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「そうかい。それなら残念だけど――ここで死んでもらうしかないね」


 本当に残念そうに言うアルバス。

 そうしてアルバスは、雰囲気を一変させた。



「すべてを虚無に返せ――『絶無領域!』」


 凛と声を張り上げるアルバス。


 アルバスを中心に、傍から見ても分かる真っ黒な空間が球状に広がっていく。

 その空間からは、この世のものとは思えない眼球がうごめき、こちらを覗いていた。

 これまで何度も相対したことがある世界を吞み込もうとするバグだ。

 アルバスは、完全にバグを従えていた。



「抗えるものなら抗ってみなよ!」


 この世のバグを圧縮したような禍々しい球体。

 みるみるサイズを増していき、ついには全長50メートルをゆうに超えた。

 辺りに漂っているバグを、1か所に集めているというのか。



「そんなもの! 『ビッグバン』」


 今、使える最大火力の魔法を解き放つ。

 アルバスに向けて放った火属性の最上位魔法は、あっさりと真っ黒な球体に吸い込まれて消滅した。


「今さら、そんな魔法。効くはずがないじゃないか」

「く、駄目か……。やっぱり、それはバグの塊。この世の法則の外側のものなんだね」


 それならば抗うすべは、デバッグコンソールを使うだけだ。


 だとしてもアルバスの能力は、あまりにも規格外だ。

 一方の僕は、まだまだスキルに発現したばかり。

 とてもではないが、能力を使いこなしているとは言い難い。


 あれほどに濃度を増したバグを、ほんとうにどうにか出来るのか?



「何を弱気になってるんだ。ティアだって、僕を信じて必死に戦ってるのに。……それなのに、僕が恐れていて、どうするっていうんだ!」


 格上のモンスターを相手に、ティアは一歩も引かずに今も戦っている。

 ティアに乞われてかけたバフは、まさしく捨て身の支援効果。

 見せつけられたのは、自分の力でドラゴンを倒して道を切り開くという意思。



「どうにか出来るかじゃない。どうにかするんだ――!」


 空を覆いつくさんばかりの黒球。

 その威圧感を前に、僕は自身を鼓舞する。



「向こうが心配かい? あのままじゃあ、あの子は死ぬよ。でも、そうだなあ。君が僕の仲間になるなら、君の仲間だけは生かしても――」


 視界の先で、必死にドラゴンと戦うティア。

 アルバスは尚も、そんなことを言う。


「お断りだよ」

「何だと?」


「僕たちを舐めるのも大概にしてよ? リーシャの願いを叶えるためにも、ティアの気持ちを尊重するためにも――僕は君を倒すよ」


 ティアを、リーシャを。

 大災厄を止めようと願っている気持ちを。

 馬鹿にするな――そう思った。



『デバッグコンソール!』


 そうして景色が変わっていく。

 この世界はすべて、文字で出来ていた。

 この世界はすべて、数字で出来ていた。



『null null null null null null 』

『null null null null null null 』

『null null null null null null 』

『null null null null null null 』

『null null null null null null 』



 目の前の黒球は、すべてを吞み込まんと蠢いていた。

 明らかな異物だ。


 バグとは自然現象のようなものだ。

 アルバスが、それに指向性を与えてしまった。

 今、バグは意思を持って、世界を滅ぼすために球体として形を持っている。


 デバッグコンソールで、一部を正常化することは出来る。

 それでも広がり続けるあれを、消し去ることは不可能だ。

 あれに抗うための必要なのは――



「『世界修復!』」

「今更なにをするつもりだ?」


 馬鹿にするように言うアルバス。


 バグが世界を殺すための力なら、その対になるのは世界を生かすための願い。

 それは世界を生み出した女神の願いそのものでもある。

 さらには歴代のデバッガーの願いそのものだ。



「お兄ちゃん!? 何それ!?」

「デバッグコンソールに意思を込めたんだ。世界を生かすために、そんな願いを具現化したものだ」


 僕が生み出したのは小さな白い球体。

 本来であれば、何も力を持たない祈りの残滓(ざんし)


 

「そんなもので、この力に抗うつもりかい?」

「どうだろうね?」


「ふん、それなら試そうじゃないか。僕が世界の滅びを願うつもりと、君が世界を生かしたいと思う気持ち。どちらが強いのか!」

「受けて立つよ!」


 そうして僕とアルバスは、互いに球体を解き放つ。

 純白の光と、禍々しい黒が互いを吞み込もうとぶつかり合った。

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