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08_ワイバーン討伐 その前に...。_前編

アルフレッドの新しい滞在先をエンツォに頼んだライガは、簡易不動産カウンターを出て、クエストカウンターへと行こうとしていた。

そこで、装備品・服のクリーニングサービスカウンターから出てきたジークハルトと出くわした。


「よう!ライガ!」

「こんにちは、ジークさん。」

「お前さんの”マゾ値”は、上がっているかい?」

と肩を震わせながら聞いてくる。


面白くない事を覚えているもんだ。


「ジークさんは、装備品のクリーニングですか?」

とさっさとジークハルトの揶揄いをスルーして、別の質問で切り返すライガ。


「ああ、短剣をちょっと研いでもらうかと思ってな。」

「なるほど。」

「だがなぁ...絶賛、バール爺が客と揉めててな。出直してくるわ。」


装備、すなわち、色々な武器が沢山ある場所で揉めているとは、穏やかな話ではない。

本当に物騒な事になりそうな場合だったら、ジークは止めるだろうが、今回止めないという事は、そこまで大変な事にはならないのだろう。


「短剣の研磨くらいだったら、私の方で受付ますよ。特に刃こぼれとか焼かれてたりとかしてなければ、定価でできると思いますし。」

「おお、それは助かる。」

とジークハルトと一緒に装備品修理カウンターへと入る。



バール爺は、もともとクワッツの武器を専門とする鍛冶職人で、職人街に自分の工房を持っているのだが、数年前に体を壊し、引退した。その工房は、今彼の息子が跡を継いでいる。


もう歳である事に加え、治ったとは言え体を壊したので、元の鍛冶職人がするようなハードワークは無理だった。かと言って、完全に引退するには、体力が余っているし、ついでに、暇も持て余していた。それに、かわいい孫娘にもオヤツを買ってあげたい!という事で、もともと懇意にしていたギルドマスターの紹介で、今、ギルド内の装備品修繕サービスでせっせと働いている。

とても頑固だが、腕利きの職人で、引退した今でも固定客がいる。

ジークハルトもその一人である。


「そしたら、ここにいつものように必要事項を記入してください。」

「あ、ああ。」


隣でやんややんややっている中、ライガは淡々と受付を進める。


「ーと。これで良いか?」

「ありがとうございます。出来上がりは、俺の方でも確認しておきますが、すれ違いになると申し訳ないので、後でバール爺に確認しに来てもらう事は、お願いできますか?」

「ああ、その位なら問題ない。」

「ありがとうございます。それでは、短剣一本承ります。

お代は、えっと20パクロになります。ギルドカードからのお支払いで良いですか?」

「ああ、頼む。」


ギルドカードはレベル表示や身分証明書になっているが、実はデビットカードの役割のような機能を兼ね備えている。冒険者ギルド関連施設でしか使えないのだが残念だが、冒険者ギルドであれば、どこの都市でも取引可能だ。


これは、冒険者ギルドが組合員用の銀行業を運営しているからで、ここ最近の魔道具の中では、一番の発明だとライガは思っている。


これで、他の一般商店と連携が取れれば、もっと便利で、それこそ街も発展できると思うのだが、ギルドを跨ぐとなると、どうも上手くいかないらしい。


もっとギルマスに頑張ってもらわないとな。




ジークハルトに頼まれた短剣の事務処理をカウンターの隅でこっそり行っていると、バール爺と喧嘩していた冒険者はプリプリ怒って出て行ってしまった。


普通の業務なら、ライガは仲裁に入るのだが、鍛冶などの専門職になると、ライガは手出しが出来ないので、よっぽどのことがない限り、介入することはない。


「すまんな。ライ坊。」


「いえいえ。これ、ジークさんの短剣です。“研ぎ”お願いできますか?

