19.異世界の社畜
「記念撮影じゃねえ」
「え?」
加茂が遺跡を探索する寸前、「写真撮っとこうぜ」と言い出してスマホを取り出したので、石像の前でポーズをとったら怒られた。
「研究資料用だよ。 研究所の奴らが欲しがるかもと思ってな。」
加茂によると、世界各国ではダンジョンの解明の為、こういった遺跡の写真資料や遺物は、それなりの値段で売り買いされているらしい。
特に貴金属やポーションなどを始めとしたダンジョンアイテムなんかは、未知の金属であったり不可解な技術(魔法?)で造られていたりと、再現出来れば新たな技術革新が起きるであろう事は確実なので、どの国もイニシアティブを得る為に日夜、凌ぎを削って切磋琢磨している。
なので、既に似た様な様式の遺跡の資料がない限り、ネットにアップさえしなければ写真資料だけでもそこそこの値で売れるらしい。
是非、日本の研究者の皆さんには頑張っていただきたい(適当)
「……良し、じゃあ先に進むか。」
探索中も資料になりそうな石像や壁画などの写真を撮り、テクテクと遺跡内を進む。
異世界の美的感覚もそう大して地球人と変わらないのか、古ぼけてはいるが、どこかエジプトやギリシャの遺跡を見ている様な感覚に陥る。
(初めての遺跡が海外じゃなくて、ダンジョンでなのは何か皮肉的だな。)
そんな風に考えて歩いていると、前方でカチャカチャと音がする。
あ、ピーンときた。
これは安定のスケルトンさんですわ。
「……おう。」
「うん。 賭けても良いけど、スケルトンじゃね?」
何て言ってると案の定、通路の脇から剣を持ったスケルトンさんが現れた。
更に続いて2体目、3体目と現れる。
この遺跡を守っていた兵士だったのだろうか?
死んでからも遺跡を守るなんて、社畜精神が旺盛だな。
「……スケルトンって頭潰せば倒した事になんのかな?」
「あ~、どうだろ? まあ試せば良いんじゃね?」
そう言っていつものフォーメーションで戦う。
加茂が攻撃を受けつつ、チクチクと牽制する。
良い具合に一体のスケルトンが目の前に来たので攻撃。
「やっぱ骨だけだと軽いから、いつもより魔力が必要だなっと!」
安定の重力さんで1体目を粉々にし、続けて2体目を撃破。
やっぱ重力さんは有用やで。
「やっぱ駄目だわ。 こりゃ得物を換えた方が良さそうだな。」
『グシャッ』っとスケルトンの頭を踏み潰し、加茂は面倒臭そうにそう呟く。
斬り付けてもあんまり効果は無さそうだもんな。
予想通りのスケルトンあるあるだね。
「やっぱ、グルカナイフじゃ駄目だった?」
「おう、これだったらバットの方がまだマシだな。」
「じゃあ、もう良い時間だし帰ろうぜ。」
戦略的撤退だ。