61_剣術は一日にしてならず_後編
翌朝、
ライガは冒険者ギルドの前で待っていると、二の刻の鐘がなる直前に、少年三人組がやって来た。
ちょっと眠そうな顔をしていたが、まあ、ご愛嬌だろう。
「「「おはようございます。」」」
「おはようございます。眠そうですね。」
「いや、剣術を教えてもらえるかと思うと、興奮して、夕べ寝れなくて。」
と恥ずかしそうにロキは言った。パナもラリーも恥ずかしそうにしているため、同様の理由らしい。
「そうですか。まあ、そう言っていただけると、こちらもうれしい気もしますが、体調管理も冒険者に必要な要素なので、気を付けてくださいね。」
「お、おう。」
「それでは、このまま、ダンジョンに向かいましょうか。」
「「「はい!」」」
「そういえば、今日は、ヴェルデは一緒じゃないのか?」
「ヴェルデですか?一緒にいますよ。この腰袋の中です。今日は、いつもより早かったので、一度起きましたが、また寝てしまいました。」
「へぇ~。」
と会話をしながら、北門へと向かう。
北門に着くと、夜勤明けのダリオに揶揄われながら、門をくぐる。
昨日の今日なので、フェルナンドの情報に更新はなかった。
「さて、皆さん。北門をくぐった所ですが、もうダンジョンの場所までの道筋はお分かりですね。それでは、ダンジョンまで走って競争です!はい、よーい、ドン!」
「は?」
「え?」
「ちょっ」
と三人があっけに取られている間、ライガは既に走り始めていた。
「「「ライガさん、急にずるい!」」」
ちなみに、一列に並び走っている様を見たダリオは、カルーの親子の様だなと思ったのだった。
「はぁ、はぁ、ハァ...。」
「はぁ、はぁ。」
「おっ、ようやく到着しましたね。」
「な、なんで急に...走り...はじめるんだ...よ。」
「さあ、何ででしょう?気分ですかね?」
「「はぁ?」」
「さて、パナさんも到着した事ですし、時間ももったいないですからね。次に進めましょうか。」
「ぉ、ぉぅ。」
「では、まずは、先日剣術1を無事卒業されたという事ですので、そこで習った型を見せてもらいましょうかね。ああ、三人同時で構いませんよ。」
と言うと、三人は返事をし、思い思いに型を披露していったのだった。
剣術1で習う方は、主に三つ。どれも、基礎中の基礎だが、これが出来ていないと、次に進めない。
三人の様子を見ると、ぎこちないがまあ、出来ているというべきか。
まあ、最終試験に合格してるから、出来ているべきなのだが。
だがしかし、師が離れると、だんだん自己流になってしまうのが、世の倣いで、御多分に漏れずロキ達も、やはり少しずつ崩れてきていた。
なるほど...。
三つの型を披露し終えた所で、ライガは声をかける。
「はい。ありがとうございます。」
「ど、どうだ、俺たち?見込みあるか!ライガさん!」
「見込みですか...?そうですね。とりあえず、皆さんの型は出来てますが、やはり崩れてきてますので、もう一度基本に戻るのが良いかと。と、いう事で、型を意識して素振りをこれから、200セット行ってください。はいっ、はじめ!」
「「「へ?」」」
「ダンジョンには潜らないのかよぉ~。」
という声をするっと無視して、ライガは彼らに素振りを強制したのだった。
「はい、ロキさん!肘が曲がってます!」
「はいっ!」
「パナさんは、足の踏み込みが足りない!」
「はいっ!」
「ラリーさん!左腕をもう少し上げて!」
「はいっ!」
という感じで、ライガはそれぞれにアドバイスをしながら、200セットを終了した頃には、彼らはぐったりしていたのだった。
「はい。時間になりましたし、これにて私の講義は終了です。」
「「「あ、ありがとうございましたぁ...。」」」
さてと、とライガは現在の現場であるダンジョンに向かおうとした所
「ら、ライガさん!」
「はい。何でしょう?」
「あ、明日も今日と同じ時間に集合でいいのか?」
「は?明日もですか?」
「ああ!」
おい!マジかよ!毎日は、さすがに俺も嫌だぞ。
どうするかな...。
「では、一週間後でどうでしょう。」
「ああ、それでいい。」
いや、何ちょっと、なんで不満そうなの!
「ああ、その間、毎日ダンジョンまでの“往復”を走りこむ事と、型の素振り200セット...いや300セットしていてくださいね。」
これ位なら、クエストこなすのに邪魔にならないだろう。
「へ?」
「もし、次回、ちゃんと型が出来ていなければ、もう二度と教えませんので、お気をつけください。はい、では解散!」
「「「はいぃぃっ!」」」
まあ、こんなもんだろう。
さて、ダンジョンに潜るかな。
「よう、おはようさん。」
「おはようございます。アウグストさん。」
「朝から、精が出るのぉ。」
「見てたんですか?」
「そりゃあ、目の前でやってれば、嫌でも見るわい。」
「そりゃあ、そうですね。」
「珍しいのぉ、お主が剣術指導なんぞ。」
「まあ、成り行きで。」
「あやつらも、ラッキーよのう!お前さんに直接教えてもらえるなんぞ。」
「いやいや、私なぞ大した事ありませんよ。」
「ふん、よう言うわ。」
「時間になりましたので、私は、これからダンジョンに潜りますね。」
「ふむ。気を付けての。」
「はい。」
とライガは、やや無理やり会話を終了させ、ダンジョンへと潜ったのだった。




