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29_幽霊退治_8

久しぶりの肉体労働のおかげか、

それとも夢見が良かったせいか、

ライガは翌朝すっきり目が覚めたのだった。


そして、ギルマスの所にミシカといっしょに昨日の討伐報告を朝一で行う。


「以上が報告になります。後日、ロックウェル隊長からも報告がくると思いますが。」

「うむ。ご苦労さん。話を聞く限り、結構大変だったな。お前のあの長剣二つともボロボロなんだろ?」

「ええ。なんとも“数”が凄まじかったので。で、どうしましょう。ポートレートとペンダント。」

「ポートレートは、ほっといても良いだろう。もう今更誰も気づくまい。多分、あの屋敷に次に人が入れば捨てられていただろうよ。であれば、必要としている人の手に渡ったほうが、良いだろう。ペンダントは、ゴーストからのドロップ品ってことで、処理してかまわんだろう。」

「「ありがとうございます。」」


「ギルマス、それとミシカと私の昨日の残業代お願いします。」

「ん?ミシカはともかく、ライガ、お前の残業代は...。」

「私は、まだ管理職ではないので。」

「あれ、そうだったか。」

「とぼけないで下さい。そこはケチる所ではありません!それと、使い物にならなくなった長剣、ミシカのと合わせて4本、追加請求可能ですよね?」

「お、おう。問題ないだろ。教会が請求してた金額に比べれば、全然安い!武器代追加したところで、うちには充分利益が出るから安心しろ!」


えっ、教会、いったいいくら請求したんだ!?


「ん?どうした?変な顔して。そんだけ何度が高い案件ってことだろう。いや~うちには、腕利きの職員が居て助かるよ。」

とニシシと悪い顔をしているギルマス。


この様子を見る限り、教会の費用までいかないが、ギリギリの線を狙って費用を絞り取るに違いない。まったく食えないオヤジだ。いや、ギルドを運営する長としては、正しいのか?


そして、後で、関係各所に龍の牙購入には注意すべきかライガは真剣に考えていた。

というのも、前回のスライム討伐のボーナスで購入を画策していたギルマス。奥さんにバレて、結局購入できなかったらしい。考えたくないが、今回のギルドの臨時収入にかこつけて、経費購入するのではないかと、ひやひやしている。


注意を促すとしたら、経理、財務、あとは購買か...。

念のため、マリー婆にも言っとくかな。


「よし、この件は、これにて一件落着!おつかれさん!あっそれと明後日の棚卸よろしく頼むぞ。」

「承知しました。」

「今年はすんなり終わりそうか?」

「そうですね。四年目になれば、各部署慣れてきたかと。スライム事件もありましたし、各部修繕工事を機に、ある程度整理してたみたいですし。ただ、食堂は、ジェイクさんが今年初めてなので、注意は必要かと。」

「あそこは、下にペーター達がいるから大丈夫だろ。」

「まあ、備品の数を数えるってだけなら、あまり問題はいと思うのですが、前任者が前任者だったので...。」

「ああ...。」

「ジェイクさんにも前出ししてあるのですが、棚卸の後、業者選定の見直しを一度、最初からした方が良いかと。」

「そうだな。」



棚卸。

通常は商品在庫の現物数量を数え、帳簿の数と照らし合わせて合っているか確認する作業なので、冒険者ギルドで言えば、主にマリー婆のいる売店が対象となるのだが、ここ冒険者ギルドでは一斉に各部署の備品の個数並びに、状態確認を一緒に行っている。この日は緊急クエスト以外の依頼は受け付けず、ギルドは、臨時休館となる。


「割り振り等の詳細は、明日の会議で発表だ。よし、戻っていいぞ!お疲れさん!」




「ねえ、ライガはそのペンダント、結局どうするの?」

ギルマスの部屋を出て、ミシカと二人廊下を歩いていると、ミシカが話かけてきた。


「何か良い石そうだし、二つ一緒に加工してみようかと思ってる。」

「そう、良かった。」

「?」

「いや、なんかさ。売ったりとかして、そのブローチとペンダントがバラバラになるの嫌だなと思って。」

「ああ、そうだな。ちなみに、ミシカはどっか知ってる?加工の上手い工房。」

「う~ん、知らないわ。バール爺とかマリー婆当たりなら知ってるんじゃないかしら?でも、あの二人は武器しか目に入ってないか。」

「はは。そうかもね。まあ、適当に当たって見るよ。その前に鑑定してみるか。」


二人はクエストカウンターへ戻り、ミシカは朝一番、冒険者でごったがいしているカウンター業務へと向かい、ライガは、逆に午前中は余裕のあるバックオフィスにいる鑑定士に声をかけた。


「ジャコポさん、ジャコポさん!ちょっと鑑定してもらいたいがある品があるんですけど、お願いできますか?」

「おや、ライガ君。珍しいね。私に頼るなんて。君だって出来るでしょ?鑑定。」

とやや中年の口髭を生やした、ちょっとお腹の周りがきつそうな男が答える。


「私のは、簡易鑑定なんで。ジャコポさんほど詳しいのは無理ですよ。」

「そう言ってくれると嬉しいね。ほら、見せてごらん。」

「これなんですが...」

とライガはアクアマリンのブローチとアイオライトのペンダントを机の上に乗せる。

「ほほう。」

と言いながら、ジャコポはモノクルルーペを固めに近づけ、1つずつ丁寧に鑑定している。

「うん、両方とも文句なしの一級品だね。」

「何か“付いて”たりします?」

「ちょっとまってね。順番に確認していくから。う~んそうだね。アイオライトの方は少しだけど、“加護”が付いてるかな。もっと、詳しい“加護”の内容が知りたければ、魔女の店に行くのをおススメするよ。」

「なるほど。加護は特殊ですもんね。了解です。ちなみに、どこかこういう石を加工してくれる工房ってご存じですか?」

「おっ女性へのプレゼントかい?とうとうライガ君もそうい...」

「違います!自分用です。」

「お、おう。それはすまなかった。」とえらく落胆するジャコポ。

「いや、それはそれで、なんか...。」

「いや、多くは語るまいよ。だが、諦める事はない!私だって、愛しの妻に..」


「...。」


「コホン。さて、私が勧めるとしたら、コッリ工房だな”癖“のある石でもうまくその癖を利用してくれる腕利きの職人だ。まあ、店主の癖は強いが、ライガ君なら大丈夫だろう。」


「ありがとうございます。今度の休みにでも行ってみますね。」



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