長のものとは知らずに申し訳なかった、と大変恐縮していた。そして、その10分後には(当然のことながら就業時間中だ)タクシーを呼んで百貨店に行き、ゴデ○バ30個入りを買って来て、宮本課長に渡していた。奥さまへのちょっとしたプレゼントの8個入りが、お中元か何かのような大きな箱になり、宮本課長は微妙に困惑しながらお礼を言っていた。これで宮本課長が結婚記念日を楽しく過ごせることを祈るばかりだ。


 チョコレートは本来ならば、王子も一緒に弁償すべきだと思うのだが、そこは卓さんが、

「いやいや、大丈夫ですよ。王子くんは、チョコ、1つも食べてないわけですし。」

と、気前よく払ってくれた。卓さんが、あれだけ迷惑をかけながらも、55歳までこの会社で勤めていられる理由がわかった気がした。


 ちなみに、聞いた話だと、卓さんは不動産資産や株を大量に持っており、家賃収入や資産運用だけで悠々自適の生活を送ることが出来るらしい。


 システム会社では何も出来ない卓さんだが、資産運用だけは凄腕らしく、資産はどんなに少なく見積もっても10億は超えるらしい。


 その卓さんが、この会社で未だに働いている理由は、卓さんがこの会社の大株主で、卓さんが持株を売ってしまわないように、社長が引き止めているからだという。卓さんの給与自体は、高卒の初任給と変わらないそうだ。社長も卓さんも、それでいいのだろうか?


 そして、事件解決しても、仕事は解決しなかった。事件が解決してスッキリした私が、やっと調子良くプログラム修正を進めていたら、

「ああー!?なんだこれは!」

と、山口リーダーの怒声が響き渡った。

「おい、伊集院、このテスト結果なんだよ?エラー出てるじゃねえかよ。」

山口リーダー、完全にキレモードだ。ちなみに時間は18:30、本来の退社時刻は過ぎている。

「はい、出てます。だから、一番上のメモに書いてますよ。テスト結果、早めに確認お願いします、とお伝えしましたけど。」

 私は言う。午前中のユーザーテストの結果、本来の指定のテスト項目は全てOKだったのだが、何となく、試しに私の名前「伊集院」を登録しようとしたらシステムエラーになったのだ。それもエラーメッセージが出るのではなく、システムごと落ちてしまう最悪のやつ。

「馬鹿やろう!出てます、じゃねえ!こんなの出てたら『重大エラーが出ました』て報告するところだろ!確認お願いします、で伝わるか!客先に明日の午前中に納品するって電話してしまったじゃねえか!」

 山口リーダーがマジギレしている。いやいや、テスト結果資料確認する前に電話するなよ。どうせ、自分のテスト結果が全てOKだったから、大丈夫だと決め込んで、私のテスト結果なんて見もしなかったんだろう。

「おい、伊集院、このエラー再現して、どの入力値のときにエラーが出るのかまとめろ。今すぐな!香川、お前サポートしてエラー箇所のプログラム修正手伝え。」

 自分の不手際を棚にあげて、ちゃっかり自分の仕事を他人に振る山口リーダー。でも、エラーの報告をきちんとしなかったのは言われた通りだ。チョコレート事件にばかり気にして、頭が回ってなかったらしい。

「はい、わかりました。」

 私は大人しく返事をすると、テスト用パソコンをミーティングテーブルに設置し、立ち上げる。自分のプログラム修正は終わらないままだ。


*********


 翌日、私は目をしょぼつかせながら出社した。その後、私、香川さん、山口リーダーによる検証と修正、再テストは数時間を要した。途中で現れた石川さんが、

「これそもそも山口くんの不手際でしょうが!なんで香川くんや遥ちゃんに手伝わせてるの!2人とも自分の仕事しなさい。」

と言ってくれなかったら、多分、朝まで付き合わされただろう。

 石川さんのおかげで、夜9時過ぎからは自分のプログラム修正に取りかかることが出来、何とかギリギリ終電の時刻に終わらせることが出来た。本当の本当のギリギリだったため、会社から駅まで全力疾走したせいで、今朝は体のあちこちが痛い。


 山口リーダーは泊まり込みだったらしい。朝、開発部に入ったら、並べた椅子の上で山口リーダーが仮眠を取っていた。


「あー、すいません。山口です。いつもお世話になっております。はい、今日の納品の件ですが、今、最後の確認をしておりますので、時間をちょっとだけ後ろ倒しにしていただいてもいいですか?あー、はい、ありがとうございます。はい、では一時で。はい、よろしくお願いします。」

 山口リーダーの電話を聞いて苦笑する。修正はしたものの、テストは終わらなかったんだろうな。システムの修正の場合、エラーの出た箇所のみのチェックでなく、全ての項目を再チェックする必要がある。プログラムコーディング自体が1日なら、システムのテストはその3倍の3日必要だとも言われる。


 ふとドアの方を見ると、卓さんがちょいちょいと手を振っている。いつもは10時の朝礼に合わせて来る卓さん、珍しく定刻前に会社にいる。


「伊集院さん、これ、ちょっとだけど、迷惑料。」

 廊下に出ると、卓さんが小さな可愛らしい紙袋を私に差し出した。

「えっ?私にですか?」

 私は袋の中身をのぞいた。中には、小さなゴデ○バの箱と、某フランスメーカーのハンドクリーム2本セットが入っていた。

「伊集院さん、克美さんにまで聞きに行ったんだって?怖い思いをさせて、本当にごめんね。チョコレートは昨日一緒に買ってたんだけど、それだけってのも申し訳なくてね。」

 卓さんはニコニコしながら言った。


 いや、別に怖い思いはしていない。


 卓さんは克美さんを怖がりすぎではないだろうか。一体何があったんだろう。


「遠慮するとか言わないでね。ハンドクリームとか、おっさんの手元に残っても困るだけなんだから。」

 私はありがたく袋を受け取った。ゴデ○バとハンドクリームは後で石川さんと分けよう。そもそもチョコレートを探そうとしたのは石川さんだし、仕事も石川さんがいなければ終わらなかった。

「ありがとうございます。気を遣っていただいてすみません。」

 私は頭を下げる。

「いやいや、これからも迷惑かけるだろうけど、よろしくね。」

と、卓さん。


 いや、それは心からご遠慮いたします!


 私は心の中で叫んだのだった。


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