12.シフト相談
「……そうか、まあ気にするな。 大して戦力にもなってなかったしな。」
「そんなー。」
「ハハハ、冗談だよ。 まだ、完全に辞める訳じゃないし、辞める時は前もって言ってくれれば良いから。」
「すいません、ご迷惑お掛けします。」
日曜の早朝、俺はバイト先の黒川郵便局の局長と釣りをしながらそんな会話をする。
局長は釣り友でもあるのだ。
俺と局長の馴れ初めに需要は無いと思うが、俺と局長の出会いはこの釣り場で、大学を出て探索者として挫折してプラプラしていた俺を拾ってくれた恩人だ。
こうして、今でも休みの日には二人でよく釣りをしている。
スーさんとハマちゃんみたいなもんかな?
気安くて話せる間柄の親父だ。
「実際のところ、探索者としてやっていけそうなのか? 1人で探索するとなると、何かと大変だろ。」
「ええまあ、今のところは何とかやれてますよ。 パーティーはめぼしい相手も居ないし、1人の方が気楽なんで、今のところは組む予定はないっす。」
「うーん、1人じゃ万ヶ一の事もあるからなぁ……彼、加茂君とかはどうなんだ?。」
「アイツは自衛隊員だから厳しいっすよ。」
「ああ、そうだったな。 君の友達にしてはまともだったな。」
「ひでぇ……って言うか、アイツが一番ヤバイ奴ですよ?」
さらっとディスられたので反論しておく。
一応、言っておくと俺が一番まともなんですからね!
あいつらと一緒にしないでいただきたい。
「まあ、あいつらも一応はギリ社会人ですからね、全員が独身とはいえ、なかなか誘いづらいですよ。」
「君もギリギリというか、OUT気味なんだが……。」
「あれ? 信頼関係築けてない?」
やっぱり、スッパリと辞めさせて貰おうかな……。
「まあ、兎に角だ。 親御さんや周りの人間には心配かけるなよ?」
「……うす。」
まあ、なんだかんだ気を配ってくれるこの人の言う事は無碍には出来ないし、確かに仲間を集める事を視野に入れて動くべきかね。
……そう言えば、アイツら何してんだろうね。
そんなおセンチな夏のひと時であった。
………………
…………
……
『もしもし? お前、最近は何やってんの? 相変わらず燻ってんのか?』
『……お前こそ相変わらずだな。 仕事はどうした?』
局長と釣りをしてから別れたお昼過ぎ、件の加茂から電話が掛かってきた。
燻ってたけども! プスプスだったけども!
最近は燃え出したんだよ!
種火くらいには……。
『ああ、辞めたわ。』
『は? お前、自衛隊辞めたの? 何で?』
『いやー、苦労してスキルスクロールをゲットしてもさ、他に回さなきゃいけないんだぜ? やってらんねぇよって感じで辞めたわ』
『はー、そうっすか……んで? 今は何やってんの?』
『おう、だからよ。 ガチで探索者やんねぇか? って誘いに来たんだよ。』
そらまたタイムリーな……え? 誘いにキタ?。
ガチャ!
「おう、浪漫爆進街道まっしぐらを進もうぜ!」
字面的にも色々とツッコミどころ満載の台詞を言いながら、加茂は突如として現れた。