17.ボス戦
昼飯を食べた後、洞窟エリアを突破するべく奥へ奥へと進むと、ドーム状の広間へとたどり着いた。
中には一回り程デカイ犬が数匹の取り巻きを連れ、既に臨戦体勢に入っている。
どうやら、この洞窟エリアを根城とするコボルトのボスらしい。
ボスの指示なのか、動かないまま皆で凄いワンワン言ってる。
……さっき逃げてったコボルトは見張りだったのね。
「あれがボスかな? 重力魔法一発で終わらせる事もできるけど、どうする?」
「いや、折角だから派手に斬り結ぼうぜ。」
「まあ、別に良いけどさ、セオリー通りに通路側で敵を限定しながらだぞ?」
「おう、流石にど真ん中に行くなんて無茶はしねえよ。」
そんじゃまあ、やりましょうか。
「そんじゃまあ、敵さんを誘き寄せましょうかね……。」
俺は腰袋から鉄球を取り出して、遅延魔法をかけた鉄球を敵に投げつけ始末する。
『ガウッ!』
もうひとつ手に持つと、不利を覚ったのかボスがひと吠えして取り巻きをけしかけてきた。
取り巻き全員で一斉にやって来るが、生憎とこちらは通路側なので、攻撃する手数は自然と限定される。
コボルトは誘導されてると思わず、全てこちらの思惑通りだ。
ふっ、所詮は犬畜生よ!
「ちょっ!?」
っと思ったが、逆に密集陣形みたいになって、敵の攻撃が捌ききれない。
話と違うじゃないか!
「ハジメ、下がりながら戦え!」
だが、加茂の指示に従ってバックステップで下がりつつ戦えば、何とかやれる。
加茂も大振りはせず、突出した敵に傷を負わせながら下がり、防御&牽制で安定した戦いをみせている。
暫くすると、開戦時の慌ただしさは幾分か落ち着きをみせ、余裕が出来た加茂が敵の攻撃を受け流しながら俺側へと導き、俺はそれを一撃で沈めるというサイクルが整い始める。
決して派手さはないが、着々と一定のリズムに乗って敵を葬る。
特訓の成果が発揮出来てるせいなのだろうか?
戦闘中にも関わらず、何故か自然と口角があがって気分が高揚してきた。
(やべ、何か楽しくなってきた。)
命のやり取りをしている真っ最中なのに、楽しくなってしまうのはこれ如何に。
チラリと目線を横に向ければ加茂も笑みを浮かべている。
……あ、こいつは何時もか。
気付けば手下のコボルトは三匹を残すのみ。
俺達に敵わないとみたのか、加茂が一歩踏み出すと後退りしてボスへと目を向ける。
お、親ビン、どうしやす? なんて言ってる様だ。
「おう、ハジメ。 俺にこいつと戦らせろ。」
三下とボスを見ながら脳内アテレコしていると、加茂がそんな要求をしてきた。
「うん、任せた。」
そう言いつつ加茂の横に並ぶ。
なら俺はザコが邪魔しない様にフォローしますか。
では、第二ラウンド開始っ! てとこですかね。