 刃こぼれもないので、通常のコースで、勝手に決めちゃったんですけど。」


「いや、構わん。

お前さんが、そう思うのなら、確かだろう。」


「ありがとうございます。

仕上がり日はわからなかったんで、後でジークさん、聞きに来ると思うので、対応お願い出来ますか?」


「ああ、構わん。あんまり立て込んでねぇから、明日のお昼前には仕上がってるだろうよ。」


「了解です。よろしくお願いいたします。」



「ところで、バール爺もお元気ですね。お客さんとやりあうなんて。

いったい、どうしたんですか?」


「ああ、あれか。

昔、儂が作ったと思われる剣を持ってきて、“銘”が入っていないから、入れろ。とな。

確かに、昔、儂が作った物に似てはいたが、アレはワシが作ったものではない。

それに例え、儂が作ったとしても、銘が入ってないってことは、出来損ないじゃろ。そんなもん、改めて銘なぞ、入れられるかい!鑑定する価値もないわ。」


「武器を大切にしている冒険者なら、わかりそうですけどね。

変わってますね。そのお客さん。」


「そうじゃろ、そうじゃろ。

 まあ、そこまでの腕って事だろな。

 ところで、ライ坊。

 良かったら、お茶でも飲んでいくかい?」


「いえ、お言葉に甘えたいのは、山々ですが、他に仕事を貯め込んでいるんで、今回は。また、是非誘ってください。」


「ああ、もちろんだとも。」

と言いつつ、バール爺は少ししょんぼりしていたような気がした。


だがしかし、バール爺は話始めると、とにかく長い。

彼に付き合っていたら、間違いなく溜め込んでいる仕事が終わりそうにない。

その為、ライガは、気がつかないフリをして戻ったのだった。



当初の予定でどおり、クエストカウンターに行こうとしたが、良い時間だったので、食堂に行って何かつまむものを買う事にした。


今日は何があるかと、ショーケースを除くとローストブルサンドがラスト1個だったので、それを頼もうとしたら、2つ前に並んでいた冒険者に取られてしまったので、泣く泣く採れたて野菜サンドにすることにした。

決してライガは、野菜嫌いではないし、食堂で作る野菜サンドは、色々工夫していて美味しいのだが、やはり野菜しか入っていないサンドより、多少なりとも肉が入っている物を食べたかった。


サンドイッチとフレーバーコーヒーを持ってクエストカウンターへ行くと、ミシカに話しかけられる。


「お疲れ!ライガ。」


「ああ、お疲れ。」


「この前の3人組、さっそく来たわよ。」


「この前の3人組って?」


「ほら、ライガが登録説明してくれた勇者希望の少年冒険者!」

「ああ、あの3人組。」


「すごいわね。ライガの感、当たったわよ!あの子達、ワイバーン討伐の依頼の紙持ってきたわ!」


「は?何でだよ!

ワイバーンって銀印のパーティでも、結構骨折れるのに。」


「いやー、私もびっくりしちゃったわよ。

まあ、もちろん却下したけど。」


まあ、デビューしてないし、背伸びしてノリでやっちゃうお年頃ってのはわかるけど、レベル的にも装備的に見てもどう考えたって、完全に無理だろ。


「ぐずらなかった?」


「ちょうどね、マーサさんが受付担当だったから、上手く薬草採取に誘導してたわ。」


「おー!さすが!

依頼表には、適正レベルが記載してあるけど、あれかな。レベル別一覧表みたいなの作って張っておくべき?」


「フフッ。またライガの仕事増えちゃうわね。」


「いや、そこはギルド...せめてクエスト部一丸となって頑張りましょうよ!」


まあ、あの3人組みたいなタイプは、せっかく作って掲示しても気がつかず、気がついても気にせず、突き進みそうだけど。

それよりは、研修内容を充実させるべきか?

研修は有料だから、参加しない奴は、参加しないか。

しかも、無料にしたからと言って、来るとは限らない。

自信を過信している奴ほど来ないんだよな...

新人は、強制的に参加させるような方針にした方が良いかな。


それでも、聞いてない奴は、聞いてないか。

いや、それだと最初の問題解決にならないな。

これは、一回マーサさんや研修部と相談した方が良いかも。


とまた、何か首を突っ込もうとしているライガにミシカは、苦笑いをしている。


「そういえば、売店のマリー婆。ライガの事、探してたわよ。」


「あーそうだった。頼んでたんだ。

パパっと食べて、行ってくるよ。」


「よろしくー!」


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