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リーシャと名前が被りすぎて非常にややこしいので、Bランクパーティのリーダーの名前を変更することにしました。
アリーシャさん→ロレーヌさん
朝のひと悶着から数時間後。
僕たちは再度、冒険者ギルドに向かっていた。
「ティア、誤解だって!」
「べっつに~。何も気にしてないし!」
ぷりぷりと怒りながら、そっぽを向くティア。
「あ、明らかに怒ってるじゃん?」
「だって、せっかく一緒に寝ることになったのに。アレスったら、あっさり寝落ちするし」
「え?」
「何でもないわよ!」
顔を真っ赤にして、慌てて首を振るティア。
怒っていないと言いながら、終始この調子であった。
一方、そんな僕たちをよそに、リーシャは街中を興味深そうにキョロキョロと見渡していた。
早朝の町中は、料理を売る屋台が並び、あちこちから良い匂いが漂っていた。
リーシャが、ふらふら~っと屋台に吸い寄せられていく。
「って、リーシャ! あんまり離れちゃ駄目よ?」
「は~い! ごめんなさい、お姉ちゃん」
ティアの声に、トコトコと戻ってくるリーシャ。
えへへと笑うリーシャの髪を、ティアがくしゃくしゃっと撫でた。
「というかアレス? 結局、この街のクエストを受けるの?」
「うん、そのつもり」
「この街を拠点にするつもりはないのよね?」
「いずれは旅立つつもりだけど、今はもっとスキルを成長させておきたいからね」
このまま魔界に向かうのは自殺行為だ。
スキルの成長というのは、なにもチート・デバッガーに限った話ではない。
僕は『スキル付け替え』で【極・神剣使い】のスキルを自分に付けていた。
――――――――――
【コード】スキル付け替え
※選択可能なスキルは以下の通りです。
→ 極・神剣使い(SKLV1) ※ 装備中
→ 極・精霊使い(SKLV1)
→ 極・装備技師(SKLV2)
→ ???(絶対権限13以上で解放)
――――――――――
スキルを手に入れても、使わないと宝の持ち腐れである。
【極・神剣使い】を手にした弟のゴーマンも、立派な領主になるため、日々スキルを成長させるべく修行に励んでいるはずだ。
僕も負けてはいられない。
「アレスのスキルは、まだ分からないことも多いしね。危険な場所に行く前に、出来る限り解明しておきたいところよね」
ティアは、納得したように頷いた。
そんなことを話しているうちに、僕たちは冒険者ギルドに到着した。
◆◇◆◇◆
「あ、アレスさん! また来て下さったんですね!」
冒険者ギルドの中に入ると、受付嬢が嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。
「はい、クエストを受けたいと思って」
「街には長く留まらないのかと思っていました。アレスさんのような冒険者が街に居ると思うと、心強いです。今日は、どのようなクエストをお探しですか?」
「成りたての冒険者が受けるような、初心者向けのクエストをお願いします」
僕は頭を下げた。
僕たちは、成りたてほやほやの駆け出しの冒険者だ。
幸いこの街は、冒険者に成る者も多く、新米冒険者を教育する体制も整っていると聞く。
まずは自分が出来ることを、少しずつ見極めていきたいと思ったのだ。
「え? アレスさん程の実力者が、初心者向けのクエストですか?」
「是非! 駄目ですか……?」
「駄目ということはないですが……」
受付嬢は少し困った様子で、棚からクエストが張られた板切れを持ってきた。
「こちらなんですが――アレスさんたちには簡単すぎるかと……」
受付嬢が持ってきた板切れには、様々なクエストが張られていた。
それらのクエストは、先輩の冒険者が講師としてつく新米冒険者育成のクエストのようだ。
「『C級冒険者以上の方がバッチリ引率! はじめてのダンジョン探索はこちら!』だって。少しだけお金かかるみたいだけど、これなんか良さそうじゃない?」
そして僕が目を付けたのは、ダンジョン探索のクエストだった。
「お兄ちゃん? だんじょんって、な~に?」
「洞窟とかの中とかに自然発生する、モンスターの巣のことですね。リーシャさんも一緒に行くんですか?」
「もちろん! 私もパーティーメンバーだもん!」
不思議そうな受付嬢に、リーシャはえっへんとそう答える。
「私もダンジョンには潜ったことがないわ。良い経験になりそうね」
「わたしも、わたしも! ダンジョン、見てみたい!」
ティアとリーシャの同意も得られたので、僕は改めて受付嬢に頼む。
「新米冒険者育成プランは、先輩の手が空いてるときにしか頼めないので、少しばかり時間がかかるかもしれません……」
申し訳なさそうに言う受付嬢。
しかし、どこからか話を聞きつけたのか、
「いいや、その引率係。是非とも俺たちにやらせてくれ!」
「あのアレスさんたちの戦いを、この目で見られるだって!? 是非とも私たちのパーティーで――!」
「あんたらはDランクやろ! 引率権持ってないだろ!」
「ぐはあ。そうだった……」
気が付けばギルドに居た冒険者たちが、僕たちの周りに集まっていた。
どうやらカオス・スパイダー討伐の件で、すっかり注目されているようだ。
そうして起こるのは、まさかの引率役の取り合い。
「あの、僕たちは、ただの新米冒険者です。見ても面白いことなんて無いですよ?」
戸惑ったように言う僕だったが、冒険者たちの勢いは止まらなかった。
ワイワイと言い合ういくつかのパーティーを観察する受付嬢だったが、
「今回はロレーヌさんたちのパーティーにお願いします」
そう言って、とあるパーティーを指さした。
そのパーティーには見覚えがあった。
先日、カオス・スパイダーの緊急クエストを本来なら受けるはずだったと、泣いて感謝してきたパーティだった。
「「「よろしくお願いします」」」
「私たちでどこまでやれるか分からないが、精一杯やらせてもらおう」
頭を下げる僕たちに、ロレーヌさんからやけに気合いの入った返事が返ってくる。
そうして僕たちは、ダンジョンの探索に向かうことになった。






