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 リナリーと合流し、僕たちはそのまま冒険者ギルドでクエストを物色した。

  チート・デバッガーの力を使えば、別に何もしないでも生きていくことはできそうだが、それでは冒険者として腕を磨くことはできない。


「おや。アレスさんたちクエストを探しているのか?」

「はい。何かおすすめのクエストはありますか?」


 そう僕たちに声をかけてきたのはロレーヌさんたちだ。

 Bランク以上の引率をお願いするクエストは、「それ以上なにを学ぼうっていうんですか!?」と受付嬢に止められてしまった。

 それでもダンジョン探索に行ってからというもの、ロレーヌさんたちは共にクエストを受けよう、と事あるごとに僕たちを誘ってきた。



「ここにあるレッドトレント狂暴化の調査依頼とかどうだ? 調査クエストは『ヨシッ。異常なし!』で終わることも多いから、とても美味しいよ?」

「それは……大丈夫なんですか?」


「そんな目をしないでも……冗談だよ。真面目に調査して――いざとなれば倒しても良い。アレスさんたちの実力なら問題ないだろう。奴らの落とす素材は高く売れるし、クエストの報酬自体も割が良い。おすすめだと思うよ」

「分かりました。ありがとうございます! そのクエストにしてみます!」


「ところで、私たちも同行させて貰えるか?」

「ロレーヌさんたちが同行して下さるなら心強いです。是非ともお願いします!」


 ここで断るとものすごく悲しそうな顔をされる。

 そうして僕たちは、レッドトレント狂暴化の調査依頼を受注した。




◆◇◆◇◆


 レッドトレントはCランクのモンスターである。

 その形状は名前のとおり真っ赤な体躯をした動く大木といったところだが、何故かにょきりと両足を生やしており、自由自在に走り回るモンスターである。


「ねえ、ティア? レッドトレントって言ったら……たしか近くでくつろいでいても、襲ってこない温厚なモンスターのはずだよね?」


 僕は森を歩きながら、隣を歩くティアに聞く。


「ええ、そのはずだけど……。クエストによると、通りがかった行商人にも被害が出るほどに狂暴化している――不思議な話ね」

「う~ん。どうして狂暴化したんだろう?」


「分からないが、人間に害があるなら倒さないといけないだろう。それも冒険者の役割だしな」


 首をかしげる僕たちを余所に、ロレーヌさんは気合いを入れていた。

 人間に害をなす以上、それはもう倒すべき敵である――彼女の言うことは正しい。 



 モンスターの異常。

 それを聞いて連想したのは、やっぱり【バグ】のことだ。


「ねえ、リーシャ? これもバグが関係していると思う?」

「まだ何とも言えないよ。普段はおとなしくても、怒らせたら怖いってのはよくある話だよね?」


 ひそひそと僕たちは相談する。

 まだ森も浅く、相手は温厚なレッドトレント――完全に、油断していた。




「アレス様! 何か飛んできます!」

「え? ――ッ!?」



 突如として、鋭く響いたリナリーの悲鳴のような声。

 振り返ると、突如として先の尖った鋭い木の枝が飛んできていた。



『虚空・瞬天!』


 僕は反射的に剣を抜き、それを打ち返す。



「リナリー、良く分かったね!?」

「その……私のスキル【第六感】は、研ぎ澄ませれば探知魔法のように使うことも出来るんです。今までは何の役に立てませんでしたが、こんな形でお役に立てて良かったです!」


 リナリーのスキルは【第六感】、いわゆる勘が鋭くなるだけのスキルである。

 リナリーの実家であるローズ家では「そんな目に見えた効果のないスキルなんて、ゴミではないか!」と、外れスキル持ちだと馬鹿にされたと言う。

 たしかに貴族家の令嬢が手にして嬉しいスキルではないかもしれない。

 それでも冒険者としてなら、活躍の場は無限にあるはずだ。


「ありがとう、リナリー。まさか、本当にいきなりレッドトレントに襲われるなんて。警戒が足りなかったよ」

「なあ、アレスさん。かなり高度な探知スキルだよな――その子は?」


「元・アーヴィン家のメイドです。今はもう僕たちのパーティメンバーです」


 ロレーヌさんたちも、リナリーが見せた探知スキルを見て驚いていた。



「何がレッドトレントは温厚な生き物よ。バリバリに襲われてるじゃない!?」

 一方、襲い来るレッドトレントを前に、ティアが剣を抜いて応戦する。


「やっぱりおかしいよね。ちょっと調べてみる――『ユニットデータ閲覧!』」


――――――――――

【コード】ユニットデータ閲覧

名称:レッドトレント(LV16)

HP:168/168

MP:0/0

属性:弱→炎

状態異常→狂暴化

▲基本情報▼

――――――――――


 僕は、いつものように『ユニットデータ閲覧』を発動する。

 弱点は炎――ビッグバンが良く効きそうだ……って、あれ?



「ロレーヌさん。状態異常で『狂暴化』って聞いたことありますか?」

「狂暴化? 聞いたことがないな……」


 ロレーヌさんたちも武器を手に取り、レッドトレントに向き直った。

 すぐにでも戦いが始まりそうだ。


「すみません。ちょっとだけ時間を稼いでもらっても良いですか? 試したいことがあるんです!」

「わ、分かった!」


 倒すだけなら楽な相手ではあるが、これは調査依頼だ。

 出来ればレッドトレントが暴れている原因まで調べたい。


「ちょっとアレス、どうするつもり?」

「このモンスターが暴れてるのは、もしかすると状態異常が原因かもしれない――となれば――」



 僕はチート・デバッガーのコードを発動した。


「『状態異常の付け替え!』」

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