81.
ティアたちと合流するため、僕たちは元きた道を戻ることにした。
その道中――
ブモオオオオ!
「ッ⁉」
突如として瀕死のネオ・サイクロプスが現れる。
あのとき仕留め残った集団の残党だろう。慌ててシャルロッテを守るように飛び出そうとして僕だったが、
「先ほどは、随分と恥ずかしいところを見せてしまいましたからね」
シャルロッテはゆっくり呟きながら前に飛び出すと、
『セイント・プリズン!』
凛とした声で、そう魔法を発動した。
地面からまばゆい光の鎖が現れ、ネオ・サイクロプスに向かって押し寄せる。
詠唱の速さ。術の威力。シャルロッテの実力は、最初に出会ったときにも知ってのとおりだ。だけども目の前のモンスターは、全属性に完全耐性を持つ例外中の例外。音も無くかき消されると予想想像していたけれど、
「――なっ⁉」
シャルロッテの放った魔法は、モンスターを宙づりで拘束することに成功した。
光魔法は効かないんじゃないの⁉
「アレスさん、今です!」
「分かってる――『絶・一閃!』」
考えるのは後だ。
シャルロッテの呼びかけに僕はネオ・サイクロプスに向き直り、剣を一閃。モンスターは力を失ったように脱力し、あっさり光の粒子になって消えていった。
「どうですか、アレスさん!」
「驚いたよ! シャル、さっきの魔法は?」
「セイクリット・プリズン――いたって普通の聖女スキルの光魔法なんですが……。その、笑わないで聞いてくださいね?」
そこでシャルロッテは、少しだけ言い淀んだ。
「もちろんだよ」
「私の魔法、光魔法のはずなんですけど、光魔法じゃないみたいなんです」
シャルロッテが口にしたのは、そんな突拍子もない言葉。
――光魔法だけど、光魔法じゃない?
「どういうこと?」
「未来が見えなくなった頃からですかね? 私の使う魔法、なぜか光魔法の特性を示さなくなったんです。光が弱点のモンスターが相手だと、損した気がしてたんですよね」
そんなことある? というのが率直な感想だった。
すべての魔法には属性が定められており、それが変化するなどありえない。そう僕は思っているし、それは世界での共通認識だろう。
もしシャルロッテの魔法が、ある日を境に光の特性を示さなくなったというのなら、
「損した気がする、どころか――とんでもないことじゃない?」
「やっぱりそうですよね。どうなってるんだろうと思ってたんですが、未来が見えなくなったことに慌てて、全然考える暇もなくて……」
「え? 予知能力が使えなくなった日と、魔法の変化は同時だったの⁉」
「はい、不思議ですよね」
僕は、これまで起きたことを改めて振り返ってみた。
新スキル『アップデート』により、僕の攻撃はネオ・サイクロプスにダメージを与えられるようになった。完全属性耐性持ちの敵にダメージを与えられるようになったこと――その現象は、僕の使う攻撃の属性が変化したと考えられないだろうか?
属性が変化した攻撃だけが、ネオ・サイクロプスにダメージを与える。そう考えると、あの戦いで起きたことに辻褄が合うのだ。
シャルロッテの聖女スキルには、すでにアップデートと近い変化が起きている?
そんなことを考え込んでいると、
――――――――――
・スキル【聖女】のアップデートが異常終了しています
修復しますか?
――――――――――
僕の疑問に答えるように、脳内に声が響き渡った。






