62.不穏な報告
「おう、ちょっと不味い事になったかもしれん。」
神殿エリアから持って帰ってきた謎ポーションの結果が出たらしい。
その事で自衛隊から呼び出しを受けて帰ってきた加茂は、皆を集めると話の冒頭でそう切り出した。
加茂は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ、何故そう思うに至ったかの経緯を説明する。
持ち帰った謎ポーションは、結論から話すと回復ポーションには変わりは無かったらしい。
特別、回復力が高い等と言う事も無く、万病に効くという事でも無い、至って普通の効果であったと判定された。
「ん? じゃあ、何が問題だったんだ?」
「おう、あのポーションはな、言うなら凝縮された原液だったつー話だ。」
説明してくれた科学者によると、謎ポーションの僅か一滴━━数字にして0,050mlで通常のポーション200本が生産出来るのだと言う。
業務用濃縮ポーションだったと言う訳だ。
俺達が保管している謎ポーションの原液は,目測でおそらく700mlはある。
それらを通常ポーションに換算すれば、え~……と、兎に角、一杯作れるという事なのだ!
通常持ち帰られたポーションはオークション価格にして、一本10~20万円とされているが、売りに出される事はほぼ無い。
生き死にが懸かっているのだから、皆も手元に残しておきたいと考えるのは当然の心理だと思う。
幸いにして、これまで大きい怪我を負った事が無いので使用した事は無いけど、かなりの深手でもたちまち治るのだと言うのだから、探索者にしてみれば金額以上の価値があるのは明白だ。
そんな貴重品であるポーションを、大量に用意可能となる原液を俺達は持っているのだ。
加茂の言わんとしている事が否が応にも理解出来てしまう。
「……自衛隊はそこについての突っ込みはあったのか?」
「暗に、手元にどれくらいの量があるのか探ってきたから、曖昧に濁しておいたけどな……どう出るかは正直言って判らん。」
俺達の手元には未使用の治癒の魔法スキルスクロールがあるが、だからと言ってポーションが不要という訳でも無い。
これからの事を考えれば、そう簡単には売れないだろう。
だが、自衛隊には原液が俺達の手元にある事は知られてしまっている。
これがどういう悪影響を及ぼすのかは未知数だ。
「自衛隊と言えど、ずっと秘密が秘匿されると言うのは期待出来ねえ。 何処かで必ず洩れると考えておいた方が良い。」
「そうなのでござるか?」
「平時なら機密事項は守られるだろうかも知れねえけど、氾濫時となったらそうはいかねえ。 原液があればかなりの隊員の離脱を防げる。 原液の存在を知ってる幹部連中が黙ってられると思うか?」
「「…………。」」
「……半分だけでも売るしか無いんじゃないの?」
「売ったら売ったで、人はまだあると勘繰るもんだ。 物が物だけにな……。」
何だよそれ……面倒臭え。
どっちにしろ厄介事は抱え込んじゃうのかよ。
「今後、何かしらの接触はあると思っといた方が良い。 いきなり強奪してくるなんて事は無いだろうから、今のところは安心だと思うけど、氾濫時は分からねえとだけ覚えといてくれ。」
こうして、モンスター氾濫を万全を期して臨もうという俺達に、決して無視できない陰が差すのであった。




