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「スライムを倒さないように攻撃するの? どうしてそんなことを?」

「まあまあ。いいからいいから」


 僕はそう言いながら、スキルを使ってやくそうを取り出した。



「こんな感じ?」


 ポコッ



 ティアが素手で、軽くスライムを撫でた。

 これでもダメージ与えられるんだなあ――と思いながら、僕はすかさずやくそうを使う。

 どれだけ手加減してもHPが13しかない相手に99回も攻撃するには、回復を交えないといけないのだ。



「95 96 97 98――えいッ!」


 やがてティアが、スライムを消し飛ばした。

 するとスライムがぷるぷるっと震えて、



「アレス、説明してもらうわよ! ――って、何よこのアイテム!?」


 現れたのは青く輝く不思議なジュース。

 光の粒子になって消えたスライムは、見慣れないアイテムを残していったのだ。


「どうやらユニットデータ閲覧で見た通りだね。スライムはダメージを99回与えたら『ぷにぷにジュース』を落とすみたい」

「スキルの効果で分かったの?」


「うん。落とすアイテムとレアドロップ品が、バッチリ見れたよ?」

「スライムがこんなもの落とすなんて、見たことも聞いたこともないわよ? アレス、これ……とんでもない新発見じゃない!?」


 というのもスライムは、やくそうしか落とさないというのが常識だった。

 僕たちも領内のモンスターと戦うことは多かったが、こんなドロップアイテムは見たことがない。

 スライムに99回も無心に攻撃する者は居ないだろうし、当たり前だった。



「あ、向こうにキラー・ホーネット!」


――――――――――

【コード】ユニットデータ閲覧

ドロップ:ーーー

レア  :毒蜂の羽

 ※ 氷属性の技で撃破

▲特殊情報▼

――――――――――



 これまた領内では珍しくもない蜂状のモンスターだ。


「アレス、こいつもレアドロップ品を持ってるの?」

「ううん。こいつは毒蜂の羽しか持ってない。氷属性の技で倒すと落とすんだって」


「……こいつは、知ってる通りなのね。ならサクッと――『氷華!』」


 ティアが剣を抜きながら、一気に駆け抜けた。

 少し遅れてキラー・ホーネットに氷の花が咲き、一瞬で絶命させる。

 ドロップしたアイテムは予想通り『毒蜂の羽』。


「う~ん? どうやらドロップアイテムを持っていないみたいだね。毒蜂の羽がレアドロップ品の扱いなんだ……」


 僕は首を傾げる。

 よく分からないけど、そういうものだと受け入れるしかなさそうだ。




◆◇◆◇◆


 その後、僕たちはいくつかのモンスターを倒しながら、街道を進んでいった。

 『ユニットデータ閲覧』で見たことがない敵は、すべて調べてから突き進む。


「ティア、そいつは――氷属性と炎属性の攻撃を同時に当てて倒す……だって。ティア、『せーのっ!』で攻撃しよう」

「ふふん。任せなさい!」



『ファイア・ボール!』

『アイシクル・シュート!』


 ときにはタイミングを合わせて攻撃することで、レアドロップの条件を満たす。


「ティアは凄いよね? 剣術だけじゃなくて、魔法も使えるんだから」

「それを軽々とこなすアレスが言うと、嫌味に聞こえるけどね……!」


「僕は母上から教え込まれたから。ティアは独学でしょ?」

「私は一緒にクエストを受けた冒険者に教わったわ」


「そうなんだ。剣だけでも一流なのに、すごいね……!」

「え? だって魔法が使えたら戦術幅が広がるってアレスが言ってたから――って、違う違う! たまたまよ、たまたま!」


 ティアが顔を赤くして、ぶんぶんと顔を横に振った。

 どうしたのだろう?

 


 ティアが倒したモンスターに近づき、落としたドロップアイテムを拾う。


「あ、また見たこと無いアイテムね」

「やった! レアドロップアイテムゲットだね、絶好調!」


 冒険者になったら、クエストの報酬やドロップアイテムで生計を立てるのだ。

 最悪、賢者の石を大量に生み出して店に売ればどうにかなるが、できれば冒険者らしい生き方をしたいと僕は思っていた。



「絶好調すぎるわよ。……アレスのそれ、本当にずる過ぎない?」

「え? そうは言っても、外れスキルで出来ることだし……。これぐらいは鑑定士が居れば、すぐに分かるんじゃない?」


 たしかに便利なスキルだと思う。

 今後、冒険者としてやっていくには、非常に役に立ちそうなスキルだ。

 それでも少しだけ便利なだけで、ティアがここまで驚く理由が分からなかった。



「……あのねえ。鑑定士って、そんなに万能じゃないのよ?」

「そうなの?」


「ええ。知り合いの冒険者に聞いたことがあるけど……」


 いわく、敵のHPが見えるってだけで一流。

 初見の敵の弱点を見抜けるならば、超一流で勧誘合戦が起こるほど。

 冒険者に混じってクエストをこなすこともあるティアが言うなら、間違いないだろう。


「……でも、どっちも普通に見れたよ?」

「だから訳が分からないって言ってるのよ。ましてやドロップアイテムの解析なんて――聞いたこともないわよ?」



 どうやらこのスキルは、一流の鑑定士をも凌駕(りょうが)するらしい。


「そうなんだ。なら外れスキル持ちの僕でも、鑑定士としてなら、どこかのパーティに受け入れて貰えるのかな?」

「いやいや、アレス……。たぶんそれどころか――いいえ、その時が来れば分かるわね」


 ティアは引きつった笑みを浮かべるのだった。


 

 そんな調子で僕たちは街道を突き進み、ついにカオス・スパイダーの縄張りらしき場所にたどり着いた。

 数人の兵士がモンスターの監視に付いており、緊張した空気が流れている。

 僕は見張りの1人に声をかけた。

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