15.タチャンカ面買ってあげるから
「は? お前ノースキルなの?」
「おう、ひでぇだろ? だから辞めたんだよ。」
今度はお前の番だぞと加茂に戦う様に促すと、徐にゴブリンに近付き、振り下ろされたこん棒をヒラリとかわしたと思ったら顔面パンチ。
そのまま素早くゴブリンの背後に回ったかと思った瞬間、スリーパーホールドの体勢で『ゴキッ』っと頚椎をネジ折ってしまった。
……コイツ、引くわー。
っていうか、そこはナイフとかじゃねえのかよ?
「いや、流石に持ち歩かねえよ、隊のは支給品だし。」
「そういう事じゃねえよ。お前はどこを目指してんの?」
「いや、本当はグルカナイフでやるつもりなんだけど、まだ注文してねえんだわ」
「へー、日本刀とかじゃ無いのね。 っていうか剣道部の経験無駄じゃん」
「無駄では無いぞ。 それに日本刀はすぐ駄目になるから継戦能力低いし、手入れ大変だから。」
「お前が真顔で言うとマジで人斬りの人みたいだから止めて……え? 経験無いよね?」
「あるわけ無いだろ。 わりと有名な話だぞ。」
それは知ってるけどさ、実はエアプのデマって線もあるじゃん?
それにしても、何でスキル無いんだ?
自衛隊だったら、確かどっかに専属のダンジョンあったよな?
全然見つかんねえの?
「そうなんだよ聞いてくれよ……って、これ言って良かったっけ? まあ、良いや、実はさ━━」
自衛隊はダンジョンを探索・調査をメインにしている為、スキルスクロールや魔石は基本的に研究対象として国の所有物になる。
特に魔法関係は数も出回らないし、出回っても実験対象の隊員に使用されるのだそうだ。
更には安全第一・実施射撃訓練と称し、自動小銃による討伐がメインの為、銃剣による近接戦闘はあまりしないそうである。
もっと言えば、ドローンや特殊小型戦闘車輛とか言うダンジョン専用の兵器まで投入しているので、思っているより戦わないのだそうだ。
どうやら、加茂的にはどれもこれも納得のいかない探索方法だったようだ。
まあ、それは良いとしてもだ。
二人とも近接はよろしくないんじゃないか?
丁度、洞窟エリアを探索中なんだよね。
並んで近接とか危ないと思う。
最近は鉄球戦法もシビアなのでお蔵入りだし。
う~ん、そうだな。
「お前、タンクやりなよ……自衛隊だけに。」
「盾持ちって事か? ……う~ん。それ、つまらなそう、俺の趣味じゃねえし。」
「そう言うなって、盾は割り勘で良いし、……後はほら、タチャンカ面買ってあげるから。」
って言うか俺が欲しい。
あれって売ってんのかね?