71.
ニコニコ漫画にて連載中のコミカライズ版、チート・デバッガー 更新されています!
ぜひぜひお読み頂けると嬉しいです~!
王女様と同じ部屋というのはまずいよね。
そう思った僕は、部屋を三部屋取ることにした。パーティの女性陣と僕、加えてシャルロッテの部屋だ。
話し合いと護衛も兼ねて、僕たちはシャルロッテの部屋に集まっていた。
「わ~い、お兄ちゃん! まくら投げしよ!」
部屋につくなり、テンション高く言い出したのはリーシャである。
「リーシャ、今日は王女様も居るし……」
「枕投げ、ですか?」
さすがに王女様を、そんな遊びに巻き込むのは良くないだろう。
そんな予想に反して、シャルロッテはきょとんと目を瞬かせていたが、
「なんですか、それ?」
興味津々とばかりに身を乗り出して聞いてきた。
「こうして二陣営に分かれて、枕を投げ合うの! ぶつけられたらアウトで、先に相手を全滅させたら勝ちなんだよ!」
「なるほど、擬似戦争みたいなもんですね!」
……たぶん違うと思う。
「早速、やりましょう!」
「やった~!」
何やら気合の入ったシャルロッテと、大はしゃぎのリーシャ。ノリノリの二人に巻き込まれ、突如として枕投げ大会が開催されることになった。
***
「あれ、シャル? なんで杖の準備を?」
「え? とりあえず枕に、ありったけの支援魔法をかけようかなと。そういう競技ですよね?」
「ちがうよ⁉ 死人が出かねないから止めて⁉」
「部屋の壁にも強化魔法をかけて――よしっ!」
なぜか宿の壁に補強の支援魔法をかけ、シャルロッテは満足気な顔をした。
いやいや、なにも良くないんだけど⁉
どうやってシャルロッテを止めようか考えていると、ティアがこちらに歩いてきて、
「ふっふっふ、私たちのパーティの実力を見せつけるときね!」
「ティアもなんでそんなに好戦的なの⁉」
「望むところです! 今こそ聖女の力、お見せします!」
シャルロッテとティアは、なぜか視線でバチバチと火花を散らしていた。ティアはなぜかシャルロッテに対して対抗意識を燃やしているようだ。
「あ、あれぇ?」
今さらながらに、少しだけ様子がおかしいことに気がつくリーシャであったが、
「お覚悟!」
「甘いっ!」
――手遅れだった。
シャルロッテが光魔法を駆使して存分に強化して投げた枕を、ティアが氷の盾を生み出し冷静に撃ち落とす。勢いそのままにティアは、枕をシャルロッテに射出するが、シャルロッテて光の鎖を生み出し強引にそれをキャッチ。
部屋の中を、ぴゅんぴゅんと魔法と枕が飛び交っていた。
「う~ん……、どっちも頑張って~!」
やがてリーシャは、ヤケクソのようにそう叫ぶのだった。
突如として始まった枕投げ大会は、結局、二人が満足するまで続くのだった。
◆◇◆◇◆
気がつけば時刻は深夜。
枕投げ(という名の魔法合戦)に区切りがつき、ティアとシャルロッテはぐったりとベッドに横たわっている。
「殿下? そろそろ話していただけますか?」
僕はシャルロッテの隣に座り、そう声をかけた。
「ここではシャル、です」
「分かったよ、シャル」
唇を尖らせるシャルロッテに、僕は苦笑しつつそう返す。
「――シャルは、こんなところまで何しに来たの?」
「ねえ、アレスさん。もしアレスさんに会いに来たって言ったら、信じてくれますか?」
「冗談は止してください」
「残念。まるっきり冗談って訳でも無いんですけどね」
ぺろっと舌を出すシャルロッテを見て、
「ちょっと! アレスは私の婚約者なんだからね!(渡さないんだから!)」
ティアが、威嚇するように僕の腕にしがみついた。
「ちょっ、ティア⁉」
「むー。何よ?」
「くすくす、ほんとうに仲が良いのね」
戸惑う僕と拗ねたティアを見て、シャルロッテは楽しそうに笑った。
「でもアレスさんに会いに来たって言うのは、本当よ? 大災厄での活躍はやっぱり興味あるし、アレスさんなら――」
「どうして僕なんですか? 僕ぐらいの冒険者なら、他にいくらでも居ると思いますけど」
「謙遜も過ぎればただの嫌味よ」
シャルロッテは小さく呟く。
それからそっと人差し指に口を当て、こんなことを言った。
「アレスさんの戦いっぷりにも興味はあるけれど――一番気になるのは、大災厄を予言して見せた方法ね。いったい、どんなカラクリなの?」
きらきら輝くシャルロッテの瞳に覗いていたのは、強烈な好奇心だ。否、好奇心だけでなく、その瞳にはどこか切実な色も見え隠れしていた。
シャルロッテは、悪い人ではない。力になりたいとは思うけれど――”王女”という存在は、チート・デバッガーを知られたら困る相手筆頭である。国のため、とスキルを悪用されるような事態は何としても避けなければならない。
「別にカラクリも何も無いですよ。たまたまです」
「たまたま? それで納得しろと?」
はぐらかすような僕の言葉に、シャルロッテはぷくりと頬を膨らませてみせた。
彼女がこんなところまでやって来たのは、僕が大災害を予知した方法を探るためらしい。だけども困ったことに、僕は予知能力なんて持っていない。大災厄を知った事情を話すためには、どうしても僕のスキルについても触れる必要があるしなあ……。
口ごもる僕を見て、シャルロッテはこう続けた。
「私には見えなかった未来なの。聖女の予言が、王国の安全を大きく左右するのは知ってるでしょう? もし私の能力が不完全だったとしたら……、大問題なのよ。今は、少しでも手がかりが欲しいの。だから――お願い」
深々と頭を下げるシャルロッテ。
いつもはどこかふざけた様子のシャルロッテが、真摯な表情で僕に頼み込んでいた。






