13.加茂・総一郎という漢
「わっはっはっは! そうか、そうか。 じゃあ、丁度良かった訳だな!」
膝をパンパン叩きながら豪快に笑うこの男の名は加茂総一郎、幼稚園の頃からの幼馴染だ。
こいつが幼馴染って何か認め難いけどな!
つい先日まで自衛隊の特殊なんちゃら隊とか言う、ダンジョン探索を専門とした部隊に所属していたが、諸事情によって「自衛隊にいる意味無え!」 と気付いたらしく、思い立ったが吉日とばかりに辞めてきたそうだ。
こいつは昔からそういうところがある。
そもそも、加茂が自衛隊に入隊した経緯も突然の事だった。
加茂は小学生の頃から高校在学中まで文武両道で優秀だった為、何も知らない周囲の人間からは、そのまま良いトコの大学にでも進学するのだという事を疑いもしなかった。
実際、進路希望も大学へ進学の希望届けを提出していたらしい。
だが加茂は━━
「ダンジョン潜りてえから、自衛隊行きます。」
━━ 等と宣言し、突如として入隊宣言をして周囲を騒然とさせた。
せめて、防衛大学を卒業してからでも良いんじゃ無いかという、担任の必死の説得にも応じず、親の反対も振り切ってそのまま入隊を果たした。
「だって、防大なんて行ったらダンジョンなんて何年も潜れなさそうじゃん?」
とは本人の弁である。
まあ、限られた友人にはバレバレと言うか、「早くダンジョン行きてえ」って、宣言してたしな。
周囲には文武両道等と持て囃されてはいたが俺は知っている。
━━ 加茂総一郎はクレイジー。
こいつがイカれたメンズだというエピソードは、小学生の頃から高校生まで色々とあるが、特に衝撃的だったのは中学生の時だった。
当時、中2だった俺は、地元の不良高校生5人組に目を付けられ、ゲーセンでカツアゲされそうになった。
偶然、剣道部の部活終わりの帰宅中であった加茂に助けられた訳だが、それは一言で言うと非道い惨劇だった。
何故か当時から常備していた竹刀で問答無用とばかりに襲い掛かり、相手が頭から血を流そうが、鼻が折れようが、泣いて謝ろうがお構い無しに滅多打ちにし、叩き過ぎて竹刀がバラバラになっても尚、バチバチに叩いてた。
「ホラホラァ! どうしたどうしたぁ!」
「止めてぇ、止めてあげてぇ! もう良いから。未遂だからぁ!」
何故か俺が不良達を庇って懇願する羽目になった。
結局、通報で駆け付けた警官にしょっ引かれ、敢えなく御用となった。
更には、警察署内で担任と教頭、両親と警察官を前にして━━
「この日の為に俺は牙を研いできた」ドン
━━ 等と意味不明の供述をし、その場に居た関係者全員を絶句させるという偉業を果たしていた。
加茂総一郎とはそんな魁た漢なのだ。