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「でも……私――お兄ちゃんに服、作ってほしいな?」
リーシャの上目遣いのお願い。
もしかすると、スキルを使えば服だって作れるのだろうか。
でも『アイテムの個数変更』は、今のところ回復アイテムしか作れない気がするけど……やれるだけやってみようか。
『チート・デバッガー!』
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絶対権限:8
現在の権限で使用可能な【コード】一覧
→ アイテムの個数変更
(▲エクスポーション▼)
→ 魔法取得
(▲ブラックホール▼)※習得中
→ ユニットデータ閲覧
→ バグ・サーチ
→ スキル付け替え(NEW)
(▲極・神剣使い▼)
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僕の絶対権限は3つ上がり、一気に8まで上がっていた。
新たに解放された機能は――スキル付け替え?
しかも『極・神剣使い』って、弟のゴーマンが手に入れた極・スキルだったような。
まあいいか。
僕は「▼」を押し、付けるスキルを選びに行く。
――――――――――
【コード】スキル付け替え
※選択可能なスキルは以下の通りです。
→ 極・神剣使い
→ 極・精霊使い
→ 極・装備技師
→ ???(絶対権限13以上で解放)
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「わくわく、わくわく!」
リーシャは、無邪気な笑みを浮かべていた。
まるで僕が失敗することなど、考えもしていないように。
否、先代の【チート・デバッガー】であるリーシャにしてみれば、服を生み出す程度、出来て当たり前なのかもしれない。
この中だとこれかな……?
僕はポチっと「極・装備技師」を選択した。
「え、ウソ? アレス、衣装なんて本当に作れるの?」
「頑張ってみる。『スキル付け替え』でスキルを取って【極・装備技師】のスキルも使えるようになったんだ」
装備技師。
それはモンスターの素材から、鍛冶レベルに応じた装備を生み出すスキルだ。
そのスキルを持つものは鍛冶師が天職とされる。
高レベルの装備技師は、王宮お抱えになったり、冒険者ギルドの傍に店を構えてひと財産築いたりと、様々な可能性を持つスキルだった。
僕は、さっそくリーシャの衣装作成に取り掛かる。
「リーシャ、どんな服が良い?」
「う~ん? お兄ちゃんに任せる!」
無垢な笑顔で、なんとも無茶ぶりをしてくるリーシャ。
この子に似合いそうな服か――
僕が真っ先に想像したのは、純白のワンピースだった。
初めて会ったときに感じたミステリアスさ。
そして今のふわふわっと無垢な表情。
その両方を兼ね備えた衣装――きっとリーシャに似合うだろう。
「モンスターが落としたドロップアイテムはいっぱいあるし、これを素材にすれば問題ないかな。ええっと……」
手に入れたスキルの使い方は、感覚で分かる。
まずは合成の元になる素材を、目の前に並べてみた。
低ランクの素材しかないが、今は特に装備品の性能は求めていない。
「『装備錬成!』」
僕がスキルを使うと、素材がカッと眩い光に包まれる。
やがて光が消えて、目の前にイメージ通りの真っ白なワンピースが現れた。
「リーシャ、どうかな?」
「ありがとう、お兄ちゃん! 凄く嬉しい!」
リーシャはワンピ―スを身につけ、その場でくるっと1回転。
ふわりとワンピースの裾が舞う。
「どう? 似合う?」
「うん、イメージ通り。すごく良く似合うよ」
くるくる、くるくる。
楽しそうに駆け回るリーシャ。
嬉しそうなリーシャを見て、僕はほっと息をつく。
「ねえ、アレス? アレスは、スキルをクラフトするのは初めてなのよね?」
「もちろん。ついさっき覚えたスキルだし……」
「はあ。あいかわらず、ぶっ飛んだ性能ね? あのワンピース、なかなかにとんでもないわよ?」
「え? 僕、何かまずいことした?」
きょとんとする僕に、ティアは首を振りながら、
「まず、あのワンピースの生地。全属性に耐性があるハーモニア絹糸で出来てるわね。おまけに支援魔法がエンチャントされてる。文句なしに最高ランクの装備品――お店でも、なかなか買えるものじゃないわよ?」
「そんな大げさな。普通にスキルを使っただけだよ?」
「それが極・スキルの性能なのよ。アレスの規格外っぷりは今に始まったことじゃないけど、また、とんでもないスキルを手に入れたわね……」
ティアはしみじみと、そう呟くのだった。