64_ダンジョン近く異常あり!_1
ライガも少し遅れて立ったものの、件の場所に着いた時は、お嬢とミノタと、ほぼ同時だった。
「お嬢...これは...。」というミノタの問いに
「うむ。」とだけ答えるお嬢。
そこには、周りの木々と比べてもはるかに上にも横にも大きい、そして目鼻がはっきりとわかる木が、のそのそとゆっくり歩いていた。よくその周りを見てみると、その木の根っこと思われる物も一緒に移動しており、その先に、まるで栄養を搾り取られたような干からびた様子の魔獣がいくつもくっ付いていたのだった。中には、冒険者だった者もいるのではないかと思うと、ブルッと震える。
そして、レイチェルの同じパーティー冒険者達が、その木に向かって、何度となく剣を振りかぶっているが、あまり効果があったようには見えなかった。
先ほどレイチェル達を呼びに来ていたガブリエリは、端っこの方で、倒れており、ピクリとも動いていないが、先ほど彼らの魔法師が駆け寄り、回復魔法をかけているのが横目で見えたので、一安心する。
リーダーであるシスモンドは、他の冒険者仲間が木の枝に振り払われるの見て、もう一度自分も木に向かって人一倍大きい剣を振り下ろした。トレントにとっても、いくらか効果があったらしく、「ぐうぉぉぉ~」と言う叫び声が上げたが、致命傷にはならなかったようで、やはり木の枝に振り払われてしまった。
だが、そこは名うてのパーティーのリーダーを張るような冒険者。振り払われ、少し飛ばされたが、上手く受け身を取る事が出来たようで、直ぐに体制を立て直し、再度トレントに向かっていった。
そして、レイチェルもシスモンドに続いて剣を振り上げ、トレントに向かっていったが、枝に振り払われ、シスモンドよりも激しく飛ばされる。
「あぶない!」
急いで、ライガは、レイチェルが地面に叩きつけられる前に、何とか体を滑り込ませ、彼女をキャッチする。
「くっ」
「ぐっ」
「大丈夫ですか!?」
「え、ええ。ありがとう。助かったわ!」
そう言うと彼女は、頭を振り、再び、トレントへと向かっていった。
その様子を見ながらライガは、このまま自分も助太刀に入るべきかどうか考えていた。
でも、このまま長剣振り回しても、余り効果がないよな。
どうしたら...
それにしても、冒険者達が振りかぶる度に、振り払っている”枝”が邪魔だ。
まずは、それを何とかしないと...。
「お嬢、失礼ですが、ミノタさんってお強いですよね?」
「もちろんじゃ!」
「クインビー採取できる位ですもんね。」
と言うと若干お嬢の目が彷徨ったが、それはほんと僅かだった為、ライガは気がつかなかった。
「私、ちょっと必要な物と人を集めてくるので、それまで何とか耐えられたりとかします?」
「ミノタ、お前、行けるな?」
「問題ありません。」
「お嬢は危ないので、私とダンジョン入り口まで一緒に行きましょう。」
「いや、問題ない。我はここに残って、戦いの推移を見ておるぞ。」
「お嬢!」
「お嬢、ここはライガさんの言う通りに。」
「むう。相分かった。」と不満そうに口を尖らせながら言った。
それを聞いたミノタは、「お嬢を頼みます。」と言って、背中に背負っていた大きな斧を自分の手に装備して、トレントに向かっていった。
ライガはそれを見届けると、今戦っている冒険者達にバフ掛けをし、お嬢を抱え、元来た道を走って戻っていった。
ライガのバフ掛けを見たお嬢が「なんと!」と呟いたが、激しい戦闘の音でそれはかき消されていったのだった。




