1.小玉一(こだま・はじめ)
完走目指してがんばります。
「よっと」
そんな他人が聞けば、何とも気の抜けた印象を受けるであろう声を発しながら戦う俺の名は小玉一(25)
以前は郵便局配達員として勤務しつつ、副業とも言えない程度でダンジョン内に存在する弱小モンスター、スライムを中心に狩ると言うよりも、漁をしていると言っても過言であるくらいのショボさで小銭を稼いでいたが、ある日を境に探索者としてやっていこうかな? という程度の決意をした。
何故なら、重力魔法を手に入れたからだ。
このチートを手に入れなかったら、今も序盤に出てくるスライムでチマチマと小銭稼ぎしてただろうな。
やっぱ、浪漫より命は大事だしね。
でも、その名の示す通り重力を操る魔法はチートなのだが、少し問題がある。
いま現在、謂わば低レベルの俺の重力魔法は、相手に接触状態でないと発動しない為、近接戦闘せざるを得ないのだ。
結局、モンスターを直接ぶっ叩くのには変わらないので、割と慎重派の俺としては有り難いんだけど微妙というか……もうちょっとこう何かあるだろ。
ハッ! とか言って数メートル前方に居る敵を押し潰したりとかさぁ。
ほんのちょっぴりで良いからさ、もうちょい楽にチートさせてよ。
何だかんだ怖ぇーんだよ、敵との距離が近いとさ。
目ぇギンギラギンに血走らせてさ、口端から泡を吹き出してるモンスターと手が届く距離で戦うって結構なもんよ?
何事も爽やかさや清潔感って大事だよね。
まあ、モンスターに言ってもしょうがないけどさ。
とまあ、いきなり愚痴っちゃったけど、それでもやっぱり重力魔法はチートですわ。
注力する魔力量で程度は変わるんだけど、重力魔法を行使する際に使う基本消費量を1とすると、敵に掛かる重力は体重の2倍の
負荷、つまりは敵の体重が100キロなら、自重×重力の合計で200キロの魔法が掛かる訳だから、死なないまでも動きが鈍くはなるよね。
更に最初か後付けに関わらず重力魔法を掛けると、200キロが400キロの倍々ゲームになっていくので、例えば最初から魔力消費量3の威力で敵は突然、800キロの負荷が掛かる事になる。
そんな訳で敵を完全にペチャンコにする為に必要な魔力消費量は4~5もあれば十分なので、俺と敵とのレベル差に関係なく、大体のモンスターはお陀仏なんですわ。
チートありがたや~(合掌)
とは言っても、他にも色んな問題というか制約があってチートって言う程にはチートしきれていない。
まあ、それはまたの機会という事で。
それはそれとして、重力魔法の話はさておき、この世界が何故こんな風な世界になってしまったのか、話した方が良いのかな?
根本的な原因は判らないけど、俺が重力魔法を手に入れる経緯も踏まえて、俺が知る限りのダンジョンの成り立ちを話そうと思う。
次回も絶対に見てくれよな!