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「俺は、なんだってこんなところに居るんだ……?」
俺――ゴーマンは、見慣れぬ森の中で目を覚ました。
どうしてこんな場所に居るのか、徐々に記憶が蘇り――
「くそっ、アレスの野郎。よりにもよって、ズルで俺を倒しただと!?」
すべてを思い出した。
俺に怪しげな力を授けた胡散臭い少年。
その少年が言うには、アレスはズルをして、決闘で俺を倒したらしい。
「そうだよな。そうでも無ければ、超レアスキルを手にした俺が、あんなやつに負けるはずがねえ!」
あの日、俺はすべてを手に入れたのだ。
それまでの立場は、すべてひっくり返った。
ここからは俺を中心に、世界は回っていくのだ。
「俺はどうなったんだ? 何やらやばいものを、体内に取り込んだ気がするが……」
少年が渡してきた黒い球体。
見るからにやばい力を取り込み、俺は気絶した訳だが……
「なるほど、世界への干渉! こういうことか!」
頭に直接、膨大な情報が流れ込んできた。
それは俺のレアスキルを強制的に覚醒させる。
「極・神剣使い――こうすれば更なる力を引き出せる! 『虚空・天破!』」
俺がイメージしたのは、決闘の最後でアレスが放った神々しい一撃。
俺の声に応えて現れたのは、全てを吞み込まんとするドス黒いレーザー光。
武器から射出されたそれは禍々しい輝きを放ち、周囲の木々をなぎ払った。
「ふっはっは。圧倒的な力ではないか!」
アレスが見せてきた技とは、少し違うがそれでも良い。
「くっくっくっ。どこの誰だか知らないが、感謝するぜ! こいつは、素晴らしい力だ!」
いろいろな知識が、頭の中に流れ混んでくる。
この力を、どう扱うか。
何をすれば、世界を壊せるのか。
どうすればアレスを殺せるか。
超レアスキルを手にした俺は、選ばれし存在なのだ。
対等な条件で戦ったら、俺がアレスに負けるはずはない。
「アレスの野郎、よくも俺に恥をかかせやがったな。この力を手にした俺は、今度こそ負けねえ! 殺す、殺す! 絶対に殺してやるぞ!」
もしゴーマンを近くで見ているものが居れば、尋常でない様子に悲鳴を上げたことだろう。
目を血走らせ、ギョロリと目を動かす――正気を失っていることは、明らかだった。
そうしてゴーマンは歩き出す。
目指す場所は、闘技場。
自ら決闘を申し込み、こっぴどく負かされた場所だった。
「さーて、やっぱり暴走したか。バグを取り込んだ人間なんて、大半がそんなもんだよね? せいぜい楽しく踊ってくれよ?」
そんな様子を見ていたものが居た。
無邪気に笑う少年の名はアルバス。
ゴーマンに力を授けた張本人である。
「実の兄弟が殺し合う姿――大災厄イベントの始まりに相応しい。実に楽しみだね」
実のところ、大災厄の仕掛けはすべて終わっていたのだ。
後は、最後のトリガーさえあれば良い。
アルバス上機嫌に鼻歌を口ずさみながら、ティバレーの街に戻るのだった。






