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42_幼獣と配置転換_1

その足でライガはジャコポに紹介された宝石加工の工房を訪ねた。


ライガが訪れた宝石加工の工房は、職人街の隅にあった。

先日マリオと一緒に訪れたマッシモの工房に比べるとずいぶん小さかったが、宝石加工の工房なだけあって、洗練された店づくりだった。


まあ、あそこは大型魔獣解体用とか作る工房だしな。

宝石加工だったら、この位小さくてもなんの問題もないわな。


様々な形の色ガラスが嵌め込まれたウォールナットの扉を開けて店の中へと入る。


「いらっしゃいませ。」

と店員と思われる若い男が声を掛ける。


「こんにちは。本日はどのような物をお探しでいらっしゃいますか?」

「えーっと、この宝石二つをペンダントにしたいのですが。」

とさっきスヴェトラーナに鑑定してもらったアクアマリンとアイオライトを出す。


「かしこまりました。ほぅ、加護付きですね。しかも、とても優しい気だ。何かご希望のデザインなどございますか?」

その男は宝石を扱っているせいか、通常の職人街の住人とは違うとても丁寧な対応だった。


「そうですね...。」と言いつつ、ライガは、レイチェルの言っていた“正しい道へ導く”という言葉を思い出していた。

「羅針盤をイメージできるようなデザインだと嬉しいのですが、重たくなってしまいますかね。」

「デザインの工夫次第で大丈夫かと思いますよ。男性用、女性用どちらになさいますか?」

「男性用で。」

「承知しました。デザインと材料によって費用が変わってきますので、後日、デザインを確認にいらした時に、料金のご提示をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。」

「問題ありません。」

「ありがとうございます。それでは、三日後以降にまたお越しください。」



あれ?

結構、普通の人だったよね。

ジャコポさん“癖”があるって言ってたけど、彼はただの店番で、オーナーか職人はまた別の人なのだろうか...

と思いながら、その日はヴェルデと共に家路についた。






翌日の朝一、ライガはゴブリンの返り血を浴びた為、クリーニングカウンターに預けていた服を受け取りに行った。


冒険者ギルド内のクリーニングカウンターは、宿泊者向けの基本的な洗濯の他、一般的なクリーニングだけでなく、他店では断られるであろう魔獣の返り血やその他の体液が染みついてしまった服まで、綺麗に洗ってもらえるギルド自慢の冒険者にうれしいクリーニング店である。


魔獣の血液を含めた体液は、その魔獣の種類によって千差万別で、臭いが酷かったり、しみの色が取れにくかったり、こびりついて中々落ちなかったりと、多種多様で自分ではなかなか落とすのは難しく、また服自体も値段が高いこの国では、普通のクリーニング店に比べ、料金が高いとはいえ、うれしいサービスである。


スライムなんかうっかり踏んづけて、こびりつかせているのに気づかず、そのままにした場合、剥がすのはとても大変で、無理やり剥がそうとするものならば、生地は破くし、上手くはがしても色落ちして斑になったりと、結果使い物にならなくなる。なので、この前のスライム事件の後は、大変な特需がこのクリーニングカウンターにもたらされ、うれしい悲鳴を上げていた。


「イラリアさん。おはようございます。」

「おはよう、ライガ君。」

「エリオさんも、おはようございます。」

とライガは奥で作業をしているイラリアの夫でもあるエリオにも挨拶をする。


単純な洗濯は、基本専用魔道具を使用し、特殊な作業はエリオが一つ一つ手で行っている。


ちなみに、今エリオは、朝一で洗った服を、魔石と熱石を入れた重たい熨斗でせっせと皺を伸ばす作業をしている。皺を伸ばすだけなら熱石だけでも充分なのだが、魔石を加えることにより魔力を多少付与するらしく、仕上がりがより綺麗になり、なおかつ、“耐性”が少し向上するらしい。”魔石仕上げ“として追加料金は発生するが...。


「イラリアさん。俺のって、もう出来上がってますかね。」

「うん。出来上がってたはずよ。ちょっと待っててね。」

と言って仕上がり品を置いてある棚を探す。


「はい!これ!経費扱いで良かったのよね?」

「ええ。」


ちなみに、今回は職務中に起きた出来事の為、クリーニング費はもちろん経費で落とせる。


「じゃあ、ここに受け取りのサインをお願い。」

「ちなみに、これって普通の魔獣の体液の落とし方で落ちました?」

「どうだったかしら?あんたぁ、どうだったか覚えてる?」

「あぁ?そうだな。むしろ、薄かったからから、結構簡単に落ちたと思ったが。」

「へえ。そうですか。」


“もと”よりだいぶ急激に大きくなったから体液は薄まった?

でも、皮とか強化されてたんだよな。

外側に魔力を使ったから、体液まで回らなかったのかな...。

わかんねぇな。


「そういえば、イラリアさん。予定日っていつでしたっけ?」

「あと三か月くらいよ。」

「だいぶお腹大きくなりましたね。」

「足の爪切るのも中々大変よ!」

「つらくなったら、ちゃんと休んでくださいよ。」

「ふふ、ありがとう。」

エリオとイラリアは夫婦で、イラリアは今妊娠中である。

大恋愛の末、結婚したらしい。その辺りの話は、ミシカやマーサ当たりが良く知っていそうだが、ライガはあまり良く知らない。


「そういえば、何か飼い始めたってきいたけど。」

「ああ。そうですね。ちょっとアクシデントがありまして。」

「へえ。その子は今、連れて来てないの?」

「バックオフィスにいますよ。嫌がる人もいるかと思いますので。」

「なるほど。今度店に連れてきてよ!ウチは二人とも大丈夫だから!」

「はい。よろこんで。」



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