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11_それは、お預かりできません!_後編

翌日、ギルマスの部屋でライガは、ギルマスとジェイクの三人で魔獣肉に関して話し合っていると、


ワーオン   ワーオン   ワーオンッ

と突然、異常を知らせる警報がなった。


冒険者ギルドには、魔道具を使い結界が各部屋に張ってあり、

制御装置がギルマスの部屋に取り付けてある。

三人とも即座に立ち、場所を確認する。



場所は...地下一階倉庫。

手荷物に何かよからぬ物が混ざってたか?



三人とも急いで階段を降りると、そこには何層にも重なった色とりどりのスライムが辺り一面に色がっていた。


「なんじゃ、こりゃぁ!」


近くにいた冒険者はもちろん、元冒険者もそうでない職員達も、総出で討伐していた。


勿論、バール爺もマリー婆も参戦しているし、

キャロルも右手にフライパン、左手にお盆を持って頑張っている。

ディオナ先生は...鞭を嬉々として打っている。近くにいる冒険者の顔がほんのり赤くなっている気がするが...うん、見なかった事にしよう。


イバンが持っているのは、大型魔獣解体用の斧だった。

それは、どう見てもオーバースペックだろうと思っていると、本人もそう思ったらしい、もう一度ライガが見た時は、もっと小さな武器に代わっていた。


ん?マリー婆が手に持っているレイピア...あれは確か...。

先週、売店で納品した一級品の奴...に良く似ている...とじっと見ていると

こっちに気がついたマリーはニカッと笑って、サムズアップしてきた。

一体何に対してのサムズアップなのか、深く考えると恐ろしいので、スライム討伐に集中することにした。


それにしても...コレ(スライム)、数多すぎじゃない?

しかも、良く見るとどんどん増殖しているし、

飛び跳ねているのもいるし、変な液を出しているのもいる。


剣と魔法、どっちを使おうかと、一瞬考えたライガだったが、丸腰だったことを思いだし、とりあえず魔法を使い、一匹ずつ始末していった。


あー何これ、めんどくさい!

一匹、一匹は簡単だけど、数多すぎ!

ギルド内で一気に火炎魔法ぶっぱなしたら...うん絶対怒られるな。


と考えながら、始末していると、階段の踊り場付近で声が聞こえた。


「う、うわ~、何だよこれ!なんだよ!」と叫んでいる少年冒険者三人組だった。

どうやら、講習中にアラートが鳴って、教室から出てきたらしい。


あーもう!


「スライムだ!透明な中に何か入っているだろ!

それがスライムの核だ。それめがけて、とにかく持っているナイフで刺せ!」


「で、出来ない...。」


「一匹、一匹全く強くない!勇者になるんだろ!しっかりしろ!」


「ぅぅ、ぅ、うわ~!」

勇者という言葉に触発されたのか、ロキはスライムの中に切り込んでいった。


残りの二人も同じように、ロキに続いて切り込んでいく。


うん、動きに無駄があり過ぎだけど、とりあえず、大丈夫だろう。

討伐していったスライムは、よくわからない液は出していたが、どれも毒やらなんやら“変な”モノはなかったし、問題ない!...はず。


数時間後、ようやく全てのスライムを退治し終わった。

単純作業過ぎて、ゲンナリだ。


ふと三人組を見ると、案の定げっそりしていた。


「良くやったな。おめでとう、初討伐!」

と声をかけると、


「はは、どうってことねえよ...。」

とぐったりしながら、ロキは言った。


いやー、強がっていて良いねー。と思いながら久しぶりの魔法の連発にライガも疲れていた。


その後、発端の場所である地下倉庫に入ったギルマスと担当職員が見たものは、中から食い破られていたお貴族様の荷物だった。中で何かのきっかけに荷物に入っていたスライムが増殖し始めたらしい。が、その原因は不明だった。


当のお貴族のお坊ちゃんは、全てが片付いた後に、のんびりとギルドに戻ってきた。


荷物の状態を聞くと、酷く青ざめていたが、「クラティス家の荷物と分っての所業か!」と頭で湯が沸かせるのではないかという位に怒っていた小太りの家臣を嗜めていた。


そして、お坊ちゃん側に非があるとわかると、とても素直に頭を下げていた。


なんでも彼らの荷物は一つ前に立ち寄った村で調達したもので、今回初めて一時預かりサービスを利用したそうで、ギルドに荷物を預ける際、動植物を預かれない事を知らなかったらしい。


あー、あの時、家来の人、適当に話聞いていたもんね。

と、ライガは、あの時の様子を思い出す。


ちなみに、一時預かり所の感知器に引っかからなかったのは、魔素を遮断する結界を幾重にも施していたから、らしい。「あれほど厳重に結界を張ったのに、逆に何でそんなに増殖したのだろう。」と頭をかしげていた。


討伐報奨金を含めた損害賠償金をギルドから後日請求すると伝えたら、快く受け入れたのだった。そして、残っていたスライムを瓶に入れて渡すと、とても感激していた。実は、貴族権限を振りかざした時に、証拠として残していたスライムをこちらの交渉の手札として持っていた物だったのだが、なんだか友好の印のようになってしまった。


聞けば、彼は冒険者と言いつつも、スライムの研究をしている学者が本業で、何でも偶然見つけたとても珍しいスライムを、今回の騒動で全滅していたと思っていた所に、自分の手元に戻ってきたので、とても嬉しかったという事らしい。


直ぐに、この街を出なければいけないというお貴族様は、賠償請求額が分かるまでこの街に滞在出来ない事に謝り、「クラティス家の名の元、必ず払うから」と担保として、家宝だと言うやたらと宝石がギラギラついている短剣を置いていくと申し出てくれたが、さすがにそんなもの預かれないと言って、引きつった顔をしたギルマスが、丁寧にお断りをしたのだった。


うん、そうだね。

うっかり無くしても、わずかな傷を付けても事だもんね。


その後は、何のアクシデントもなく、お貴族坊ちゃん達ご一行様はクワッツの街を旅立って行ったが、後日、こちらの請求額よりもはるかに多い金額をクワッツ冒険ギルドへと振り込まれた為、再び彼は、本人不在のままでも、ギルド内の話題を持ち切りにしたのだった。


ちなみに、そのお金を巡り、方々の部署による予算獲得合戦が繰り広げられたのは、また別の話。


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