7.検証
重力魔法を手に入れたので早速、スライムを相手に検証してみたが、思ってたよりも使える。
何も直接接触しなくても良いみたいで、武器を通して間接的でもちゃんと効果があった。
ただ、飛び道具としては使えない。
手を離した瞬間には効果が切れるので、石とか投げてなんてのは無理だった。
拡張スクロールに期待したい。
検証作業に熱中してたせいでなかなかの時間帯になってる。
今日はもう切り上げて帰るか。
………………
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……
「ハジメちゃん。 今日は何か機嫌が良さそうだね。」
「あ、分かります?」
ダンジョンからの帰り道、俺はいつもの様に行きつけの立呑屋である【鳥哲】へとやって来た。
この店のウリは名前が示す通り焼き鳥が絶品だ。
しかも、一串が90円とリーズナブルなので、ほぼ毎日の様に通っている。
学生だった頃からの付き合いだからなのか、料理が出来るまでビールを飲みつつ、ニヤニヤとスマホで拡張スキルの一覧を見ていると、店主である哲さんに指摘されてしまった。
「ほい、お待ち。んで? 今日はいつもの時間より遅かったから、ダンジョン関係?」
「かー、バレバレじゃないすか。 いやぁ、実はそうなんすよ。まあ、ぶっちゃけるとスキルが手に入ったす。」
「へー、そうかい。俺ぁそこら辺の事ぁ良く分かんねえけど、早々簡単に手に入るもんじゃ無ぇんだろ? 大したもんだ。」
「本当に運が良かったってだけですけどね?」
「あんま浮かれすぎて、怪我なんてしねえ様にしてくれよ? 上お得意さんが減っちまったら、ウチなんて商売あがったりなんだからよ?」
なんて冗談めかしつつ、哲さんは指摘してくれた。
そうだよな。調子に乗って怪我なんてしたら目も当てられない。
まずは重力魔法に慣れなきゃ。
自らを戒めつつ、ホロ酔いで鳥哲を後にした俺はマイホームへと足を進める。
いつもならコンビニに寄って缶ビールとツマミを買って帰るのたが、今日は祝いと称して店でビールを3杯飲んだので、寄り道せずに帰る事にした。
そうして店から10分弱歩き、マイホームである月光荘のオンボロアパートへと帰宅する。
「うぃー、ただいま~っと。」
「にゃ~ん。」
ドアを開けると玄関には飼い猫の【タマゴ(♀)】が、お出迎えしてくれていた。
寂しがり屋なのか、いつもこうして出迎えてくれる可愛い奴だ。
2年前、子猫だったタマゴが目から血を流して弱っていたところを保護して以来、家族として過ごしている。
こいつの為にもヘマ出来ないな。
俺は、タマゴのウィークポイントである顎下を掻いてあげつつ、そう決意するのであった。