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「随分と無茶を言ってくれるわね」


 呟きながらティアが魔法を詠唱する。


『アイシクル・ガード!』



 足止めのためにティアが生み出したのは、白銀に輝く氷の盾。

 強固な壁を展開する氷属性上位魔法だ。

 氷属性に完全耐性を持つ敵が相手でも、物理的な壁なら……。


「な、なにそれ!?」


 そう思ったものの、そんな希望的観測は、簡単にぶち壊される。

 カオス・スパイダーは氷の壁をものともせず、ぶち破りながら僕たちを追いかけてきたのだ。

 森の中を、木々をなぎ倒しながら突き進むカオススパイダーにとって、なんら障害にはならないようだった。



「ティア! さっきの盾って、展開してから動かせる?」

「いきなり何? 出来ると思うけど……」


「ならちょっと試したいことがあるんだ。あいつの足元を覆うように、氷の盾を出せる? できる限り大きいやつ!」

「やってみるけど……すぐに破られると思うわよ?」


『アイシクル・ガード!』


 ティアは頷き、即座に氷の盾を生み出す魔法を展開。

 カオス・スパイダーの足を覆うように、半径数メートルの氷の壁が生み出された。



 バキバキバキバキッ!


 カオス・スパイダーは鋭い足先で、氷を砕きながら凄まじい勢いで突き進む。

 一瞬でも足止めになればと思ったが、そう甘くはないか……。


 モンスターの紅い瞳がギョロリとこちらを向いた。

 まるで「それで終わりか?」と嘲るようだった。



「アレス、ごめん。もうMPが……。あまり何度も、撃てるような魔法じゃないわよ?」

「いいや、大丈夫。ここから盾を操って――」


 ティアは作戦を聞き、目をまんまるにしていたが、


「さすがはアレスね! そんな作戦、私だけじゃ思い付きもしなかった!」


 目を輝かせて再び魔法を唱え始める。


 ティアは手をかざすと、地面を覆うように配置された氷の盾を斜めに傾け、そのまま垂直になるよう操作した。

 それは一瞬の早業――カオススパイダーは動く足場に対処できず、ツルツルっと滑り落ちていく。

 そうこうしている間に、氷の盾はカオス・スパイダーを押しつぶすように倒れ込んだ。



「やった!」

「ティア、流石だよ! ……でも走って!」

「わ、分かってるわよ!」


 僕たちはそんな様子を見ながら、全力で走って距離を取っていた。

 不意打ちには成功したが、当然これだけでは倒すには至らない。


 案の定、カオス・スパイダーは、そう時間もかからず氷の盾をぶち破った。

 ティアの生み出した氷の塊に押しつぶされたことになるが、当たり前のように無傷。


 勝ち誇ったように紅い瞳を爛々(らんらん)と光らせていたが――



「もう終わりだよ」


 おそらく十分な距離は稼げた。

 僕はカオススパイダーに向き直り、切り札とも言える闇魔法を発動。



『ブラックホール!』


 カオス・スパイダーと重なるように、黒く揺らめく黒点が現れる。

 その黒い空間は、敵を覆い尽くすように徐々に広がっていった。


「こ、これが闇属性の上位魔法……」

「凄まじいわね。あのカオススパイダーが、手も足も出ずに吸い込まれていくなんて……」


 効果は劇的だった。

 カオス・スパイダーは苦悶の声を上げながら、必死に術の影響範囲から逃れようとするが手遅れだ。

 断末魔の声とともにブラックホールに吸い込まれ、やがて完全に消滅した。



――――――――――

バグ・モンスターを討伐しました。

絶対権限(プライオリティ)が5になりました。

―――――――――




◆◇◆◇◆ 


「た、助かった……」


 思わずティアが、その場に座り込んだ。

 魔法を放ちながら、全力で走り続けたのだ。

 無理もない。


「うおおおおおお!」

「あの2人すげえええええ!」

「まさか本当に、カオス・スパイダーを倒してしまうなんて!」


 戦いが終わると同時。

 木々の影から歓声を上げながら、こちらに飛び出してきた。

 どうやら先ほど別れた兵士たちは、戦いを見守っていたらしい。



「み、皆さん!? どうしてここに……」


「子供2人を(おとり)にして逃げ帰ったなんて、笑い話にもならねえ。助けに入れないか伺ってたのさ」

「もっとも戦いが凄まじすぎて、とても手が出せなかったんだけどな……」


 兵士たちはそう言って、苦笑いした。


 むしろ周囲に人が居たら、ブラックホールに巻き込んでしまった可能性が高い。

 結果オーライである。



「強敵でした。あんなモンスターが、ゴロゴロ居るんですよね? もっと腕を磨かないと――」


 僕は、戦慄しながら呟いた。

 世界の果てに辿り着きたいと夢見ながら、現実には少し強めの領内のモンスターにすら苦戦しているのだ。

 まだまだ目指すべき場所は遠い。



「いやいや、氷も炎もすべてを弾く完璧な属性耐性持ち――カオス・スパイダー変異種なんて、普通は王宮からの援軍を待つ相手だぜ?」

「それをたったの2人で倒しちまうなんて。ああ――ほんとうに世界は広い」

「これほどの強さを持ちながら、まだ向上心を忘れないとはな……。俺たちも気合いを入れ直す必要があるってもんだ」


 居合わせた兵士たちのテンションは高い。

 歴史に残るようなすごい戦いを見た――と兵士たちは、興奮した様子で語り合うのだった。

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