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02_クワッツ冒険者ギルドの朝_後編

ギルドのエントランスは円柱型の広いスペースになっていて、その部分の2階は吹き抜けになっている。その円の縁にそうように奥半円に均等に太い柱があり、真ん中一本に今日の天気を記載している。ちなみに、そのエントランススペースの中央には、街の観光案内も兼ねた総合案内カウンターある。


「今日の天気は...午前中は晴れで、徐々に曇り出し、15の刻半からは、えーっと?一時雨っと。」


ライガは天気予報を書き終わり、その書いた字が今日は中々上手くかけたなと納得していると、ちょうど先ほど案内した男が帰る所だった。


「お客さん、お客さん」

「へ?あーさっきの。」

「ええ、どうでした?ご利用いただけそうですか?」

「ああ、今回利用させてもらう事にしたよ。」

「それは、良かった。

また何かございましたら、いつでもお声がけくださいね。」

「ああ、ありがとな。」

「いえいえ。」


男がペコリと頭を下げて、ギルドから出ていくのと、入れ違いに別の男が入ってきた。


「すみません、食材の納品で来たんですけど!」

「はいはい、今担当者呼んできますね~。」とライガは言うと、食堂で作業をしている女の子に声をかける。

「キャロルー!納品だってー!」

「はーい!ライガさーん。ごめんなさい。今手が離せなくて、代わりに受け取りお願いできますか?」

「了解!」


見ると、キャロルの前には7~8名の冒険者が並んでおり、朝食を配っているキャロルを待っていた。


まあ、お客(お金を落としてくれる人)が優先だよね。


ちなみに、ジークハルトはキャロルが見える席に既に陣取っており、さっそく朝食を食べていた。コーヒーも頼んでいるようだったが、給仕担当キャロルに良い所を見せたいジークは、フレーバーコーヒーを頼んでいるとライガは確信していた。


業者から食材と納品書を受け取り、チェックした後、食材は厨房へ、納品書はキャロルの元へと届けた。


「はい。キャロル、納品書。食材はいつもの所に置いてあるから。」

「ありがとうございます。助かりました!急に朝食の列が出来ちゃって。」

とテヘッと笑った。

ライガもつられて、テヘッと笑うと、急に背中にいくつもの冷たい視線が刺さったことに気がついた。


いけね。

みんなのアイドル、キャロルだった。

みんな心が狭いねー。

笑顔見れたんだから、ラッキーって思えば良いのに。


キャロルは今年16歳になったこの街出身の女の子で、今年からこのギルド内の食堂に働き始めた。メインは給仕としてお昼の時間帯に働いているが、シフトの関係で週に何回か、朝食の時間帯にも働いている。


昼食、夕食は専門の調理スタッフが居て、給仕係が食事を各テーブルまで運ぶスタイルをとっているが、朝は早い為、夜調理スタッフが仕込んだスープとパンを、朝、給仕スタッフが交代で来て、キッチンでよそって直接お客に渡しているセルフ方式をとっている。


普段、ウェイトレスのキャロルが手づからよそってくれるという事で、みんなのアイドルキャロルが早番の時は、いつもより朝食の売り上げが良いのだった。


みんな単純で良いね~。

まあ、単純って意味では、俺も大して変わらないか。


「そうそう、今日から限定フレーバーコーヒーが始まるから、お客さんに、“さりげなーく”おススメしてね。キャロルが勧めたら、みんな買ってくれるから!」

「みんな買ってくれるかしら?」

「うん、間違いないね!じゃあ、頼んだよ!」

「はい!」


代わり映えしないメニューだと飽きられてしまうから、たまにカンフル剤のように変わり種を入れて、注目してもらうってところが、一番の目的だ。


とはいえ、

コーヒー 一杯2パクロ

フレーバーコーヒー 一杯3パクロ

1,5割増し。

原価率が20%だがら、1杯辺り0,8パクロ売り上げが多い。

コーヒーって、量が結構出るから、この0.8パクロを侮れないし、売れるに越したことはない。


「あ、そういえば、ジェイクさんが、食材について相談したいって、昨日言ってましたよ!」

「了解。お昼過ぎにまた顔出すよ。」

「ありがとうございます。」


さてと、次は...

とエントランスホールを抜けて、クエストカウンターへ行こうとした所、


「おっ!丁度良い所に!ライガ君!」

「おや、これはこれはロックウェル隊長。珍しいですね。隊長自ら当ギルドまでお越しいただけるなんて。」


ここクワッツでは、街の治安を保つ為、街を4つに分け、それぞれに警邏隊を配備している。それぞれの隊のまとめ役として小隊長がいるが、ロックウェルはその四つの隊をまとめる隊長である。ちなみに、その他に、門番や、領主の館の警備等は、また別の隊が組織されている。


ブロンドの髪を少し長めに切りそろえ、オールバックに整えたナイスミドルな叔父様だ。王都生まれであるが、今から10年程前に赴任してきて以来、この街の安全を守っている。


「まあな。ギルドマスターは今お手すきかな?ちょっと相談したい事があってね。」

「多分、大丈夫だと思いますよ。

 今、確認してきますので、少々お待ちください。

 あ、そうそう!今日から食堂でフレーバーコーヒー限定販売しておりますので、良かったら、帰りにでもどうぞ!」

「はは、わかったよ。」


ライガは、フレーバーコーヒーを隊長にしっかり勧めた後、2階へと上がり、ギルドマスターの部屋をノックする。


「すみません、ギルマス。

 ロックウェル隊長が、ご相談に来ているのですが、お通ししても構わないでしょうか?」

「ロックウェルが来てるなんて、珍しいな。」

「ええ、珍しいですよね。大体うちに来る時は、来ても小隊長クラスなんですけど、何かあったんですかね。」


ロックウェル隊長をギルマスの部屋へと案内し、1階へ戻ってくると、朝食を終えたジークハルトに再び会った。


「ジークさん。フレーバーコーヒーどうでした?」

「お前、今日そればっかだな。」

と若干呆れ気味のジークハルト。

「まあ、うまかったんじゃねえの?俺は、どっちかっていうと、普通のコーヒーの方が好きだけどよ。」

「そうですか。お口に合わず残念。

 また、何か新メニュー出ましたら、ご案内しますね。」

「ああ。まあ、ほどほどにな。

 さて、そろそろちゃんと仕事探すかな。じゃあな。」


やはり、フレーバーコーヒーは女性向きだったかな。


その時だった。


「たのもー!」


という声が、エントランスホールに声が鳴り響いた。


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