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 アーヴィン家を追い出された僕は、街の中をとぼとぼと歩いていた。

 道行く人々から向けられる視線も、心なしか冷たい気がした。

 僕が期待を裏切り外れスキルを授かった事は、すでに領内に広まっているらしい。


 とぼとぼ歩く僕の前に、ぶよぶよのゼリー状のモンスターの群れが現れた。

 スライム――愛嬌のある姿だが、これでも人を襲うこともある立派なモンスターである。


 僕は一気に距離を詰め、剣を取り出しスライムを一閃した。

 それだけでスライムは真っ二つにちぎれ、光の粒子となって消え去る。

 さらに遠くにいる相手にはファイアボールを放ち、一瞬で蒸発させた。


「ふう。こんなものかな?」


 授かったのが外れスキルでも、僕には師匠に教わった剣術があった。

 さらには、母上から教わった魔法もある。


 

「僕はもう夢を追いかけても良いのかもしれない」


 そう。僕には夢があった。

 口にするには馬鹿げた夢で、誰にも言えなかった夢だ。


「僕は見たいんだ。――師匠が口にした世界の果てを」


 僕の教育係として雇われた師匠は、凄腕の冒険者だった。

 父上の目を盗んで、世界各地を巡っていた頃の話をしてくれたのだ。



 この広い世界――その果て。


 誰も見た事がない世界に僕は憧れた。

 いずれは領主になるからと諦めていた幼き日の夢だ。

 それでも実家を追放された今なら、きっと夢を見ることも許されるだろう。



 僕たちが暮らす人間領は、魔界に囲まれるように存在していた。

 世界の果てを見るというのが、どれだけ無謀なことかは分かっている。

 それでも僕はワクワクしていた。


「まずは冒険者になろう。それから、それから――」


 ようやく自分がしたい夢のために、こうして行動できる日が来たのだ。

 冒険者ギルドがあるという隣町に向かって、僕は歩き始めた。




◆◇◆◇◆


 隣町に向かう道中。



「きゃああああああ!」


 辺りに女の子の悲鳴が響き渡った。


「冒険者は助け合いが基本だっけ。これから冒険者になろうとしてるのに、放ってはおけないよね?」


 僕は悲鳴の方向に駆けだした。

 そうして2人の少女が、モンスターに囲まれているところを発見する。


「ブラッド・ウルフか……。厄介だね」


 血に濡れたような毛皮を持つ狼型の凶悪なモンスターだ。

 単独であってもB級相当のモンスターだが、このように群れで現れたときは危険度は更に上がりA級相当にカテゴライズされる。

 群れ同士での連携もこなす非常に厄介なモンスターであった。


 ブラッド・ウルフは、魔界に接した地方にしか現れないと言われている。

 間違ってもこんな人里近くに現れる相手ではない。



「――というかティアじゃないか」


 背中に幼い少女を庇うように立っている少女は、よく見ると顔見知りであった。

 彼女の名はティア。

 剣の腕はピカイチで、氷の剣姫などという二つ名を持つ――僕の婚約者であった。



「ティア、助太刀するよ!」

「え!? アレス、どうしてここに?」


「説明は後でするよ。ティアはその子を守ってて?」


 まずは遠距離からファイア・ボールを放ち、モンスターの意識を僕に向ける。

 ブラッド・ウルフたちは、僕を脅威とみなしたようだった。


「遅い――『絶・一閃』!」


 警戒しながら襲い掛かってきたところを、剣を横凪に払って一閃。

 瞬く間にモンスターの群れを、光の粒子へと変えていく。


 さらに続くモンスターに向き合おうとしたところで、



――――――――――

バグ・モンスターを討伐しました。

絶対権限(プライオリティ)が2になりました。

―――――――――

 

 脳にそんな声が響き渡った。


 声に導かれるように。

 戦闘中にも関わらず、僕は使い方も分からないスキルを発動していた。




『チート・デバッガー!』


――――――――――

絶対権限プライオリティ:2

現在の権限で使用可能なコード一覧

 → アイテムの個数変更

   (▲やくそう▼)

 → 魔法取得(NEW)

   (ビッグバン)

――――――――――


 スキルの新しい効果だろうか。

 まさかこのボタンを押せば、魔法が習得できるとでも言うのか?

 でも「ビッグバン」は、母上ですら使うことができない(いにしえ)の時代の超高位魔法である。


 まさかと思いながら、僕は魔法取得のボタンをポチッと押した。



――――――――――

【コード】魔法取得「ビッグバン」

ビッグバンの魔法を習得しました。

――――――――――


 再び脳に響き渡るそんな声。

 そんなことあり得るはずがないと思いつつも、思わず試してみたくなるのが人情。


「『ビッグバン!』」


 ドッガーーーン!



 魔法が発動し、目の前で超巨大な爆発が発生した。

 巨大なクレーターが発生し、あれほど居たブラッド・ウルフの群れが跡形もなく消滅していた。



「は?」

「え?」


 現実味を欠いたウソのような光景。

 ティアは、ぽかーんとこちらを見ていた。

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