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「な、何だよ。さっきの技は――?」
ゴーマンは僕が放った技を見て、震える声でそう言った。
「極・神剣使いのスキルだよ。ゴーマンだって、とっくに覚えてるよね?」
「はあ? 嘘をつくのも大概にしておけよ。なんでおまえが、極・神剣使いのスキルを使えるんだよ?」
僕は、黙って剣を向けた。
そこまでゴーマンに教える必要はない。
「滅多にないレアスキルだし、使える技を隠したいってのは分かるけど……」
「おまえはいったい、何を言っているんだ……? 極・神剣使いのスキルは、剣士や剣聖のスキルが使えるようになるスキルだろう?」
……え?
「スキルを授かった後に、師匠から教えを受けなかったの?」
「うるさい! 何で俺が、冒険者上がりの人間に教えを乞わねばならんのだ! 選ばれし者に、凡人の努力なぞ不要だ!」
ゴーマンはそう喚き散らす。
……普段から剣の稽古はサボっていたけど、それは極・神剣使いのスキルを手にしてからも変わらないのか。
「アレス、またそんな目で俺を見るのか! おまえが俺を見下すんじゃねえ! 俺は極・スキルを手にした選ばれし者なんだ。おまえは外れスキル持ちのゴミだ! それなのに、それなのに――!!」
ゴーマンは顔を真っ赤にして、何事かを叫ぶ。
1体1の対人戦において、心の冷静さを失ったら付け込まれるだけだ。
そんなことは師匠から、まっさきに習うはずなのに――
……最後まで、油断は禁物か。
この戦いには、ティアやリナリーの未来までかかっている。
僕は警戒を解かずに、『ユニットデータ閲覧』を使った。
――――――――――
【コード】ユニットデータ閲覧
名称:ゴーマン・アーヴィン(LV4)
HP:67/67
MP:14/14
▲基本情報▼
――――――――――
そこに映し出されたのは、そんなステータスだった。
……僕を追放した日から、ゴーマンは手にしたスキルを誇るだけで、何もしなかったのだろう。
だからスキルレベルは1のまま。
「俺がおまえに負けるわけがないんだ! くたばれえええ!」
ゴーマンが真っ直ぐに突っ込んできた。
「分かった、ゴーマン。決着を付けよう」
僕は向かってくるゴーマンに視線を向ける。
我を失っているのか、彼は剣士や剣聖の技すら使うことすらなかった。
武器に振り回されるように、手にした剣を僕に振り下ろしてくる――あまりに拙い一撃だった。
僕はそれに応えるように、剣を一閃。
激しく打ち上げて、ゴーマンの剣を天高く打ち上げる。
さらには――
「ゴーマン。極・神剣使いのスキルは、こんなことも出来るようになる。願わくば師匠と一緒に、その先の世界が見られることを願ってるよ――『虚空・天破!』」
僕が使うのはスキルレベルが10で新たに覚えた技だ。
新たに覚えたスキルは、剣先から自身の魔力を打ち出す遠距離攻撃――神々しい真っ白なレーザーが剣先から放たれた。
それは天にまで届かんかと言わんばかりの純白の光。
「な、何だよそれ?」
手にしていた剣が消滅したのを見て、呆然とゴーマンが呟いた。
戦いが始まったばかりの勢いはどこへやら、すっかり腰を抜かしていた。
「まだ続ける?」
「ま、参った!」
ゴーマンが怯えたように後ずさる。
「勝者、アレス・アーヴィン!」
そうして審判の宣言。
うおおおおお! と観客席で、大きなどよめきが起こった。
「な、何なんだあの技は!?」
「あれが神を殺した大技なのか!?」
「あれが剣技なんて信じられん。天を貫かんばかりの一撃、大魔術でもあれほどの威力は出せないぞ!?」
興奮さめやらぬ様子で、観戦席では観客が何やらささやき合っていた。
ときおり噂に聞く、期待の大型新人の冒険者――その実力は、噂にたがわぬもので、まるで底が見えないと。
そんなざわめきを余所に、僕はティアたちのもとに向かう。
「さすがアレスね! 絶対に勝つって、信じてたわ!」
「アレス様、格好良かったです!」
僕が姿を現すと、ティアたちがパッと笑みを浮かべて飛びついてきた。
「ありがとう。これであいつが強引な手に出ることは、もうないと思う」
決闘に至る成り行きは、この場に居る人達の間で、大々的に広がっている。
ゴーマンが自ら触れ回ったからだ。
「当ったり前よ! 次、何か言ってきたら、今度こそ凍らせてやるわ!」
「私も自衛のために、何か魔法を覚えないと……」
物騒なことを言う2人。
……冗談だよね?
そうしてゴーマンを相手にした決闘騒ぎは、幕を閉じたのだった。
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