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男女の機微は、肉体言語の限界

もうちょい続けることにします

カトレア・ク・ハゥクロアエ。

年齢、貴族の結婚適齢の平均を少し上回るくらい。特技、一騎討ち、乱戦。趣味、鍛練と読書。職業、騎士団長。

そんな彼女にプロポーズをしてきたハル・クアラトリウスと結婚するメリットとして、政治的観点からすればクアラトリウス家とは王家が関係を深めておきたくかつ、クアラトリウス家にさほど野心がないので、十四王女たる彼女はちょうどよかった。また、カトレアとハルは、戦時中からの戦友であり気心が知れているので、カトレアとしても悪い気は全くしない。

一方のデメリットは、


(わたくしなにも聞いてませんわ!)


それにつきる。

そもそも、『割りとずっと。というか気づいてないの、君だけだし、というか自覚ないの?』ってなんだ。ずっと、ってなんだ。自覚ないの?、ってなんだ。

カトレアの好む物語では、ちゃんと『愛してる』って伝えてから、いわゆるお付き合いというものを、ヒーローとヒロインはスタートする。

それをあの男は、何だ。『外堀は埋めてあるから』って。こそこそ動くな。内堀を先に埋めに来い。

要するに、カトレアは色々ありすぎて、ご立腹だった。



「これを、副団長に渡してくれ」

「はあ……まあ、いいですが。団長、まだ副団長から逃げていらっしゃるんですか?」

「別に、逃げて、いないぞ」


同僚達には'大会'の決勝で何があったのかは、知られている。

年上の部下は、呆れた目で執務用の机に向かっているカトレアを見下ろしながら、


「なら、直接渡しに行ってくださいよ」

「命令」

「へいへい」

「返事は一回!」

「はっ!」


なんか、今回の件では、やけに生暖かい目でカトレアとハルは、見守られている気がしてしょうがない。というか、もはやなめられている気がする。


「それで、返事はいつなさるんですか?」

「何のことだ?」

「無駄にとぼけないでください、めんどくさいので」


まじで、馬鹿にされている。この部下は、明日の訓練で痛め付けよう。


「職務中に関係のない話をするな」

「めちゃくちゃ職務に関係してるんですよ。副団長への伝言を頻繁にしなきゃなんないお陰で、こっちの仕事が増えているので」

「………………そ、そのうち」


はあー、と深いため息を部下は吐いた。年上の戦友は、どっかりと執務室のソファに腰かける。


「今回は、4.9と5.1の割合で、ハルの方が悪いと思うから一応団長の方の味方をしようとは思っているんですがね」

「そ、そんな、僅差なんですの!?」

「どっこいどっこいです」


深々と頷かれてしまう。

普通にショックだ。思わず、素のしゃべり方になってしまった。


「この騎士団の大抵の連中は、あんたらがガキのころから見守ってきた訳でして、こいつらいつまでやっとるんだとは思っていたんですが」

「ちょっと待ちなさい、見守られていましたの?」


見守っています、と返される。


「今回は裏でこそこそ手を回していたハルの方が、ほんの僅かにダメですが、その上でいわせていただきます。もうちょい、ハルのど阿呆にも歩み寄ってやって下さいませんか」


おそらく、これは彼一人の言葉ではなく、他の騎士達の総意なのだろう。

カトレアも、これには真摯に答えないわけにはいかない。


「分かっています」

「なら、良かった」


部下は、ソファから立ち上がり騎士の礼をカトレアにする。カトレアも、それを返す。


そこで、リーンゴーン!と鐘が鳴った。


「私の勤務時間は終わったから、あとは任せたぞ!」


カトレアは、勢いよく執務室の窓から外へと飛び降りる。

変に、正規の出入り口に行けばハルと遭遇する可能性が高いからだ。


「分かってんのか、あいつ…………」


騎士団に属する男は、非常に疲れた声を出した。


「団長は、もう帰った後かあ」


ノコノコとやってきた(今からが彼の勤務時間だからしょうがないのだが)副団長は、部下に頭をしばかれた。

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