バイバイ バス
さよならはきっと僕の傍にいて
黄色いバスはゆっくり走る
喋らない僕をのせて
さよならはずっと前からきっと傍にいて
さよならは隣にチョコンと座っていて
ときおり僕の脇腹をツンツンとつつく
僕はずっと知っていて
しらんぷりをして
でも最初から知っていて
さよならのことを知っていて
バスはずっと海岸線を走っていく
すぐ近くで岩に叩きつけられた波が
不細工なシャワーとなって
車窓に貼りつく
ぺちょんべちょん
さよならはずっとその窓に噛り付いて
時折こちらを振り返る
ちっちゃな体を揺すりながら
知らないそぶりの瞳で僕を見つめる
僕はなんだか怖くて
さよならが去っていくのを知っていて
しらんぷりで
気づかないふりをしていて
さよならは僕と手を繋いで
無邪気で
僕はその永遠がこわくなって
さよならの手を払いのけ
さよならが沈むのをほったらかして
さよならはとなりのシートで
静かな寝息をたて始める
バスはカタコトゆれている
穏やかな日差しの中
バスは揺れて
僕も揺れて
さよならが僕の肩にもたれかかる
安心しきったように瞳を閉じて
さよならはいつまでも僕の傍にいて
永遠のさよならが来るまで
ずっと傍にいて
永遠が終わるのを最初から知っていて
それでもさよならは
ずっときっと最初から傍にいて
銀色の波が車窓から溢れていて
キラキラとかがやく飛沫を
バスに降らせている